56・草刈りのリズ
それから何度かサリー達と草刈りの仕事に行った。私がジムと魔獣狩りのときは、リコが同行した。
「お嬢ちゃん達の仕事はすごいね」
草刈りの依頼者である。草を刈って依頼元へ持ってきたのだ。
「荷馬車を持っているのもたいしたものだが、一日で刈ってくる量が多い。往復の時間がかかるので、実際の作業はそれほど出来ないはずなのに、毎回荷馬車いっぱいに積んでくる」
冒険者にとって、割りの悪い仕事を依頼している意識は有るようだ。
まして、人を襲う魔獣が出るのである。危険度も考えれば、もう少し、依頼料をあげてもらいたいものである。
「魔獣が出るのに、お嬢ちゃん達は護衛なしで大丈夫なんだな」
解っているのなら護衛を付けて欲しい。
「私は、リコと交代で父のジムと一緒に魔獣狩りに行ってます。今まで魔獣にあったことはないですが、多分大丈夫だと思います」
一応説明をしておいたが、信じてくれた様子はなかった。
今は、11月、草刈りのシーズンである。草のない時期も含めて今のうちに刈っておくのだ。
なので日曜日以外、リコと交代で毎日、馬の餌の収穫である。
時たま他の収穫者に会うこともある。彼らがリズ達の仕事を見ると、必ず驚くのであった。
少女が短い剣を水平に一振りする。すると草がバサバサ倒れていくのだ。それを、二人の少女が集めて束にして荷馬車に積んでいく。体格のいい大人の男でも、あれほどの量は運べないだろう。あっという間に荷馬車をいっぱいにしていく。天高く積み上げるので、他の荷馬車の数倍は積んでいそうであった。
依頼料アップを渋る依頼主でもあまりの量の多さに少しではあるが依頼料も上がっていった。
リコもこの依頼に入っている。リコも片手剣からマギカッターを放って草を刈る。
なのに、ギルドでは私だけ、草刈りのリズと呼ばれてしまった。
「リズ、良かったな。二つ名が付くのは冒険者として名誉なことだぞ」
ジムは誉めてくれたが、熊殺しのリズの方がかっこよかったのに。いや、それも女の子らしくないか。確かに魔熊を一頭倒してはいた。