SとM
「起きろ」
目が覚めると九十九ミトの顔が目の前にある。彼女は既に着替えを済ませており、どこから出したのか白いワンピースとスカートを身に付けていた。とても良く似合っていた。
「すぐに出るぞ。そろそろ夕刻だ、お前も私と一緒に部屋から出るところを天照ミコトに見られたくはあるまい?」
それを見られたら確かに彼女が暗殺者より怖い存在に成りかねない。一刻も早く出よう。僕は投げ捨ててあった上着を着て彼女と共に部屋から出た。
部屋の外、ホールには何事もなかったかのように静寂が支配していた。しかし、床には未だに血の跡が
―――あれ、ない?
「オハヨウゴザイマスナリ」
僕らの目の前にどこからともなく露骨な機械音声と共に一台のロボットが現れた。
「なに、これ」
その異様なフォルム、というかチープさにいささか度肝を抜かれ……いや呆れたというか。
「なんだこの、ゴムボールにちょんまげのようなものがついたロボットは……?」
怪訝そうな顔で九十九ミトがそれを見つめている。えーと、それはコ○助と言いまして……。
「我輩ハMノ代ワリデ来タナリ。チョット性能ガ悪イケド勘弁シテ欲シイナリヨ」
「これ……バックアップですかね?」
「……の、ようだな」
お互い神妙な面持ちでその代替え機、えーと……Kとか、もしくはSとか呼ぶのだろうか?
「Sト呼ンデクレナリ」
当たった。しかしSとかMとかちょっと名称的にどうなんだろう。僕とミトさんは二人してそのSを神妙な面持ちで眺めていた。
「食事ノ用意ガデキテルナリ。席ニツクナリヨ」
まあ、何はともあれバックアップが機能していることは喜ばしい。食事も提供されるとあって一安心だ。
「えーと、それは分かったけど、君は管理者に話が通じているの?」
重要な、もっともしたい質問をしてみた。
「ソレハチョット難シイナリ。善処スルナリ」
これは頼りになりそうもない。これはやはり九十九ミトと行動を共にしていく以外の選択肢はなさそうだ。
「あれー?何その子!かんわいー!」
あ、ミコトが来た。そして有無を言わさぬ速さでSに取り付く。
「いやーん、これ大好き!ここのロボの設計者分かってるね!私の好みドストライクだよ!」
それは単に君が子供向けアニメが好きってだけだろう?
それからミコトはSを触りまくって夕食中も終始ご機嫌であった。あれだけのことがあったにも関わらず夕食のハンバーグをしっかりと食べ切ってしまった。おかわりまでして呆れるほどの健啖家っぷりだった。
さて、そうして食事が終わったあたりで、僕らの目の前に例のルーレットが現れた。デート相手を選出する例のシステムは無事動いているようだ。Sが稼動したから動いているのか、九十九ミトが言うように時間通りに動いているだけなのか判断はつかないが。回っているルーレットに注目する。そして、止まった時に示された顔は――――
「……此花散」
思わず九十九ミトと目が合う。彼女も僕を見て、軽く頷いた。明日は此花散の部屋の捜索をすることになるだろう。
「あーまた私じゃなかったー!」
ミコトが盛大にぶーたれている。僕は君とデートをしないで済むならそれがいいのだけど。
それを横目に九十九ミトはさっと席を立った。僕の横を通り過ぎ自室に向かおうとした時、彼女は僕の席の下に何かメモのような物を落としていった。僕はミコトに気付かれないようにそれを拾い、ズボンのポケットに仕舞った。
「じゃあ、僕も……」
「ねえ!恭介」
ミコトに呼び止められる。何か嫌な予感がする。
「明日さ!此花さんいない訳じゃない?だったら代わりに私とデートしようよ!」
「お断りです」
「ひっどーーーーい!」
どうやって断ろうかと思っていたら既に断わっていた。考えよりも早く行動に移せるとは、自分の早業に感心する。自分で自分を褒めてあげたい。
後ろで恨み言を吐いているミコトを尻目に僕もとっとと部屋に引き篭もった。先程のメモの内容も気になることだし。
部屋に入って早速僕はメモをポケットから取り出し広げた。そこには、
『今日零時にホールで待つ』とだけ書かれてあった。これは、何のお誘いだろう?寝過ごさないように気をつけなければ。僕は妙に鼓動が早くなるのを感じていた。九十九ミト―――いや、本人ではない偽者であるはずなのに、その魅力は僕が出会った中学の頃と何も変わらないような気がしていた。もしかしたら―――本物なのではないか?そんな思いが胸に去来する。
僕は頭を振った。馬鹿な、そんなことあるはずがない。暗殺者が大手製薬会社の社長令嬢などという馬鹿げた話なんてあるわけはないのだ。僕はベッドに寝転び、机の上の目覚まし時計をセットした。
後は野となれ山となれだ。僕の殺された回数は四回。つまりあと一回しか死ねない訳だ。どうせ座して待っていてもこのペースで死んでいけばあっという間に命数は尽きてしまうはずである。なら、有意義に使おうと思う。最後の時まで、誰かの為に。
ピピピッ
零時の目覚ましが鳴った。実のところ目が冴えてしまい十五分以上前には目覚めてしまっていたので出る準備は終わらせていた。さて、では外に出るとしよう。僕は扉を開けてホールに出た。
「時間通りだな」
「うえ!?」
すぐ横から声を掛けられ、僕は吃驚して横に飛んだ。
九十九ミトは既に僕の部屋の扉の横に居て、僕を待っていた。
「時間に遅れないのは評価点としてはプラスだな。今後もそうしてくれ」
「は、はぁ……で、一体何の用ですか?」
「此花の部屋が開くか試す」
「え!?明日じゃ駄目なんですか?」
「もう、日付的には明日だろう?」
ああ、そういうことか。それにしても早すぎる気はするのだけど……。
「明日、日のあるうちでは天照ミコトの邪魔が入らないとも限らないのでな。とりあえずだが試す価値はあるだろう」
確かにあいつが掻き回してきたら、と想像したら九十九ミトの行動は非常に納得できた。
「じゃあ、試してみますね」
僕らは早速此花散部屋の前へと移動した。僕は扉横の指紋認証装置に触れる。
「ピッ」
プシュー
扉は、開いた。
やった。しかし喜び勇んで中に入ろうとする僕を九十九ミトが制した。
「待て。中に此花がいる可能性は高い。まず、私が入ろう」
確かにそれはそうだ。彼女が隠れるとしたらここは最も安全な部屋の一つだろう。
九十九ミトが先に入り、僕は五分後に再度入ることになった。五分はあっという間に経ち、僕は汗ばむ手でもう一度指紋認証装置に触れ、扉を開け中に入った。
「ミト、さん?」
中を窺うようにして踏み込むと―――
「待たせたな。誰も、いないようだ」
ちょうど九十九ミトが奥の扉から出てきたところだった。
「ざっと見たが何も無い。最低限の着替えだけ、後は冷蔵庫の中身から清涼飲料水が一本なくなっているくらいか」
「詳しく調べれば何か……」
「そうだな。君はその辺りで待っていてくれ」
僕はベッドの上でちょこんと座らせられ待つことになった。役立たずここに極まれりである。確かに彼女が捜索したほうが効率は良いので何の異存もないのだけれど。
十五分くらいの間彼女は黙々と部屋を捜索していた。僕は本当に何もせずじっとしていた。沈黙に耐えられない、というようなことはなく、僕は九十九ミトを観察することでそれを過ごした。彼女の動きは無駄が無く、見ていてとても気持ちがいいものだった。本当に―――どこかで見たことがある―――そんな気持ちが抑えられない。彼女の持つ雰囲気、所作を、やはり僕は見ている、そんな気がするのだ。
「行こう」
どうやら、捜索は終わったようだ。
「あの……行くってどこへ?」
「ここには何もなかった。そうなれば次は管理者を探すべきだろう」
何と。しかし管理者を探し出してどうするというのだろう?
「そう不信そうな顔をするな。此花がここに居ない以上次に狙うべき場所は管理者のいる場所だと思わないか?そこを押さえることが出来れば私達の行動は思いのまま手に取るように分かるはずだ。まあそれほど簡単に発見できるとも思えないが……」
なるほど。僕らの生殺与奪を簡単に握ることも出来る、という訳か。
「でも、僕らにも見つけるのは難しいような……」
「そうでもないさ、渡されたパンフを見たまえ」
僕はMに渡されていた竜宮御殿の取説を取り出し地図のページを開いた。
「このMAPの施設区画、通路、エレベーターを一つの箱として立体視する。そうすると大体の構造はこうだ」
九十九ミトは紙を一枚取り出し、まるで見てきたかのようにさらさらと立体図を描き始めた。
「実際の構造はかなり大きく、まるで船のような感じだな。そしてこの地図の不自然な点が浮かび上がる。それがここだ」
彼女が指差した場所は僕らのいる住居区画だった。僕は未だにここのどこが不自然なのか分かっていなかったのだけど。
「立体図と照らし合わせてみるといい。ある部屋の下の空間が、妙に空いているだろう?ここにおそらく地図に無い部屋があるのではないか、ということだ」
それは、甚助の部屋の真下だった。
「ということは……もしかして甚助の部屋から?」
「ああ、そこに移動できる可能性が高い」
なんと。盲点というか、言われてみればそこ以外ないというか。
「実際その甚助という者はそこを守る目的で配置されているのではないか?君のボディーガードというのは名ばかりで」
……否定はしません。
「彼はお調子者の皮を被っているが、腕は相当立つと思う」
「嘘、そうなの?」
思わず本気で聞き返してしまった。
「ああ、本気で私が勝負しても、恐らく互角。私の予想ではな」
九十九ミトの予想外の高評価に僕は面食らった。僕には甚助がそこまで優秀なボディーガードだとは到底思えないんだけれど……。それよりも困ったことといえば。
「甚助の部屋を開けないといけないんだけど、どうするの?」
「壁をぶち壊そうか」
真顔で言われると冗談に聞こえないんですが。
「冗談だ。さすがにミコトが起きてしまうだろうからな。それよりも現実的なのは出てくるところを捕まえるか、もしくは……」
そこで彼女は言葉を区切り、少し考えるような動作をしこう続けた。
「君の部屋から、入れるのではないかと思うのだが」
「あ、あった」
「予想通りだったな」
まさかと思ったのだが僕の部屋には甚助の部屋と繋がる通路があったのだ。一見して分からないが、冷蔵庫の奥が二重扉になっていて更に奥へと行ける様になっていた。
「ちょっと狭いが、大人一人くらいなら余裕で通れるな」
隠し通路があったことにも驚いたが、それよりもなぜ九十九ミトはこんなにも簡単にその存在を言い当てることが出来たのだろう?
「何、簡単なことだ。君が最初に殺された時も尼崎甚助が手助けに来たのではないのか?」
「ええ、確かにそうですけど……」
「君一人では後片付けなど到底出来ないだろうからな。殺されたというのに君は非常に落ち着いて見えた。事態を把握していなければそうはならない。誰かが、おそらくは尼崎甚助が手助けし、相談をしたというのは容易に想像出来る。では、その尼崎甚助はどこから入ったのだろうか?」
「えっとそれは多分マスターキーで……」
「そのはずだ。いや、そのはずだった。だが君が最初に殺された時はそうじゃなかったはずなんだ」
「……どういうことですか?」
「私はいつ事が露見するか分かるように君を殺した後君から抜いた髪の毛を一本扉に挟んで部屋を出たんだ。いつ誰が発見するかを確かめる為にな」
なるほど。ということはそれが落ちていれば誰かに殺人を知られたことになる訳だ。
「しかし夕刻、君が出てくるまで、髪の毛は落ちていなかった。君が出てくる五分前に私の目でそれは確認している」
「つまり、僕の部屋に誰かがいたならそいつは……」
「そう、扉以外から入った、ということだな」
ぐうの音も出ない。一体どこまで見通しているんだろう彼女は?
「偶然隣り合った部屋にした訳ではあるまい?何かあった時には君を助けるには好都合だろう」
なるほどなあ。放置プレイかと思いきや、思ったよりは気に掛けて貰えていたようだ。
「何はともあれ、入ってみようか」
そう言うと九十九ミトは僕に入るように手で促した。
「え?僕が先ですか?」
「当然だ。出た先で誰かが待ち構えていたら生き返れる君が先に攻撃を受けるほうが良いだろう?」
僕は乾いた笑い声を返すのが精一杯だった。はぁ……何もありませんように。
僕は意を決し冷蔵庫の中へと入っていった。
ガチャ
僕は無事甚助の部屋へと侵入し――――
「えええええええええええええええええ!?」
何、これ?
「恭介、何があった?敵か!?」
「あ、いやそういうのじゃないんですけど……」
僕の後に続いて九十九ミトも甚助の部屋に入ってきた。一目部屋を見るなりすぐに怪訝な顔になってしまった。
「……何だこれは?」
僕が聞きたいです。
部屋の各所には写真が所狭しと飾られていた。引き伸ばし大写しになっているものもある。写っているのは……この竜宮御殿にいる女性陣ばかり、それも……。
「監視カメラの画像か。私達を観察しデータを集めていたのか。それにしても、大分胸元ばかり接写しているようだが……」
どうやって撮ったのか分からないがパンチラ画像まで陳列している。甚助の趣味と実益を兼ねた結果がこの惨状だろう。エロガッパにもほどがある。
「さて、ということは間違いなく監視施設があるな。床を調べてみようか」
少し調べると床にハッチがあり、開けて見ると下へと続く梯子がついていた。僕らはそこを降りていくと、少し広いメタリックな壁に囲まれた空間にでた。
「ここは?」
「どうやら、目的の場所らしいな。そこに扉がある。おそらく管理室だろう」
彼女の指差す先には扉が一つあった。しかし……。
「開ける方法は?」
扉には僕らの部屋についていたのと同じ認証装置とモニタが一つ付いていた。
「一応、試してくれるか?」
九十九ミトに促され僕は認証装置に触ってみたが、扉はうんともすんとも言わなかった。
「手詰まり、ですかね?」
「そうでもないさ、ここまで来たんだ。おそらくはそろそろ……」
その時モニタが点いた。そこに映って居たのは少し疲れたような顔をした甚助だった。
「甚助!」
『あーよかった。見つけてくれて助かったっすよ~』
認証装置の横にあるマイクから甚助の声が聞こえてきた。
「何してるの?こんなところで、僕を放っておいてさ」
『いやあこれには深い痴情のもつれ……じゃなかった不快な次女だったっけかな……えーと』
「深い事情、だな」
九十九ミトが的確に突っ込んだ。
『そう、それっす!深い事情が……って駄目っすよ恭介君、知らない人をこんなところまで連れてきちゃ』
「甚助が勝手にいなくなるから悪いんじゃないか。見てたんでしょ?協力せざるを得ない状況だったってことくらい察してよ」
『うーん……でもっすねぇ……』
「私の素性が不満か?尼崎甚助」
『そうですねぇ。暗殺者九十九ミトさん』
二人から目には見えないが威圧するようなオーラが出ている感じがした。鈍い僕でも感じ取れるほどには緊張感が高まっている。
「協力するというのは本当だ。現に幾度か彼を助けたところを見ただろう?そこの監視装置で」
『まあ、ねぇ。それでも簡単には信用するわけにはいかないんすよ。お分かり頂けます?』
「そういう貴様は何もせずそこで何をしているんだ?そちらのほうが余程役に立っているようには見えんが?」
『……閉じ込められちゃったんすよねぇ』
「え、甚助それマジで?」
『はい、一回ここも襲撃されましてね。何とか撃退したんですが……』
「ええ!?ここも襲われたの?一体誰に?」
そこで甚助は思わせ振りな視線を九十九ミトに送った。何だろう今のは?
「何だ?何か私の顔についているのか?」
『いや、あんたじゃないんすか?九十九ミトさん。僕はあんたに襲われたんですけど』
思わず僕は彼女の顔を凝視してしまった。まさか―――
「なるほど。恭介を人質にしてここを再び開けさせに来たと、そう言いたいわけだな」
九十九ミトがにやりと笑った。しまった、そうだとすれば全部辻褄が―――
「だが、生憎それは私じゃない。百目顎の仕業だろう。あいつめ、私に変装したのか」
彼女はやれやれと言った雰囲気で肩を竦めた。どうやら心配は杞憂だったようだけど……。
『そう言われてはいそうですか、とはならないっすよ?まあ仮に開けたくともロックはしばらく開かない仕様なんすが』
「え?そうなの?」
『緊急排除装置を使って敵を締め出したので安全装置が掛かっちゃってまして、この扉は四十八時間は何しても開かないっす。後二十時間くらい?』
「甚助、その中は大丈夫なの?」
『ああ、それは平気っす。食い物もありますし……ただ……』
甚助は口をもごもごさせて言い淀んでいる。
「どうやら、聞かれたくない話のようだな。席を外そうか?」
『そうして貰えるっすか?まあこの口の軽い坊ちゃんからすぐ洩れると思うっすけど』
ずいぶんと信用がないな、おい。ちょっと憮然としていると、マイクから何か話し声が聴こえて来た。甚助と誰かが喋っているような……。
『……いいんすか?はぁ、そうおっしゃるなら……』
ウイーン。音と共にどこからともなくSがやって来た。驚いて見ているとまん丸の顔が二つに割れ、中から新たなモニタが出てきて映像を映し出した。
『初めまして……かしら、九十九ミトさん』
「母さん!?」
モニタに映っていたのは僕の母、弟切撫子その人であった。ただ何時もと違い、どこか元気が無いようだけど……。
「初めまして、弟切撫子夫人」
九十九ミトは軽く礼をしながら応えた。
『……息子を護って頂いたようね。感謝します、ありがとう。本来は甚助がしなければならないことだったのだけれど、私のミスでこんなことになってしまったわ。本当に助かります』
「いえ、私自身の為でもありますから。それよりも、体調が優れない御様子ですが?」
『ええ、ちょっと襲われた時に怪我を、ね』
「だ、大丈夫なの母さん?甚助も一緒なの?」
『今は独立した医療区画で一人休んでいるわ。この管理室からしか移動出来ない場所にあるから安全よ。怪我を押してMを操作していたのだけどやはり無理があったわね』
「え?MってAIじゃなかったの?」
『あんな精巧な動きが出来るAIが開発出来てたら苦労しないわ。バカ息子』
グサッ
「そもそも、こんな危険なことならわざわざ来なくても……」
『実の息子を的に掛けてるというのに私が逃げてどうするの?愛する息子のためなら体ぐらいいくらでも張るわよ。それにこれは、私の戦いでもあるのだから』
その母の言葉はちょっとうれしかった。
「確かに分かり易いネーミングでしたね。次はもう少し捻る事をお勧めしますよ、撫子殿」
「えっと……もしかしてMOTHERのM?」
『ご名答、でもカンニングだから零点ね』
安直すぎて気がつかなかっただけです!(言い訳乙)
『ちなみにSは甚「助」のSね。Sは最初から甚助が動かしてたわ。自動操作のAIと半々だったから働きは鈍いけどね。あのバカっぽい動きを見て分からなかった?』
そ、そう言われればそんな気も……自分の見る目の無さに何だか落ち込んできた。
「で、夫人。今後どうされますか?何かプランがあるならお手伝いしますが」
『うれしい申し出ね。ではお願いしようかしら、他に手はないようだし』
どうやら母は九十九ミトが気に入ったようだ。昔から母は、甚助を除けば適材適所で人を運用することに長けていた。任せて問題ないだろう。
『では現状を説明します。よく、聞いてね』
僕と九十九ミトは母の話に聞き入った。




