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最終話「ドリフターズと汚れた手」4(1/2)

 

   4


 一時間後、俺たちは治安部隊と入れ替わるようにしてスモール博士の家を出た。女中が治安部隊を呼ぶというのを、必死で引き留め、なんとか稼いだ一時間だった。


 治安部隊がやってくれば俺たちはすぐにその場から追い出されるだろう。

 それまでに、少しでも情報が欲しかった。


「絶対に治してくれるって言ってたのに……」

 マイラは悲痛な表情をしていた。

 殺人事件に遭遇しただけでも、衝撃的な出来事だろう。それだけでなく、マイラは希望を失った。


「何か、知ってるような口ぶりだったもんな」


「うん……」

 スモール博士は次回までに病的窃盗の治療法を探しておいてくれると言っていた。俺たちはわずかな差で間に合わなかったわけだ。

 もし事件が起こるより早く、俺たちがスモール博士を訪れていたら、治療法だけは聞き出せたかもしれないのに……。


「治ると思ってたんだけどな……レイと一か所にとどまって、泥棒して追われることなく、お金を貯められると思ったのに」


「スモール博士はどんな治療法を考えていたんだろうな……」

 俺たちが時間を稼いだのはそれが目的だった。

 スモール博士が死んだのは事故だったのか、それとも殺されたのか。殺されたとすれば犯人は誰なのか?

 そんなことは俺たちにとって重要じゃなかった。

 俺たちは一時間の間に、ファイルを漁り、書斎の棚をチェックし、スモール博士のカバンやテーブルを漁った。

 そして、女中から様々な情報を聞き出した。

 それらはすべて、スモール博士が考えてくれると言っていた治療法を知るためだった。


 なにか断片的なメモでもあればよかった。


 こんな薬があるだとか、こんな方法があるだとか、少しでも分かれば、それを持って別の心理学者に相談に行くこともできたし、自分なりの方法で治療してみることもできた。


「なにも分からなかったね」

「そうだな」

 俺は歯噛みした。


「殺人だよね?」

「恐らくはな」


 殺人か、自殺か、事故死か、病死。

 この四つの中でもっとありそうにないのは自殺だろう。


 スモール博士は午前中にマイラの診断を入れていて、そのために予定をあけてくれると言っていた。死ぬことを決めている人がそんなことをするとは思えない。

 同じ理由で病死も外せそうだ。

 女中によればスモール博士に持病はなかったようだし、前日も体調が悪そうには見えなかったようだ。

 俺はそういったことをマイラに説明した。


「確かに、自殺と病死はなさそうだよね。じゃあ、事故死は?」

「それもないだろ。棚から重いものが落ちてきて頭を打って死んだと考えてみろよ」

「うん」

「女中の話では、博士の部屋からは直前まで何か話し声のようなものが聞こえていたのだという。あの場に誰かがいたとして、スモール博士がふいの事故で死に瀕した場合、その人物に助けを求めるはずだ」


「だよねえ。じゃあ、その場にいた人がスモール博士を殺した?」



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