40・ナーマムの街を散策します
数日は宿屋に泊まっていた
鍛冶屋は、家に落ち着いてからゆっくり探すことにして、宿屋にいる時は、三人でマーナムの街を歩き回っていた。
「お母さん、この町は大きな商店街が、いくつもあるのですね」
「そうね、数日、街を回っただけでは、覚えきれないくらい多いですね」
タクロア生まれのマリサにとっても、マーナムの街は大きく感じた。
「リコの知っている街とは、違うのです」
「リコ、リコの知識って、すごく前のものですよね、違っていて当たり前では。」
私は、いくら何でも数百年、街が変わらない訳がないと思った。
「お母様、可愛い服が沢山飾ってあるのです」
リコは、店の中をのぞき込みながら、目を輝かしていた。大魔女の知識はあっても、そこは女の子であった。
「そうね、村暮らしで、それほどお金も使わなかったし、この町ではちょっと贅沢な買い物をしていきましょうか」
マリサも、久しぶりの都会の街に興奮気味であった。
三人が街を散策している時、ジムは一人でお留守番、ではなく冒険者ギルドに来ていた。
「グラン、この間、冒険者が人手不足と言っていたが、それは、仕事が多いのか、それとも冒険者の数が少ないのか」
「両方だな。少し前までは、冒険者への依頼が少なかったが、最近急に増えてな。」
「そうだな、俺もロズ村に住んでからは、ギルドの依頼はあまり受けていなかった」
「仕事が少なくなっていたので、冒険者が増えなかっな。まあ冒険者にあこがれたり、他に仕事のつてがなく冒険者になる者もいるが、高ランクになれる者が特に少ない」
「何で急に仕事が増えたのだ」
「魔獣が街道や街のはずれに来て人を襲うのだ。」
「それで依頼が増えてきたのかな」
「街には騎士がいるが、彼らは対人の訓練をしてるので、盗賊からの護衛は出来るが、対魔獣が苦手なのでな。魔獣の対応は冒険者に任されるのだ」
「そうか、俺もこの町に来る前に、魔熊が襲ってくる場にいた。騎士の護衛がいたが、なにも出来なかったな」
「魔熊、珍しいな。人を襲ったのは、ほとんどが魔ウサギで、魔猪が数件だったはずだ」
支部長は、これ以上面倒にならないよう祈った。
宿屋に冒険者ギルドから、借りる家が見つかったとの連絡があり、家を見に来ていた。
「お母さん、やすいからどんな家かと思ったら、しっかりした綺麗な家ですね。」
「ええ、ちょっと古いみたいですが、手入れもされてますね。支部長のグランさんが、一生懸命探してくれたんですね」
家は街をはずれ草原の中にあった。場所が場所なので、家賃が安かったのかもしれないが、私たちの今まで暮らしていた、どの家より、とても過ごしやすそうだった。
少し歩けば、買い物の出来る商店街に行けるのだ。
自然環境はロズ村やカカロ村の方が良かったが、マーナムはお店屋さんが沢山ある大都会だった。
私たちは、マリサと昔、家族で街に行く約束をしていた。その時はマリサの実家のあるタクロアへ行くのだと思っていが、先にマーナムに来てしまった。