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13話 決着


どうやら女王に近づけるアリは女王を守る近衛アリと女王の世話を焼く侍従アリの二種に限られるようだ。近衛アリの背に身を潜ませながら女王の広間を見渡し、僕はそう結論づけた。


この二つのアリたちは特殊なフェロモンをまとっており、それ以外のアリたちも含めた外部の存在の侵入を拒んでいるようだ。加えて、広間の明るさ。コイツらの眼はお世辞にも良いとは言えないが、自分たちとそれ以外を見分けることくらい訳のないことというらしい。


つまり僕は女王に近づくまでアリたちに見つかるわけにはいかない。加えて特殊なフェロモンは女王から下賜されるもののようで、これまでの作戦のようにはいかせてくれないみたいだった。


他に方法はないものかと思案したけれど結局名案を思いつけずに、僕は近衛アリと一体になって息を殺して女王の下へと向かっていた。幸い広間のアリはこちらに関心を払うでもなく、せっせと働いている。


あと十歩分、九、八、七、……


今のところ支配下にあるのは兵隊アリ十五匹と近衛アリ一匹、だが十五匹のアリのうち十匹はこの巣のどこかでまださまよっており、残る五匹は巣の外で退路を確保している。

つまり女王のために解放してキャパを空けられるのは近衛アリだけだ。だがそうすると、僕は一切の味方なしにこの巣の奥で孤立することになる。


六、五、四、……


危険は承知の上で、僕は近衛アリに女王の下まで連れて行った後は自由にしろと命じていた。

先ほどの侵入で他の近衛アリは気が立っているはずだ。そう何度も能力を発動させる隙を与えてくれまい。最初からキャパシティを最大に空けておきたかった。


今更になって入口に残してきたアリたちを解放しなかったことを悔やむ。それに進路の確保に向かわせたアリたちも。


脂汗がにじむ。息が浅くなった。ゴクリ、と生唾を飲み込む音がやけに大きく感じられた。


祈るような気持ちだった。


三、二、一、……


ーー今だ


女王の前に飛び出し他のアリたちがこちらに気付く前に行動をとる。近衛アリが支配の力から解放され、呆然と虚空を見つめる。アイツが正気を取り戻すまでのわずかな時間、勝負はこの一瞬で決まる。僕は大きく息を吸った。その時、何かの気配を察したのか女王は首を巡らせこちらを見据えた。


僕と女王の視線が交錯したのは一瞬のことだった。この広間の中で唯一僕の存在に気づいた女王と彼女を目指してここまでたどり着いた僕。無数のアリたちがひしめく地下空洞の中、僕ら二つだけがここから切り離されていた。


「ーー僕にひれ伏せ」


この瞬間、全ての勝敗は決した。


なんか女王アリと恋に落ちそう、そんなつもりなかったんだけど

とりあえずひと段落つきました

次から主人公と女王アリのラブコメが始まります(嘘)

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