68・刀に魔法陣を組みます
「おお、おはよう。早速刀を持ってこよう」
挨拶をすると、鍛冶屋は奥に刀を取りに行った。
「試作の小刀で要領が掴めていたので、今度の方ができが良いぞ」
鍛冶屋は、自慢げに刀を見せる。
言われても私には違いがわからなかった。
小刀は刃渡り40センチだった。今度のは倍以上長い。
「お嬢ちゃんの体型には少し長いが、まだ背は伸びるだろう。身体強化も出来るし、大人の男が使う長さにした」
「はい、その長さでも大丈夫です。大人用の大剣を振り回したこともあります」
ジムの持っている剣を色々試したことがあったのだ。
「それでは、リコが魔法陣を組むのです。技はマギカッターを組み込むのです」
「ねえ、マギカッターって、魔力をを薄くカッター状に固めたものよね。リコが魔力固められる用になったのって、カカロ村に着いた頃じゃなかった」
「はい、そうなのです。マギカッターはカカロ村で造ったのです」
「それで魔熊を倒した時に、使ったのね」
「はい、片手剣のウィンドカッターをマギカッターに組み替えたのです。ウィンドカッターは、魔力で空気を集めて飛ばすのですが、カッターとは名ばかりで、風でものは切れないのです。風が、バムと当たるだけなのです」
「空気の代わりに、魔力自体を、堅く薄くして飛ばしたのね」
「そうなのです。なのでウィンドカッターの魔法陣を書き換えたのです。まったく新しい魔法陣を組み込んだのは、小刀です」
「お嬢ちゃん達、話はそこまでにしてくれ。リコ、その魔法陣やらを、刀に組み込んでくらないかな」
「わかったのです」
リコは机の上に置かれた刀の側面を、撫でるように元から剣先まで手を動かした。
片面が終わると、刀を裏返し、やはり元から剣先まで手のひらを当てて動かした。
「出来たのです。二回目なので、小刀より、より精密に効率の良い魔法陣を組み込めたのです」
刀の両面に手を当てただけなのに、リコの満足げな顔にはうっすらと汗が光っていた。
「小刀の時もそうだが、魔法陣を組むのは、あっという間なんだな」
「それはリコがすごいからです。何故すごいかは秘密なのです」
リコ式魔法陣の組み込み方を説明するには、数年を要するのである。
「あとは柄の取り付けだな、ノリの乾燥があるから、三日後に使えるようなる」
「ありがとうございました。それでお代の方はどうなります」
マリサに渡された大金貨の入った袋を握りしめながら聞いた。
「計算してあるぞ、他の仕事を、ほとんど断って作ったからな。きっちりと請求させて貰うぞ。」
鍛冶屋はそう言って、奥に請求書を取りに行った。
請求書を見る。追加の請求はあまり無かった。よく見ると、小刀は材料代くらいである。
「鍛冶屋さん、小刀の制作費がはいってないけど」
「良いんだ、あれは練習だから」
「駄目です。あれもすごい刀です。きっちり支払わせて貰います。」
結局、追加の支払いは、切りよく大金貨1枚になった。