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魔王の娘と異世界拉致された俺  作者: きしかわ
やってきまして王城編
19/19

19話 見え隠れする暗雲とか趣味とか。

「では私はオリカのところへ行ってくるのじゃ。後は任せたぞ、イルヴァ。……くれぐれも、逃げるでないぞ?」


「はあい~……」


肩を落として項垂れるイルヴァに念押しし、私は妹の待つ精霊宮へと歩を進める。

別れ際、トーヤが疲れきった表情をしていたが、あれは恐らく「ミリィの手伝い」が凡そ容易いものではないと見当がついた故だろう。

手伝いの内容は置いておくとして、何を手伝うかを尋ねても私から教えてもらえなかったのだから余計に不安に思うのは当然だ。

良いザマだ。あれだけ人を弄り回したのだから仕返しをされても文句はあるまい。いや、有ったとしても関係ない。捻り潰す。


そも、と私は考える。

私が男を連れて帰ってきたからと言って、それをすぐに恋愛に絡めて考えるイルヴァの脳髄は桃色に染まりきっている。

というか仮にも魔王の娘に対して不敬ではなかろうか。

まあ別にそれはいい。あの脳天気な虎獣人イルヴァに期待することが間違っている。


――トーヤ、か。

私が誤って喚んでしまった異世界の人間。

出会ってから此処までの旅路で感じた彼の印象は、一言で言うと「お人好し」。

自分が異世界に引きずり込まれた言わば被害者だというのに、加害者である私を責めたりせず……あれ、責められたか?あれはどうなんだ?

まあいい。

ともあれ彼は私を憎むこともせずに――どころか私の意図を理解してくれようと努めてくれた。

その上、「私を疑った」と謝りさえする。私を疑うなぞ自分を取り巻く状況を考えれば当然だろうに。

不思議な男だと思う。

二言目を付け加えるならば「エロ坊主」なところが玉にキズだが。

あやつは隙さえあればエロ目的に向かってひた走る部分がある。思考が煩悩に引きずられて奔走しているきらいがあるのは私の気のせいなのかどうか。

総じて言えば、善人であることは疑いようがない。

だからこそ、私はトーヤを元の世界に戻すべく手段を講じることに躊躇いはないのだが――人を小馬鹿にした報いだ。その前に色々働いてもらおう。


精霊宮の本館の入り口に小さく設けられた白い門を潜り、私は精霊宮に足を踏み入れた。

周りを花々に包まれたこの場所は何時も花弁から漏れ出す甘い匂いが漂っている。

季節に左右されず花が咲き続けるように魔術によって整えられたこの場は、まるでお伽噺のように現実感を伴わない。

お姫様の家、ね。

こんな所に自分の部屋を持つなど信じられない。此方がこんなものを本気で喜ぶと思っていたらしい父上の感性はずれているとしか言いようがない。

そしてそのずれた感性を同じく持っているらしい妹。


「オリカは昔から夢見がちだったしのう……」


「――何かにつけて城を飛び出していく、破天荒なシア姉様よりはマシですわ」


「……オリカ」


漏らした言葉を思いがけず返され、声のした方を見やれば――浅葱と白に彩られた柔らかなドレスに身を包んだ我が妹、オリカが此方を不機嫌そうに見つめていた。

オリカの隣には神官であることを現す白いローブを着込んだ小柄な少女が控えている。少女は私が自分を見たことに気づくと、慌てた様子で頭を下げた。


「あっ、えっと……!シア様、ご無沙汰しております!」


「うむ。久しぶりじゃの、テルミナ」


肩口で揃えた淡い萌黄色の髪を揺らし――ローブの厚い生地の上からでも分かる胸元の豊満な双丘をも揺らし――若干緊張した様子のテルミナの様子に微笑む。

この小動物然とした少女は愛いのう、などと考えつつも、私は本題を切り出す。


「して、オリカ、テルミナ。私に用が有ったようじゃが……どうしたのじゃ?」


「そ、それがですねシア様!」


「待ちなさいなテルミナ。この話はわたくしの部屋でしましょう」


「あ、はい……」


がばりと顔を跳ね上げテルミナが必死な様子で話そうとしたのを遮り、オリカが自分の部屋へと身を翻す。



オリカの部屋に入り、中央に置かれたソファに身を沈める。

対面にはオリカとテルミナが並んで座った。

久々に訪れたオリカの部屋は、なんというか、やはり。


「相変わらずの少女趣味じゃのう……」


「別に良いじゃないですの!」


全体的に桃色と白色系で統一された部屋の雰囲気は、見ただけで甘やかな空気に満ちている。

加えて、家具に施された装飾の数々までもが可愛らしいもので揃えられており、部屋のあちこちにはぬいぐるみまで見え隠れしている。

本人の性格はなんというか若干キツめなのだが、その趣味嗜好とのギャップが酷いのではないかと私は思う。

それ以上、自分の嗜好の話を続けられるのを嫌がったオリカが、こほんと咳払いをする。

私が自分に注目したのを確認してから、オリカは眉根を寄せてこう切り出した。


「……さて、改めまして。お帰りなさいませシア姉様。帰って来られて早々ですが、面倒事が起こりそうなのですわ」






お久しぶりです。

短めですが復活の狼煙を上げに参りました。ギャグ無しですみません…。



さて、更新していなかった理由なんですが……。

言い訳をさせて頂きますと、この2ヶ月はまさに怒涛の勢いでイベントが巻き起こったんですよ。


①例の地震の影響で、今頃になって家が壊れる

 ↓

②必死に家を直すべく金策に走る

 ↓

③融資してくれる銀行見つけた!

 ↓

④勤め先の会社が倒産

 ↓

⑤銀行が貸し渋りをし始める

 ↓

⑥ぐおおおおおおおお



とまあ色々有ったわけですが、ようやく落ち着き始めたのでゆるゆると更新を再開したいと思います。ペースは落ちますが、どうかよろしくお願いします。


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