最終話「ドリフターズと汚れた手」2(1/2)
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スモール博士は丘の上の小さな一軒家に住んでいた。
背が高く長髪の男で、俺が想像している医者の先生とは対照的な人物だった。背中に折りたたまれた白い羽は、彼が天使であることを物語っている。
思っていたよりも若いな、と俺は思った。
「あなたがマイラさんですね。こちらは付き添いのレイモンドさん。アレボリスくんからお話は聞いています。さあ、入って」
スモール博士は柔和な笑顔で俺たちを迎えると、書斎に俺たちを通した。
そこは厳粛な空間だった。
奥の棚には難しそうな本がずらりと並び、机にはファイルが山積みになっている。
部屋の端には寝台が置かれており、その周囲にはよく分からない機器がぶら下がっている。大きな四角い箱から線が伸びていて、先端には鉄製だったり、ゴム製の細長い棒がくっついている。
それがどんなふうに使われるのか想像もできない。
にもかかわらず、それらの器具は悍ましく映った。
「まず、どんなときに、どんなふうに窃盗がしたくなるのか教えてもらえませんか?」
軽い世間話のあと、スモール博士が切り出した。
「いつ、起こるかは予想できないんです。急にぐああああああってなって、苦しくなるんです。それで息があがって……」
マイラはスモール博士に説明し始めた。
頻度、時間帯、そのときの心理状態、今の生活、生まれ、育ち。
「幼少期は……山の中で……母と二人きりで過ごしていました。母はわたしを我慢強く、家事や育児に耐える女性にしたいと考えていたようで……それには体力、気力、そして知性が必要だと信じているみたいでした」
幼少期の話になると、マイラは表情を険しくさせ、言葉に詰まり始めた。マイラはそのことを話すのに、確かな痛みを覚えているようだった。
その様子が気になったのか、それともマイラの特殊な生い立ちに興味を覚えたのか、スモール博士は目つきを鋭くさせた。
「マイラさん、もう一度言ってもらえませんか? あなたのお母さんは、あなたをどんな女性にしたいと?」
「我慢強く、家事や育児に耐える女性です」
「ふうむ……」
スモール博士は深刻な表情をした。
「それっていけないことなんですか?」
「それ自体が悪いということはないでしょうが、少し気になる言葉でしてね。あなたのお母さんは、それには体力、気力、そして知性が必要だと考えた?」
「はい、そうだと思います」
スモール博士は確信に満ちた口調になった。
「失礼ですが、マイラさん。あなたのお母さんは、あなたをとても厳しく躾けなさったんじゃありませんか? 例えば、大量のご飯を無理やり食べさせたり、読書をさせるためにあなたを閉じ込めたり、はだしで外で遊びまわらせたり……」
「そ、その通りです。どうしてお分かりになったんですかぁ? わたし、まだ何も言ってなかったよね?」
マイラは驚いて俺の方を見た。




