三話「養父ルスフォード」4(2/2)
俺は彼女を傷つけることになると知っていた。
何も変わりはしないかもしれない。彼女の決断は正しかったのかもしれない。変わったところで、事態はより悪くなるかもしれない。
それでも俺は彼女が幸せに笑っている姿が見たかった。
「マイラが最近、孤児院で働き始めたんです」
「まあ、それなら安心ですね!! マイラさんがあの子を見てくださるんですから」
クピディアさんは痛々しいほど明るい声を出した。
「どうせすぐに辞めさせられますよ。あいつは仕事はできるかもしれないが、厄介な病気がありますから」
「そうなんですか……」
「そのマイラが、孤児院に預けにくる母親についてこんなことを言ってたんです。受け入れを拒否された母親より、受け入れを認められた母親の方が悲しそうな顔をするって」
「それは……」
クピディアさんが目を大きく見開いた。
「悲しい話ですよね。自分ではどうにもできないから孤児院に預けるのに、拒否されたところでさらなる絶望が待っているだけなのに、それでも孤児院に預けにくる母親は、受け入れを拒否されたとき、なんとも言いようのない安心した顔をするんですって」
「そんなこと……」
「はい。こんなことクピディアさんに言うなんて残酷ですよね。でも、俺は追い打ちをかけようと思って言うんじゃないんです。もう一度だけ、考え直すことがあっても、考えすぎということはないと思ったんです。とにかくもうベビーベッドは要りませんね。それなら俺はもう帰ります。俺なんかがいても迷惑なだけでしょうから」
俺は椅子から立ち上がって、玄関に向かった。
クピディアさんは上半分のちぎれた羽を握りしめ、嗚咽を漏らしていた。




