20・みんなと仲良くなりました
「おばあ様、今日は何を作るの」
今日は、森へは行きません。リコと一緒におばあさんのところでお菓子作りです。いとこのアニーも来ています。アニーは私たちより2歳年上です。でも、中身が大人な私たちの方がしっかりとしています。しっかりとしているはずですよね。
「はいはい、いらっしゃい。中に入って手を洗って待っていてね」
私たちは、おばあ様とお菓子作りを始めました。
そのころジムは、甥っ子のディックと剣の手合わせをしていた。
ディックは12歳。カカロ村では一人前の冒険者として活躍している。
「ジムおじさん、手加減は無用です。思いっきりきてください」
「おお いいね。では、いかせてもらおう。」
ガン ガン ガン ガシ ガシ ガシ 剣のぶつかり合う音が響く。
模擬戦なので、剣は木製である。死にはしないが当たればいたい。真剣にぶつかり合っていた。
「ふー さすがおじさま。なかなかやりますね」
ディックは、若手の冒険者では頭一つ飛び抜けた実力を持っていた。
ジムの兄のアスランも、カカロ村トップクラスの冒険者であり、ディックも幼い頃からアスランに鍛え上げられてきたのだ。
ディックはジムのことは兄から聞いたことしか知らない。兄のアスランも、ジムがカカロ村を出てからのことは、噂でしか知らない。
ジムの本当の実力は知らなかったのだ。
「ディックも良く鍛えられているな。だが、早さはそれで精一杯か」
「いえ、まだまだ早く動けます」
ジムは身体強化をしなくても、剣の技は超一流である。そして、得意とする身体強化は早さである。ジムがフルスピード出せば、ディックはついて来れらない。
今回、早さはディックに合わせていた。早さ以外の手抜きはしていなかった。ディックに怪我をさせないくらいには。
「いきます」
ディックは先ほどよりギアを一段上げたように、速い動きでジムに向かう。
ジムは、ディックの腕前に感心していた。だが、負ける訳にもいかないので、ディックよりもほんの少し速い動きで、ディックの剣を跳ね上げた。
「うっ」
ディックは、しびれた利き腕を反対の手で握りしめながら膝をついた。
「よし、ディックの負けだ。良い経験になったな」
脇で見ていた。アスロンが声をかける。
「ジム、しばらく見ないうちにより強くなっているな。今度は俺と模擬戦だ」
アスロンは、木製の剣をブンブンと振り回しながら、ジムに向かい合った。
「兄貴、今ディックとの模擬戦が終わったばかりだ、別の機会にしてくれ」
そういって、ジムは座り込んでしまた。兄貴に負ける気はしないが、簡単に勝てる気もしない。やれば長い戦いになりそうである。面倒なことは避けるジムであった。
「代わりに、俺の娘たちとやってみるか。かなり良い戦いが出来るぞ」
面倒なことは人に押しつけるジムであった。
冒険者の訓練をしたり、剣の稽古をしたり、薬草を取りに行ったり、おばあさまとお菓子や料理を作ったりして、リズたちは、みんなと仲良くなっていった。




