胎児の揺りかご
それは赤黒い肉壁。いや、間違えた。レンガの壁だ
レンガの家の中には大体のものが揃っている。エアコンとかポンプとか浄水器とか、どれが欠けても替えの効かないオリジナル。あぁ、そうだった。壁の話だよ。たんぱく質を主体としたレンガの大量生産。実は特別なレンガで塩分に強い、寧ろ塩分が必要。限度はあるよ。沢山作ってるから1日に数千もの不良ができる。この話は後でしようか。異物があってさ、他人がいるんだよ
『はやくそとにでたいな。あなたにあいたいな。ぼくはまだあったことのないあなたがだいすきだよ。そういうふうになってるんだ。あいたいよ』
通気孔から白い煙だ。沢山の猛毒を含んでいるらしいので、浄化することにする。その他人はどうしたって、他人って程でもないよ。レンガを積み上げただけだから、気にしても無駄だって。大抵の事は解決出来るようになっているし、なんとかなる。どうせ生まれてないものを殺すもないでしょ、ありゃ肉の塊だ
『ねえ、どうして。むりやりぼくのなかにけむりをいれるの。ほーすでつながれて、むりやりそんなことをするの。くるしいよ』
エアコンが汚れて壊れそう、溶けて穴が空いたら大変だ。ホースが細くなっている、ポンプで無理やりにでも送らないと。最近作業効率が悪い、不良ばっかりだ。螺旋に損傷、いんや矛盾。通気孔は大きく開いて、もっともっと、回路がバカになって、みんな大好き自傷他傷。電車が通るシナプスが足りません、マクロファージは食い飽きた。ごめん、話を逸らそう
『ぼくはもうだめみたいだよ。あいたかったのに、でてみたかったのに。ぼくなんかよりもけむりのほうがだいすきだったんだね。かなしいな、くやしいな』
今にも崩れそうなレンガの家。通常運行で参ります。今まで通りが一番なんで、煙突から煙が立ち上る。水子達も今まで通り、私たちも今まで通り
『ぼくよりもだいすきなけむりといつまでもなかよくしてね』