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悠久の魔法使い  作者: 冬樹 青海
1章 時間魔術
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4節 復讐と結末

無理矢理纏めた感じで自信が無いです。

 「…はっ」


 目が覚めるとそこは…


 「あら?やっと帰ってきたのね」


 恐らく校長室であろう殺風景な部屋だった。

帰ってきた…俺は、どこに行ってたんだっけ?何か…長くも短くも感じる夢を見ていた気がする


 「おめでとう。貴方の働きで無事に私の変えた時代はある程度戻されたわ。と言っても、貴方が殺した2人はそのままあそこで死んだ事になっているのだけれど」


 殺…した?誰を?


 「あら?記憶が飛んでいるのかしら。でも仕方無いわ。貴方は私の敵だもの」


 記憶が飛んでる?…思い、出した。部分的ではあるけど、ジャンヌと信長の事を…。

抜け落ちてはいるけどあの時代での出来事の大まかな所を…


 「お前は…誰だ!?」


 さっきから話し掛けてるゴスロリの女の子を睨みながら問う。


 「あ、そうよね。私、誰にも姿見せたこと無いものね。」

 「いいわ。冥土の土産に私の名を聞いて逝きなさい。私はこの学園の校長にして世界から呪われた永遠の17歳の女の子、アイラ・グロリア・エンディミオンよ!」


 少女は腕を組みどや顔で勢いよく言い放つ。

永遠の17歳て痛い奴…とも言えないな。確かこいつ、“死ねない”とか言ってたから。成る程、不老不死ってか


 「呪われたってどういう事だ?」

 「答えは…私を殺せたら教えてあげる!」


 その叫びと同時に氷の剣が襲い掛かる。


 「code:L10!」


 光の砲弾が剣を砕きつつグロリア校長へ飛ぶ。


 「…今のうちに」


 逃げよう。無理ゲーだ。

ルーンと高位召喚を併用できる化物的な魔術師、しかも不老不死ときた。勝てるわけ無いだろ


 「逃、が、さ、な、い」

 「!?」


 目の前に不敵な笑みを浮かべたグロリア校長がいた。…転移か。これは本格的にマズいな


 「魔法っていうのはね…こうするのよ!」


 グロリア校長が指をパチンと鳴らすと文字が書かれた複数の石が俺の周りに浮かぶ。


 「pop!、tirer!、弾けろルーンよ!」


 石たちは眩い光を放ちながら輝き、素早く光線を放つ。

いくつも交差して放たれた光の線は五芒星を描き、いつのまにか反射鏡のように設置されていた複数のルーンによって光は屈折を繰り返し幾何学的な模様を描く。

やがては一つの魔法円となる。


 「set close!」


 黒と紫に美しく輝くオーブ(球状の魔力の塊)がグロリア校長の小さな掌から不規則に飛び交う。


 「open!」


 開けの号令でキンッと高い音と同時に一層強い輝きを放ったオーブはブロック状に広がり繋がる。

そして亀の甲羅のようにドーム状に固まると俺の体を地に押し付ける。

 無論、何も物理的に押し付けられている訳では無い。

とても重い魔力の圧だけ。こいつ、相当…いや底知れぬ莫大な魔力を持っている!いったい、どれだけの時間を…


 「どうかしら?魔力の圧だけで制圧される気分は」


 グロリア校長は屈み込んで不敵にクスクスと笑いながら挑発する。


 「…くっ、…が、あ…」

 「あらあら。言葉も喋れないのね…。感想を聞きたかったのだけど…終わらせてあげるわ。」


 一層低く、威圧的に終わらせると言われる。マズい…このままじゃ…


 「…co…d…e:……B…11!」


 不規則に吹き付ける強風を周囲に発生させる。が、


 「ふぅ~ん。この程度なのね」


 あっさりと細い腕で払われる。俺が今使用できる最高のレベル、10~12のレベルの風魔法をあっさりと打ち消される。

そして


 「ほどけろ」


 パリンと短く割れた音と同時に石もオーブも全て砕け散り、押さえられていた体はその圧が0になったせいで逆方向…つまり上へと飛ばされる。

空中じゃ…俺では動けない!マズい、マズいマズいマズいマズい!殺られ…


 「さて。久し振りの行使。どこまで掛けれるかしら?」


 グロリア校長は軽く地面を蹴り、無重力空間で跳び跳ねたように俺の上へと滑らかに浮かぶ。

見下ろしながら、浮かんだ俺の腹に指を軽く乗せるように添える。

 勢いよく掌を瓦割りの要領でぶつけると3重に連なった白い輪が現れ、鐘の音に近い音と共に、痛みを感じるのが遅れてしまう程高速に飛ばされる。

その一撃は後方へも衝撃があるのだろう。校長室の天井を貫通させ、床に大きな亀裂を入れて陥没させた。


 「がっ、あ…」


 最早声が出ない程に体全体に激痛がはしる。


 「あら。鈍ったかしら?ま、まあこの手の魔術は苦手な方だし…」


 なんだか頬を押さえているがこれのどこが恥に値するほど弱いのか。

地面まで叩き付けられる先程の速度、恐らく重力を扱った魔法だろう。

 捻ろうにも体が動かない。まさか骨が折れたか?…いや、あの速度だ。

魔法で死に至るダメージを受けずとも、地面の衝撃は物理として通る。無理もない。むしろ折れない方がスゴいだろう。


 「う~ん。趣向を変えて苦しめてあげるわ。良い声で哭いて、良い顔をして死になさい。」


 …今更だが、なぜこいつはこうも他人の命を軽々と潰せるんだ。何の権利があって最低の行為をできる。許せない。

こいつならジャンヌや信長の命をも簡単に潰すだろう。

負の感情にのまれるのは良くない。が、これは当然の怒り、憎しみだろう。


 「お前は…どうして、そんなにも…」

 「簡単にも人を蹂躙し、世界を恨むのかって?」


 真顔のままうんうんと得意気に言う。いや、思っていることと少し異なるが良いだろう。


 「あぁ。」

 「言ったでしょ?“呪われた”と」


 確かに世界に呪われたとは言っていた。それで世界への復讐劇を開幕しようとしていると?


 「良いわ。そんなに知りたいなら教えてあげる。」

 「私はね。世界に初恋の相手を奪われたのよ。」


…は?


 「誰だったかは解らない。でも、この宝石、アイオライトをくれた人。私の最初で最後の恋人。私を変えてくれた私にとって一番大切な人。その人が目の前で殺された。そして私も殺されたのだけど…目が覚めた。ええ、傷も治って。だって不死なんだもの。それからもずっと、長いこと周りの人が冷たく死んでいったのに私だけ一人取り残されていたわ。」


青い宝石があしらわれたネックレスを持つ彼女の声はどこか寂しく、それでもなお怨みと怒りに満ちていた。


 「…孤独故に、か。」

 「いいえ。それだけでは無い。私は一定まで成長すると、不老であることだけは自他共に知った。それで化物、怪物と蔑まれ、監禁、拷問、幾度となく無意味に、無罪なのに極刑を…他にも色々あらゆる事をされて何度も身心共に殺されたわ。そこで不死であることにも気付かされた。でも、どんなことがあっても彼だけは私を認めてくれていた。唯一の心の在処だったモノを奪われ…そんな仕打ちをした世界を簡単に許せる訳無いじゃない?」


 確かにそうだ。不老不死だからと言っても生きている人間であることに変わりない。確かに許される所業では無いだろう。

だが…


 「関係ない人を殺して…」

 「関係なくない!」


 その言葉も声も今までの余裕からは伺えない程の焦りを見せた。


 「人は変わらない。何をしても争いばかり。差別心も然り。私だってそんな醜いの見たく無いのよ。争いを産む種を摘むか、一つの大きな悪を作れば良いでしょ?でも、楽なのは後者。でも一過性で継続性は低い。」

 「それを私が担えばどうかしら?不老不死の大悪!…まあ結局のところ私の復讐は愛する人の仇討ち、私怨よ。でも結果的には世界を変えようとしてるの。二度とそんな悲劇が起こらないようにね。ねぇ、私と世界、どちらが悪いかしら?」


 彼女の言い分は俺の考えでは正しかった。

だけど、真なる1の答えはない。数学や英語の問題のように答えが1つ確定しているものとは違って答えがない。

 否定と否定、それが飛び交う問題においては正しき答えなんてどれか解らない。


 「どっちも…悪だよ。」

 「…え?」


 どのみち争いを産んでいる。血を流さず、なんてできない。

でも、争いを始めてしまえばどちらも変わらず悪と悪のぶつかり合いだろう。

憎しみと憎しみ、欲と欲…同じ負の感情同士の交差で争いは生じている。


 「結局アンタがまた争いを産んでるじゃないか。どっちも悪だろ?」

 「…っ!?」


 彼女の顔が少し強張る。そして彼女は深呼吸をして息を整え、俺に冷たい視線を向ける。


 「ゲルマン共通ルーンより、naudiz。意味は欠乏よ。貴方の周りの空気を欠乏させる。貴方の台詞なんて…もう、聞きたく…無いわ。貴方に解るかしら!?唯一の理解者に、最も愛した人が、自分以外が死んで自分だけが死ねない寂しさも、悲しみも…奪った奴らへの憎しみも!!」


 彼女はもう逃げていた。目の前の敵からも、己の言っていた事からも。

 小文字アルファベットのtを傾けたような形の文字が目の前に数個並べられる。酸素が一気に奪われ、苦しくなり、意識が消えていく。そんな中、無我夢中で叫んだ


 「…だったら、俺がアンタを殺してやる!アンタの思い全て受け止めて!」


マズい…意識、が…も……………

 

 * * *

 

 …逃げてしまった。言い返すことができずに。


 「…vie、confort、traitement、光の精霊、慈愛深き慈しみの光をこの者に」


 天宮海斗の体が緑の光で包まれる。最高速で、かつ丁寧に。

魔力は惜しみ無く使おう。早くしないとほんとに死んでしまう。…言い訳は考えたから大丈夫だろう。

傷はみるみる癒えていく。…何やら欠落が見られる。ついでにこれも治しておこう


 「ルーン破棄」


 ルーン文字は砕け、その効力を失う。


 「やっぱり貴方…見たことがある。彼は…確かこんな性格では無かったはずだし、違うのだけれど。」


 にしても、最後の言葉…


 「私を受け止めて、私を殺す…かぁー…。…頑張れ」


 天宮海斗の頭を撫でてみる。…いつか忘れたけど、遠い遠い過去。母親にされたように。

 ネックレスに埋め込まれたアイオライトが今日も美しく輝く。

 そう言えば…今回、初めて時間魔術を行使して時代を変えようとしたけど、ダメね。

私の魔力じゃ混濁させるのには無理がある。

それに、完全操作も出来ないようだし、戦争を招いてしまった。

 はぁ…。一応、魔力の量は甚大で人間の容量限界と言われる量は超えているはずなのに。やっぱり、人はどうなろうとも人なのね


 * * *


 

 「あれ…?」


 生きてる…俺、生きてる?酸素奪われて意識失って…それからどうなった?というか、ここは?


 「気が付いた?ここは保健室よ」


 その声にバッとベットから飛び退き構える。

ベッドの隣の椅子に腰掛け、本を読んでいる校長に対して逃げる姿勢で


 「はぁ…。何もしないわよ。わざわざ連れてきてまで戦うかしら?」


 連れてきた、と彼女は言った。

つまり、それは彼女が俺を助けたと言うこと。なぜだ?殺そうとしてる相手を…


 「どうして…連れてきた?」


 すると校長は鳩が豆鉄砲でもくらったかのような顔で驚く。


 「貴方…助けるため以外に理由があると思うの?」


 …いや、無いだろう。

だが、訊いた事はそんな意味で訊いた訳ではない。敵をなぜ助けたのか、と言うことだ。

あの状況だと、殺すことなんて容易だったはずなのに…。


 「助けた理由は単純よ。貴方が私を殺すなんて生意気な事を言ったからやってみなさいと思っただけのこと。」


 …本気かコイツ。あの言葉を鵜呑みにするなんて。

そもそも不老不死なんてものどうやって殺すんだ。

 本人曰く呪いらしいが、なら解呪して倒せば良い。が、肝心なのはどの類いの呪いか、何で呪われたかだ。

類いというのはどの魔法、どの呪法で呪われたか。何で呪われたかは、呪いの媒体。

呪法なら生物の生き血や心臓、部位を使うが…それすらも不明。完全手探りで解呪なんて便利なこと、今の時代にできる人間いないぞ。

そもそも、解呪自体、呪いなんてかける奴がまずいない。だから、使える人間って少ないと言うかほぼいないし。


 「それと、貴方見覚えあるのと、貴方の魔法が貴重だから惜しいと思ったの」


 俺はアンタなんて見覚え無い。そして良かった。扱う魔法が少し特殊で。あれ?


 「…そういえば、体、何ともない」

 「あ、今更?」


 気を失う…正確には体を闇系統の重力魔法であろうモノで床に叩き付けられるまでは体が自由に動いていたが、それ以降は体が動かなかったし、激痛もあった。

が、今はそれはない。


 「気付かない?私が色んな魔法使えること。」

 「…!!」


 ある考えが脳をよぎる。

それは、医療も含めた全10属性を扱う女魔術師のこと。最早都市伝説レベルで信憑性の低い情報だったが…まさか、まさか!


 「10属性…」

 「使えるわよ。だって都市伝説レベルで囁かれてた女魔術師だもの」


 成る程。不老不死で全ての魔法属性扱えて、高度なルーンや召喚だけでなく、闇系統の応用である重力操作、転移魔法等とバリエーション豊かな魔法種使う女の子だと。

…いやふざけんな。冗談だろ?殺すとか無理ゲーじゃね?


 「そうね。無理ゲーね」

 「エスパー!?」

 「ちょっ…いきなり大声出さないで。…途中から声に出てたわよ」


 あらま。以外に人間らしい反応。いや、人間だったな。

 少し気になって読んでる本の表紙を見てみる。

校長の見た目からすると年相応だが、年齢で言うと若者向け…10代の若者が読む今流行りの恋愛小説にしか見えない。


 「…最近話題の恋愛小説だろそれ。」

 「…ん?…あぁ、えぇ、そうだけど?」


 校長はキョトンとした顔で反応する。待て、貴様、何歳だ。


 「…どんくらい生きてんの?」


 校長は唇に指を当て上を見る、そうねーと言って暫くの間をおいて再度口を開く


 「かれこれ、1000年以上は生きてるんじゃ無いかしら」


 …予想の斜め上。つまりなんだ?こいつ、肌は若く、見た目も小さいため、見た目で判断すれば10代半ば辺りだが、実年齢は1000越えてるお婆さんと!?つまりそれは、俗に言う…


 「…ロリババァってか」

 「フフッ。次そんな事言ったら死ぬ方がマシって思えるくらいの恥をかかせて心からジワジワ責めていくわよ?」


 満面の笑みで恐ろしいことを述べられる。この人なら本当にやりそうで恐ろしい。口は災いの元だな。


 「それか…東雲柊だったかしら?貴方のお友達。彼に…」

 「なっ!?やめろっ!」


 俺のせいで他人に被害を与えるなんてしたくない。

それも、友人に。幼馴染みの柊ならもっと迷惑かけれない。


 「ちょ、ちょっと!離しなさいよ!痛いじゃない!」


 俺は校長の両手を床に押さえつけていた。想定よりだいぶ力は弱い。…ヤバイな。これは他人に見られると…


 「あ、や、やぁ海斗。気を失って保健室に連れてかれたって聞いたから調子に見に来たけど、その人は…」


 マジか柊。お前、タイミング良すぎ

校長にチラッと目を向けると何やら悪いことでも思い付いたようで、ニタリと邪悪な笑みを浮かべる。

そして目に涙を浮かべ柊を見て…


 「た、助け…ムグッ!」


 危ない。本当に危ない。柊は冗談通じない奴だから、危なかった。


 「か、海斗!?何してるの!?死んじゃうよ!?」


 いや、まあ、それは大丈夫なんだが…


 「んんんー!ん、んん!」

 「あー、コイツは…」


 言う前に下から吹き上げる強風で体が浮く。吸い寄せられるように天井へ向かって勢い良く。


 「痛っ!」


 天井へぶつかると風は止み、重力に身を任せて床へ落ちる。


 「ぷはっ。…苦しいじゃない!不老不死でもね、死ぬことは死ぬのよ!一度死の苦しみを味わってから生き返るのよ!?」


 そうなのか。それはすまない。じゃ、無くて!


 「いきなり何すんだよ!」

 「それはこっちの台詞!」

 「アンタがあんな演技しようとするから悪いんだろ!?」

 「アンタじゃなくてアイラよ!元は貴方が原因じゃない!」


 …あ。それ言われたら反論できない。友人の名を出されて感情的になり、押し倒したのは俺だ。

冷静に対処していればこんなことにならなかったのか。

柊は俺らが言い争うのが終わるまで律儀に黙って棒立ちしていたが、止めてくれても良かった。というか、止めろよ


 「あー…。もう、話しかけて良い?」

 「あ、あぁ。良いぞ柊」


 そう言うと柊は一度咳払いをしてから口を開く


 「貴女は…」

 「この学校の校長、アイラ・グロリア・エンディミオンよ。よろしく。それと私、不老不死だから。それで、天宮海斗に殺してもらうべく行動を共にしようと思ってるわ。何か質問あるかしら」


 柊が話しきる前にグロリア校長は纏めた自己紹介を終える。

だが、待って欲しい。


 「行動を共にする、とは…どういうことだ校長」

 「私の事はアイラって呼んで。校長って呼ばれるの、好きじゃないし。それと、そのままの意味よ。食住まで全て共に居ると言うことだけど、問題あるかしら?」


 校長…アイラは首を傾げて質問する。

問題大有りだ。つまり、それって俺の家に居候するってことだろ?


 「生憎、家は狭い寮だから…」

 「良いわよ。住めたらどこでも。それとも何?私のような異性が入ったら困るような物でも置いてあるのかしら?」 


 嘘を吐いて断ろうとしたが、アイラは悪戯な笑みを作り顔を寄せる。もう、うん。諦めよう


 「海斗…この人、不老不死ってどういう事だ?」


 柊は苦笑いしながら首を傾げる。


 「んー。貴方、無属性による武器精製できる生徒よね?じゃあ、剣でもなんでも良いわ。刃物を作って?」


 アイラは柊にそう頼む。…あぁ、成る程。柊の魔法剣で心臓を刺して死ぬ気だな。

 確かに、人を傷つけたり直接殺したりできる例外の魔法は、無属性による武器精製とルーンとかだしな。柊は手際よく手に剣を精製し握る。


 「じゃ、それ貸して?」

 「え、はい。いいですが…」


 アイラは柊から剣を受け取るや否や、心臓へ向けてそれを突き刺した。

アイラはゴボッと咳き込み吐血し、紅い鮮血が貫かれた刃より床へ滴り落ちる。

そして剣は魔力の粒となり、消散する。


 「ちょ、ちょっと!何を!!」


 柊は倒れるアイラを抱える。柊が焦るのも当たり前だ。

目の前でいきなり自分の心臓へ剣を刺す人間がいたら誰だって焦る。それが普通の反応なのだから。

俺だって、アイラが敵ではなく、こうやって死ぬのを初めて見たら焦っていただろう。


 「…ハァ…ハァ…。やっぱり、いつでも、とっても苦しいわね…。いきなり心臓へ異物が入ってくるなんて…」


 アイラはよろめきながら柊の前に立つ。血は既に流れていない。


 「こういうことよ。どう?信じた?」


 柊は顔を強ばらせてアイラを見る。誰だってそうするだろう。

目の前で死んだはずの人間が次の瞬間には立っていたら。

恐ろしくなって逃げたり、気絶することもあるだろう。


 「え…。…は?いや、嘘…だろ…」


 驚くのも無理はない。俺だって初見では驚くよりも絶望していた。

“死なない”なんてどうやっても勝ち目が無いから。


 「本当に存在したんだな…不老不死って」


 柊はいつもの真面目な顔に戻って俺を見る。

俺は静かに頷いてアイラを見る。論より証拠とはこの事。実演されたら信じる他無い。


 「あ、私のことは公言しないでね。生徒会長さん?これでも私、一応懸賞金かけられて世界から狙われてるから。隠しているけど、バレて生徒達が被害を被るは私だって気分悪いし。言うにしても、生徒会くらいにしといてね」


 …なんだと。懸賞金!?それ、つまり、俺…


 「これから宜しくね?天宮くん?」


 アイラはニッコリと満面の笑みで俺を見る。

…悪い夢なら覚めてくれ。バレたら俺まで狙われかねないじゃん。これ

 

 * * *

 

 家に着く。…あら?


 「貴方、寮って言ってなかった?」

 「え。いや、これは…その…」


 あー。成る程ね。嘘をついて断るつもりだったのね。

普通の民家…親御さんっているのかしら?


 「両親は…?」

 「…いないよ。HC社で働いてたけど、出張先で事故に遭って、さ。」


 あまり訊かなかったほうが良かった気がする。男の一人暮らし、というのは些か不安。

…仕方無い。一肌脱ぐとしましょう


 「…安心なさい。家事でもなんでも、私に、お姉さんに任せなさい!」


 えっへんと胸を張って誇らしげに言ってみる


 「プッ」


 見下している視線が私の胸に向いている。敵を作るのがこの上なく上手いね。コイツ


 「つか、お姉さんて…」

 「…いっそのこと焼こうかしら。今日の献立は天宮海斗の素焼きなんてどう?」


 ニッコリと微笑みを向けてみる。殺意むき出しの笑顔を。


 「ゴメンナサイ。あの、その、掌で煌々と燃え上がっている炎をお納めくださいな。それ、ルーンじゃ無いですか」

 「はいはい」


 今更ながら、脅すのはあまり良くないかな。

だって住まわせて貰うのだし、それじゃあ誠意が無いもの。ところで


 「貴方、私を憎んでないの?」

 「…あぁ。確かにアイラ、あんたは俺にあの二人、信長とジャンヌを殺させた憎き相手ではあるんだが」


 あるんだが?


 「…どうしても憎めないんだよ。あんた見てるとさ」


 そんな理由で、か。呪いへ対する憐れみなのかとも思えたけど、彼の瞳にそんな気配は無く透き通っていた。

…もしかして


 「一目惚れ?」

 「一昨日来やがれ。俺はもっと大人の色気たっぷりの女性が好みなんだよ」


 …そう言う彼の瞳もまた透き通っていた。少しショックを受けてしまう。

いや、あの人以外は恋愛対象に入ってないから良いのだけれど

1章はこれにて終了です。正直、無くても良かったんじゃと思えるくらい考えを纏めて文にすることが出来ませんでした。柊はオマケみたいな者で、2章から活躍する場が出てきます。実を言うと、居なくても良かったです。生徒会長の幼馴染みという設定が欲しかったからこのキャラは消さずに残ってます。

2章の話ですが、展開が変わります。と言うのも、ジャンヌや信長は続かないってだけです

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