表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

雑多な小噺

日々常々

 じりりりり。

 朝、目覚まし時計に起こされる。

 顔を洗う。

 ぱしゃぱしゃ。

 朝食を食べる。

 もぐもぐ。

 歯を磨く。

 しゃっこしゃっこしゃっこ。

 くちゅくちゅ。

 ぺっ。

 着替える。

 「行ってきます」と言う。

 がちゃり。

 駅まで少し歩く。

 とことこ。

 電車に乗る。

 がたん、ごとん。

 今日もまた、日常が始まる。


 わたしは有栖ありす 芽依めい。名前がどう見てもメアリー・スーの捩りだけど(正直両親のセンスを疑った)、これと言った特徴の無い女子高生。典型的女子高生ランキングがあったら少なくとも外見部門では1位になる自信がある。

 わたしには1つ、悩みがある。日常が一切変わり映えしないのだ。勿論、少しずつ変わってはいるが、変化が微妙すぎて、馬鹿なわたしには分からない。


 毎日、流行りの話題。何れ廃れるその話題に何故あれほど熱中できるのか、わたしには理解できない。

 授業は割と初期からついて行けていなかった。入試は(その高校では珍しく)定員割れを起こしていたので楽に入れたが、その先は地獄だった。なにせ基礎を家庭学習に丸投g任せて学校の授業では応用発展しかやらないのだから。今では9割方理解を諦めている。どうせゲキムズ大学に行くわけでもないし。音大志望で数学なんて使うこと無いし。

 あと、部活も若干そこそこかなりサボり気味。みんなの熱量が高すぎてさぁ…いや、わたしの熱量が低すぎるのかもしれないけど。


 カッカッカッカッ。

「はい、この問題解いてみて」

 今日もまた、数学()師が黒板に暗号を書き連ねる。微積分なぞ基礎の基礎までしか分からん。インテグラルの右側上下についてるちっちゃい数字、あれ何?定積分で使う、って事くらいしか分がんね。


 ただ、勿論そんな日常にも、楽しみと言うか。そういうのはある。

 わたしには好きなボカロPが居る。その人の音楽を聴いていると落ち着くし、夜に聴くとほんのちょっとだけ泣きたくなる。アルバム欲しいよぉ…

 わたしには好きなゲームがある。とは言っても、それはスマホゲームなどではない。trpgってやつで、リアルで数人集まって話し合いながら進めるゲームだ。いつか学校のみんなとやりたいなとは思っているが、未だに誘えてない。(ま、それでもいいかな)

 わたしにはちょっと変わった趣味がある。とあるアプリのアバターの、寝顔観察だ。これがまたかわいいんだぁ…にへへ…


「有栖ちゃん、その…お昼、一緒に食べない?」

 …おっ、日常が少し変わる気配。

「別にいいけど…何で?」

「何となく…」

「…そ。ま、隣いらっしゃい」

「あ、ありがと!」

「どういたしまして。…で、何か話の話題とか持ってきてんの?」

「あ、その…有栖ちゃん、全然関わり無いから、なんか共通の話題とか持てたらなぁ、とか…」

「ふぅん…そだ、trpgって知ってる?」

「あ、知ってる知ってる!」

 ………

 ……

 …


 …まさかtrpgの話題で盛り上がるとは思わなかったな。同好会設立の話になるまでいくとも思わなかった。

 今日の戦利品は、退部届のテンプレート。

 がたん、ごとん。

 電車に揺られて、家の最寄り駅に向かう。

 …疲れたな。






 …いま、どこ?

 …

 ヤバっ、寝過ごした…まだ一駅だから取り返しつく。

 …あれ?アナウンスも無しに停車?しかも何この駅…ってか周り誰も居ないし。


【きさらぎ】


 …へぇ、上等。

「ねえ、他に誰か居る?」

「…えっ!?有栖ちゃん?」

 まじか、今日一緒に昼ごはん食べた人じゃん。

「突発卓といきますかぁ」

「GMは?」

「運命とか因果律とか、そういうの」

「オッケー。それじゃ、これからセッションを始めます。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 降車した瞬間、電車は出発した。もう後戻りはできない。

 …久々の非日常。全力で楽しんでやる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ