21・魔石の秘密を話します
「お母さん、ちょっといいですか」
私はリコと一緒にマリサの所にいった。
「いいですよ。二人そろって来て、何のお話でしょうか」
「はい、お母様。実は魔石のことなんです。ロズ村を出てから、荷馬車の中で魔石をいじっていたのは、気付いていたと思うのです、それで魔石の秘密を発見してしまったのです。」
「何がわかったのですか、確かリズがいつも握っていたのは、使い終わって魔力の無くなったカラの魔石でしたよね」
「そうです。なんと、そこにマナを注ぎ込むと、魔石に魔力がよみがえるのです」
マリサは、魔石にマナが吸い込まれると、魔力が回復されることを見つけたのだ。
「お母様、これは大発見なのです。今まで、カラの魔石をよみがえらそうと、魔法使いの間では色んなことが試されてきたのです。でも、直接魔力を注入すると、魔石が割れてしまったりと、成功したことが無いのです」
リコは、魔法使いの知識から説明した。
「リズ、本当ですか。出来ればマナを入れるところを見たいのですが」
マリサはちょっと信じられない顔で、リズにお願いした。
私はからの魔石を握りしめ、魔石にマナを入れ始めた。
荷馬車の中で色々試した所、いくつかわかったことがある。
まず、どの魔獣の魔石でも良いわけでは無かった。魔ウサギの魔石が一番入れやすいのだ。
私は手のひらの中のマナに集中する。魔石にあるマナの注入口を探る。マナを注入口に当てると、魔石はマナを吸い込もうとする。ここからが難しいのだ。
吸われるままにマナを注入しても、魔石の魔力は回復する。
それは、元の魔力の半分程度である。そこで、マナを制御して、マナを魔石に注入するのだ。
魔石の中はマナが入るように幾層もの隙間があり、隙間は長い長い一本のつながった管のようになっている。
管の奥から、すき間無く、むら無く、マナを入れていくのだ。
私が魔石を握ってから5分がたった。
「お母さん、出来ました」
魔力の回復した魔石をマリサに渡した。
「なんなんですか、この魔石は」
マリサは魔石の魔力が回復したことよりも、その魔石が元の魔力の10倍近い魔力を持っていることに気づいたからだ。
「さすがお母さんは気づきますね。それは、マナを丁寧に注ぎ込むと、元の魔力以上になってしまうのです」
「お母様、リズ姉だから10倍になるのです。魔石は割れないぎりぎりまで入れられるのは、マナの制御が優れているからです。リコは5倍までしか入れられなかったです。」
「リコも、マナの制御は生まれてすぐから訓練して来たけれど、リコはリコの中でマナが魔力に変換されるので、マナの制御が私より下手ですね」
私は、リコのちょっと悔しそうな顔を見ながら話した。
「お母様、リズ姉の発見は、魔石にマナを入れると、よみがえると言うことだけではないのです。魔石がマナを魔力にする変換器だとわかったことなのです。今までは魔力をたくわえるだけと思っていたのです。魔獣が魔力を何故使えるか、わかるかもしれないのです」
「そう、リコと荷馬車の中で二人の知識から、話し合ってきました。そして、魔石はマナを魔力に変化して貯めておける魔獣の器官ではないかと」
リズはマリサに説明した。
「リズ、リコ。これはものすごいことです。世紀の大発見になるかもしれません。でも、誰にでも教えては良くなさそうです。ほかの人に話さないでくださいね」
マリサはこの情報をどうしたらよいか考え込んでしまう。リズとリコで、これからもとんでもない発見をしそうな予感がした。