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雑多な小噺

日々常々

掲載日:2025/03/05

 じりりりり。

 朝、目覚まし時計に起こされる。

 顔を洗う。

 ぱしゃぱしゃ。

 朝食を食べる。

 もぐもぐ。

 歯を磨く。

 しゃっこしゃっこしゃっこ。

 くちゅくちゅ。

 ぺっ。

 着替える。

 「行ってきます」と言う。

 がちゃり。

 駅まで少し歩く。

 とことこ。

 電車に乗る。

 がたん、ごとん。

 今日もまた、日常が始まる。


 わたしは有栖ありす 芽依めい。名前がどう見てもメアリー・スーの捩りだけど(正直両親のセンスを疑った)、これと言った特徴の無い女子高生。典型的女子高生ランキングがあったら少なくとも外見部門では1位になる自信がある。

 わたしには1つ、悩みがある。日常が一切変わり映えしないのだ。勿論、少しずつ変わってはいるが、変化が微妙すぎて、馬鹿なわたしには分からない。


 毎日、流行りの話題。何れ廃れるその話題に何故あれほど熱中できるのか、わたしには理解できない。

 授業は割と初期からついて行けていなかった。入試は(その高校では珍しく)定員割れを起こしていたので楽に入れたが、その先は地獄だった。なにせ基礎を家庭学習に丸投g任せて学校の授業では応用発展しかやらないのだから。今では9割方理解を諦めている。どうせゲキムズ大学に行くわけでもないし。音大志望で数学なんて使うこと無いし。

 あと、部活も若干そこそこかなりサボり気味。みんなの熱量が高すぎてさぁ…いや、わたしの熱量が低すぎるのかもしれないけど。


 カッカッカッカッ。

「はい、この問題解いてみて」

 今日もまた、数学()師が黒板に暗号を書き連ねる。微積分なぞ基礎の基礎までしか分からん。インテグラルの右側上下についてるちっちゃい数字、あれ何?定積分で使う、って事くらいしか分がんね。


 ただ、勿論そんな日常にも、楽しみと言うか。そういうのはある。

 わたしには好きなボカロPが居る。その人の音楽を聴いていると落ち着くし、夜に聴くとほんのちょっとだけ泣きたくなる。アルバム欲しいよぉ…

 わたしには好きなゲームがある。とは言っても、それはスマホゲームなどではない。trpgってやつで、リアルで数人集まって話し合いながら進めるゲームだ。いつか学校のみんなとやりたいなとは思っているが、未だに誘えてない。(ま、それでもいいかな)

 わたしにはちょっと変わった趣味がある。とあるアプリのアバターの、寝顔観察だ。これがまたかわいいんだぁ…にへへ…


「有栖ちゃん、その…お昼、一緒に食べない?」

 …おっ、日常が少し変わる気配。

「別にいいけど…何で?」

「何となく…」

「…そ。ま、隣いらっしゃい」

「あ、ありがと!」

「どういたしまして。…で、何か話の話題とか持ってきてんの?」

「あ、その…有栖ちゃん、全然関わり無いから、なんか共通の話題とか持てたらなぁ、とか…」

「ふぅん…そだ、trpgって知ってる?」

「あ、知ってる知ってる!」

 ………

 ……

 …


 …まさかtrpgの話題で盛り上がるとは思わなかったな。同好会設立の話になるまでいくとも思わなかった。

 今日の戦利品は、退部届のテンプレート。

 がたん、ごとん。

 電車に揺られて、家の最寄り駅に向かう。

 …疲れたな。






 …いま、どこ?

 …

 ヤバっ、寝過ごした…まだ一駅だから取り返しつく。

 …あれ?アナウンスも無しに停車?しかも何この駅…ってか周り誰も居ないし。


【きさらぎ】


 …へぇ、上等。

「ねえ、他に誰か居る?」

「…えっ!?有栖ちゃん?」

 まじか、今日一緒に昼ごはん食べた人じゃん。

「突発卓といきますかぁ」

「GMは?」

「運命とか因果律とか、そういうの」

「オッケー。それじゃ、これからセッションを始めます。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 降車した瞬間、電車は出発した。もう後戻りはできない。

 …久々の非日常。全力で楽しんでやる。

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