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最終話「ドリフターズと汚れた手」6(2/2)

「レイモンド 右の本棚の三段目を探せ……」

 俺はメモの内容を読み上げた。


 恐らく、ガープが書き残したのだろう。使徒らしい角ばった字で、まっすぐ罫線に沿うように書かれている。


「どうなってるんだ?」

 俺はいよいよ分からなくなった。


 ガープは先ほどまで生きていた。


 俺はさっき彼の話し声を聞いた。その数秒後、彼は犯人に殺された。そして、犯人は部屋を去った。


 このメモはガープが生前、書いたものだ。すると、犯人はガープがなんらかの手掛かりを残すのを黙って見ていたことになる。


 部屋を荒らす犯人に饒舌に語り掛けるガープもおかしいが、ガープがこんなあからさまなダイイングメッセージを書いているのを黙って見過ごし、書斎に残していく犯人もおかしい。


「こいつら、全くどういうつもりだよ」

 俺は頭を掻きむしった。

 ともかくメモの内容に従うことに決めた。


 俺は書斎の奥にある本棚の前に立ち、右の上から三段目の本棚を眺めた。


「ガープは俺に何を探させようとしたんだ?」

 俺は本なんかろくに読まない。タイトルを見ても、一連の事件に関係しそうな本があるようには思えなかった。


「あれ……この本って……」

 だがそこで俺は見覚えのある本を見つけた。


「どうして、この本がここにあるんだ……」

 俺は本を手に取り、ぱらぱらとページをめくっていた。


 それは俺たちがこの港町に来てすぐのこと。マイラがアレボリスの家から盗んできた本。『ミシェルの五人の子どもたち』だった。


 あれはコラリーの母親のものだっだ。乞食に成りすまして、人々の同情を集めていたあの異常な女が母親の形見として大切にしていた本だ。


 ガープは子どもなんかいないはずだろう。どうして、子育ての本なんか……。

 パラパラと本をめくっていく。


 俺はそこである記述を見つけた。

「これって……」


 ページをめくる手が止まらなくなる。様々なできことが頭の中で結びついては、思いもよらなかった光景を描き出していく。


 極めつけは、本の最後に挟まれていた原稿だった。


 ガープはある事件について取材を重ねていたらしい。その取材内容を記事にしようとした書きかけの原稿が、『ミシェルの五人の子どもたち』の最後のページに挟んであったのだ。


「そうか。ガープが死んだとき、もう犯人はすでにこの部屋から立ち去っていたんだ。だから、ガープはこんなメモを俺に残すことができた」


「犯人が部屋を漁ったとき、ガープはそいつの行動を咎められる状態になかった」


 原稿にはこの状況を可能にする記述があった。


 すべてが繋がったとき、俺はふいに言いようのない不安に取りつかれた。


「もし、犯人の狙いがそれだとしたら……」

 すべてが今まさに起ころうとしているような錯覚に取りつかれ、いてもたってもいられなくなる。


 瞳が小刻みに動き、神経が高ぶってくるのが分かった。


「マイラが危ない!!」


 俺は本を握りしめると、全速力で駆けだした。


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