ー第3話 組織と任務ー
「あと、説明しなきゃいけないのは…協会についてかしら」
「協会…って何ですか?」
「正式名称TSS(Transender Summary Society)、日本語でいうとトランセンダー統括協会ってとこね、トランセンダーは全員TSSに登録しなきゃいけない決まりなの」
「ちなみにお母さんはTSSのトップ12人の1人なんだよ」
「す、すごいですね…」
「ありがとう、でもいま2人空席があるのよね」
「えっ何でですか?」
「今、例の実琉を襲った組織と一部の無能力者を良く思ってないトランセンダーたちの組織が対立してよく戦闘があるのよ、TSSはその戦闘に介入して鎮圧してるんだけど、Aランクのトランセンダーでもトランセンダーと武装した人たちを同時に相手にして、それも非殺傷でやろうとするとかなりキツイのよ、2人はその戦闘でね…」
「そうなんですか…そういえばそのランクってなんですか?」
「ランクはTSSが定めるもので、そのトランセンダーの強さを表すもの、強い方からA、B、C、Dとあるわ、ほとんどがCとDでBが全体の30~40%ってとこかしら、Aランクは現在トップ12人に所属してる10人と実琉くらいかしら」
「実琉もスゴイんだな!!確かにさっき強かったもんな…でも何で実琉だけAランクなのにトップ12に入ってないんですか?」
「年齢的な問題がほとんどね、トップ12に入ると仕事や任務が忙しすぎて学校に通いにくいし…よし今日はもう遅いからこれくらいにしましょう、明日は乃亜の登録の更新に行かなくちゃいけないし、私はトップ12の会議もあるから」
次の日
TSS本部前
「うわぁすげぇ」
本部は周りの建物より遥かに巨大でデザインも近未来だ
「表向きは大手製薬企業の本社なの、さぁ早く行きましょう」
早紀は建物の中をどんどん進んでいく
5分くらい歩くと大きな吹き抜けの部屋にたどりついた
「いよいよここが本部よ」
3人は受付に向かう
早紀は受付の人に小声で何かを話し封筒を渡す
受付の人は急いで奥に入って行った
3分ほどして若い男の人が出て来た
「紹介するわ、彼はトップ12の一人、道上拓海よ」
「紹介された通り、僕は道上拓海だよよろしく」
「斎藤乃亜です、よろしくお願いします」
「そうか、君が…あと、実琉ちゃん久しぶり」
「はいご無沙汰してます」
「今回はレベル測定の為に彼と模擬戦をしてもらうわ」
「ええぇぇ!?こんなに強い人とやるんですか?」
「大丈夫よ、ここの模擬戦場は特殊でね、怪我したり死ぬってことはないのよ、そのかわり攻撃をくらうと情報化されてゲームみたいにメーターが減っていくの」
「いや、そういうことじゃなく…」
「それに、乃亜が測定するならランクAが相手じゃないとダメだと思うわ、はい文句言わない」
「はい…」
「それでは制限時間3分、開始!」
「乃亜君そちらからどうぞ」
乃亜はとりあえず様子見で電撃を飛ばす
拓海は軽々と避ける
「乃亜君?本気でやらないとすぐに終わっちゃう…よ!」
拓海は氷の塊を飛ばしてくる
乃亜は電撃で相殺する
「やっぱりこんなんじゃだめか…なら」
拓海は氷の剣を創り切りかかってくる
乃亜は体を捻りぎりぎりでかわすと電撃を
飛ばすが剣で受け止められる
「電撃相手に接近戦はキツイか…使うとは思わなかったが」
拓海は両手を地面につける
すると部屋中が氷で覆われていく
乃亜は足下に電気を流し自分の周りだけは氷が来ないように防ぐ
「そうくると思ったよ、だけど僕にとってこのフィールドは有利だ!」
すると拓海は一瞬で乃亜の背後に着き蹴りを入れる
(さっきより早いっ!)
乃亜は前に思い切り飛びのき回避する
「これは能力ばかりに頼っていられないな」
今度は乃亜が一瞬で拓海の背後に入り蹴りを入れる
拓海は氷で蹴りを入れられる部分を覆い防ぐ、拓海にダメージはないが氷は粉々に砕け散る
拓海は距離をとる
「なんてキック力だ…もう時間も少ない、次で終わらせてもらおう」
拓海は再び氷の剣を創る
そしてさっきより遥かに早いスピードで突きを入れる
乃亜は動こうとしない
「決まった!」
そして剣が乃亜の体を貫く
しかし乃亜はダメージをくらっておらず剣は乃亜をすり抜けている
「!?…どういうことだ!?」
拓海に一瞬の隙ができる
乃亜はその瞬間を逃さず後ろに回り込み電撃を放とうとする
そこでブザーがなった
「そこまで、両者ノーダメージでこの模擬戦ドロー…乃亜頑張ったわね、拓海はちょっと熱くなりすぎじゃない?」
「久しぶりに熱くなっちゃったよ、乃亜君強いね、測定が終わってないから何とも言えないけど確実にAランクだと思うよ、それにしても最後のとあの高速移動は能力かい?」
「最後のは能力ですよ、高速移動は昔早紀さんに教えてもらった戦闘術です」
「教えたって言っても理屈を教えただけじゃない、私だってできないわよ?」
「ひそかに練習してたんですよ、いやぁ修得するの大変でしたよ」
「まさかあれをできるようになる人がいるとはね…拓海」
「はい…それもあの人の…いやあの人のだからこそでしょうか…それにしてもあの乃亜君、それに実琉ちゃん、もはや僕たちトップ12でももしかしたらかないませんよ」
模擬戦が終わってから、受付で昨日の戦闘の報告をしていた実琉が戻ってきて乃亜に声をかける
「乃亜かっこよかったよ!」
「ありがとう」
「乃亜、実琉、私たちは会議に行ってくるから待っててね」
2人は奥に入っていった
「二人ともお待たせ、さぁ帰りましょう」
「早紀気をつけて、乃亜君と実琉ちゃんもね」
「はい、今日はありがとうございました」
3人は拓海と別れた
「二人とも、ちょっと話が…」
「何?お母さん」
「さっきの会議でね…ちょっと決まったことがあって」
「勿体振らずに言ってよ母さん」
「2人をトップ12に…加入することが決定して、2人にはさらにある新しくできた役職に就いて貰うことになったの…私は正直反対だったんだけどね」
「役職?」
「PMSF(特別公安風紀維持特殊戦闘員)よ」
「「PMSF?」」
「昨日も言ったけど、今一部のトランセンダーと無能力者のいわば戦争が起きてるでしょう?基本的にはその戦闘に介入、終息することが仕事よ」
「俺たち2人だけでですか!?」
「いいえ戦闘介入はトップ12やTSSの精鋭部隊もやるわ、あなたたち2人でやるのは戦争自体を止める為の任務よ」
「何で私たちなの?」
「まずランクAであるにも関わらずまだそんなに知名度がないこと。そして、まだ幼いという理由から、体が大きくない為潜入向き、警戒されにくい、また万が一戦闘になっても相手の油断を誘うことができる、こと。最後に2人の能力が向いているということが理由ね…私からしたらやはり不安だわ、TSS側の意見からいえばもう手一杯で打開策がこれしかない…頼みの綱があなたたちだけなの」
「そうなんですか…ならやるしかないか」
「乃亜がやるなら私もやるよ」
2人は明るく言うが真剣だった
「そう、分かったわ…じゃあ改めて…斎藤乃亜、月影実琉の二人をトップ12、そしてPMSFに任命します」
「「はい!」」
そして2人の新たな日々が始まった