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~平均的男子がプロの暗殺者に勝てるとお思いで?~

 完結まで書いてある(きりのいいところ)ので毎日ちまちま投稿していきたいと思ってます。

 楽しんで頂ければ幸いです。

 胸と首の刺し傷、全身火傷、脳挫傷、左腕と右大腿部の銃創、右腕解放骨折、左足切断……。

 壁全体がコンクリートで覆われ、一箇所だけ鋼鉄の扉がある、閉ざされた密室。その中央におよそ無事な箇所がない一つの死体が転がっていた。

 死体の人物の名は「弟切恭介おとぎりきょうすけ

 私立天獄坂しりつてんごくざか学園高等部一年生である。

 成績は中くらい、運動能力も人並み、中肉中背の平均的身長、イケメンというほどでもないが不細工でもない、いわゆる凡人だった。

 ただ一つ、弟切恭介が他人とは大きく違うと認識されている部分、それは世界で三本の指に入る大企業グループ弟切財閥の御曹司であるということだった。

 そう、これが元で―――彼、弟切恭介は惨殺されることになったのだ。

 さて、どうして彼は死ぬ運命にあったのか?それを説明するには、時を少し戻す必要がある。

 そう、あれは今から―――。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「許婚を決めなさい、恭介」

「はい?」


 高校へ通い始めて一学期が終わり夏休みが始まった日のこと、その時僕は朝食を取るテーブルについていた際、母に唐突にそう告げられた。

 長いテーブルの反対側にいる母を見つめながらあっけに取られていると、母――弟切撫子おとぎりなでしこは涙を拭く振りをしながら語り続けてきた。


「孫の顔が早く見たいのよ……。最近持病が悪化して私もいつまで元気でいられるかわからないし……」


 そう言って母はわざとらしく二、三回と堰をする。


「……母さんの持病はただの肩こりでしょう?」

「あら、そうだったかしら?」


 母はその端正な顔立ちでしれっと惚けてみせる。

 整えられた短い髪、平時から口元がきゅっと引き締まり、全身から凛々しさがあふれ出している。弟切撫子は僕の母であり、現在の弟切財閥の総帥である。父――弟切宗太郎おとぎりそうたろうが他界してよりその全てを引き継ぎ、グループ会社の経営を一手に担っていた。この家の家長であり、誰も逆らうことは出来ない。つまり、この話はすでに決定事項なのだ。


「というわけで、貴方はお見合いをするの」


 何が『というわけ』なのだろう。まあ、いいか。


「わかりました。じゃあ支度して参ります」

「理由とか、聞かないわけ?」

「聞いたところでどうなるわけでもありませんし。粛々とお受けしますよ」

「……ほんとつまらない子ねぇ、ちょっとは興味を持ったりとかどうしてこんな話になったとか……」

「人生は、ままならないものですから」

「はぁ……どこの仙人様なのかしら」


 呆れ顔で母は溜息をつく。

 人生は儚い。そのことを僕は身を持って体感し続けてきた。だからというか、僕は妙に同世代の人間より老成している印象を人に与えるようだ。まあそれは置いておいて、この話を受け入れた理由は他にもあった。僕の母はこうみえて無駄なことをする主義ではない。横暴な話に見えてもきっと何かしらの意図があり、僕のことを考えて決めたことに違いないのだ。


「見合いの相手は我が企業のライバル会社のご息女よ。失礼のないようにね」

「はい。で、それはいつから―――」


 母はにっこり笑い、いつの間にか僕の後ろに控えていたボディーガードの尼崎甚助あまがさきじんすけに手を振った。


 「今から、よ」


 その言葉を聞くや否や、僕は甚助に体を掴まれ、抱えられる格好で部屋から連れ出されたのだった。



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