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200文字話集『羽生河四ノ』

作者: 羽生河四ノ

CDアルバムみたいにしたかったんです。

羽生河四ノ



収録


01.タコナイトに行かないと


02.ガルバンゾ


03.う・ちゅ・う・じ・ん


04.0157


05.チヨチクチヨキンギヨ


06.濡れたズボンを体温で乾かす人の話


07.鼻


08.くじらアイライン


09.異世界系


10.瞬●殺のポーズで


11.キャリーのキャリーバッグ






01.タコナイトに行かないと


 焦っていた。私は焦りまくっていた。早く、早くしないと。

 ドキドキしていた。


 あ、タコナイトっていうのは、フェスのこと。


 チケット入手に苦労したんだ。


 とにかく私は、急いで準備をして家を飛び出した。


 急がないと遅れてしまう。二組目に私の本命が出る。


 私は急いだ。



 会場に何とか間に合い、受付でチケットを出した。

 でも、

 「イカは駄目です」

 そう言われた。


 鏡を見る。

 「あ!」

 全身を赤く塗っていたけど、みみを隠すのを忘れてる。






02.ガルバンゾ


 「あ、ガルバンゾ」

 友達が僕の事を見て言った。

 「ガルバンゾって呼ぶな!」

 僕は叫んだ。『きっ!』っていう顔をして叫んだ。

 だってそう呼ばれたくないんだもん。

 「お前がそう呼べっていったんだろ」

 友達は言った。


 ガルバンゾっていう言葉を初めて聞いたとき僕は『超かっこいい、クール、強そう』って思った。シュワさんやスタロン的って思ったんだ。

 でも調べたらガルバンゾって『ヒヨコ豆』って言うんだって。


 違う。

 それじゃない。






04.O157


 深夜、突然腹が痛み出した。

 私は救急車を呼んだ。

 夫は出張中だった。


 「0157です」

 病院で先生は深刻そうな顔をして言った。

 「食中毒ですか?」

 「いえ違います」

 「だって先生O157って」

 「0157です」

 「ゼロイチゴーナナ?」

 は?

 「なんですかそれ?」

 「北海道北見市の市外局番です」

 先生は言った。ものすごく真面目な顔で。

 「呪いの類でしょう」

 「呪い?」

 「はい、旦那さんは出張中との事ですが、今どちらに?」

 「・・・」






03.う・ちゅ・う・じ・ん


 宇宙人が来た。

 「うわ!」

 それを見て俺は叫んだ。

 宇宙人は円盤を降りるとこちらに近づいてきた。

 俺はキャトルミューティレーションかと思って怯えた。

 「山本モナ知ってる?」

 宇宙人が言った。

 「え?なんで?」

 「『お・も・て・な・し』って言った人でしょ?」

 「山本モナじゃねえ!滝川クリステルだし!」

 俺は宇宙人に飛び掛った。

 滝クリ様は心の女神。

 キャトルミューティレーションされるかもしれないが、とにかく俺は飛び掛った。






05.チヨチクチヨキンギヨ


 JAで涼んでいると、目の前に老婆達が座った。

 「暑くて干からびるわ」

 「もう干からびてるわよ」

 老婆達は楽しげだった。

 でも急に、

 「チヨチクチヨキンギヨ」

 「チヨチクチヨキンギヨ」

 「チヨチクチヨキンギヨ」

 という単語が頻繁に会話内に出てきて、私は呪文かと思って顔を上げた。


 その瞬間、


 私の顔面に老婆の一人が放った入れ歯が炸裂した。



 後で考えたらあれは「ちょちくちょきんぎょ」の事だと分かった。


 でも、トラウマになった。






06.濡れたズボンを体温で乾かす人の話


 彼とこれからお風呂に入る。


 「沸いたよー」

 彼を呼んだ。

 彼は脱衣所に来ると、すぐに服を脱ぎだした。

 「ぎゃー!」

 私は叫んだ。

 彼の足が真っ青に変色していた。

 「壊死!?切断!?」

 私は突然両足が壊死して切断しないといけない人とは付き合えないから別れようと思った。


 でも、


 よく見るとそれは彼が履いていたジーパンの青が色落ちしたものだった。


 もお~だからビーチボーイズの反町ごっこはやめたらよかったのに。

 私はそう思った。






07.鼻


 笑うと、鼻が鳴る。

 所謂ぶたっぱなというやつだ。

 私はそれで何度も男を逃がしている。

 男っていうのは、とりあえず我々女を笑わそうとする感があるからだ。

 だから私はそのせいで何度も男を逃がしている。

 大体の男は、私のぶたっぱなを見ると引き攣る。

 一度なんか居なくなっていた。


 「あははははぶひっ、ぶひぶひぶひー、ぷぎー、ぷぎーぷぎー、んご、んごんごんご・・・」

 これが私のぶたっぱなだ。


 コレが許せる男と私は結婚します。






08.くじらアイライン


 最近、くじらアイラインの女性を良く見る。


 え?


 ええっと・・・、

 くじらアイラインっていうのは、まあ、あれ、目の周りのメイク。

 まあ、分からない人は『東京湾アクアラインで海ほたるに行く』みたいな事だと思ってくれたらいいです。


 それで、

 私はそのメイクが好きだ。

 だって目元にくじらが居るんだ。

 とてもいやらしい。


 しかもこないだなんて、

 「あー、それ『歌川国芳の宮本武蔵と大鯨と鯨涛』じゃないかあ!!」

 テンション爆跳ね。






09.異世界系


 気がつくと異世界に居た。

 「ここは?」

 近くにはエプロンの人が居た。

 その人は、

 「あぼあばお」

 と言った。

 耳が尖っていて、肌は緑色。ベタ過ぎる異世界だ。

 それに、

 「どうして縛られているの?」

 体が椅子に固定されていて、身動きが取れないのだ。

 「ぼおおびい」

 その人は言った。手にはミノを持っていた。

 「ちょっと何、何」

 「おえれあい」

 その人は、固定されて動かせない手の指にノミを当てた。

 反対の手にはハンマーを持っている。






10.瞬●殺のポーズで


 交通量調査のバイトをしていると、たまに瞬●殺のポーズで移動している人を見かける事がある。

 こないだ見た。

 その人は男性で、スーツで革靴で鞄を小脇に抱えて、瞬●殺のポーズで移動していた。

 「・・・」

 僕の肌感だけど、家に帰っている感じだった。


 でも次の瞬間、角からその人の前に柄の悪い方々が出てきて、


 「あ、危ねっ!」


 って、僕が言う間も無く、


 『天』


 なった。


 なので僕は交通量調査票の『瞬●殺』の欄に『一』って書いた。






11.キャリーのキャリーバッグ


 キャリーはいつもキャリーバッグを引いて歩いている。

 なんでだろ?

 気になったので私は本人に聞いてみる事にした。

 「ねえ、いつもキャリーバッグを引いているけど、どうして?」

 「ああ、これ?」

 キャリーは笑った。

 「SPECの戸田さんのマネなの?」

 「ちがうわ、コレには、豚の血が入っているの」

 キャリーは笑いながら言った。

 「ど、どうして?」

 「ほら、私って豚の血をかぶらないと、力が出ないから」


 ああ、そのキャリーなんだ。





※ちなみにタイトル、並びに空白は文字数には含みません。

二百文字でお別れっていうのも淋しい気がして。

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― 新着の感想 ―
[良い点] どれも短編だが、気の効いギャグのセンスあるのが凄い。さりげなく仕込まれているのがツボに嵌まります。  01.タコナイトに行かないと……これ一番面白かったです‼️ イカ……赤く染めてタコに…
[一言] なんていったらいいのか…「新鋭アバンギャルドジャズバンド」なんて銘打たれたCDを聞いたような気分です。 全体としてはよく分からないけど、個々のフレーズは分かる。 でも全体としては奇妙。 個人…
2015/08/18 02:48 退会済み
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