12・私たち 旅をしています
荷馬車の中にいます。馬一頭の荷馬車なので、それほど大きくはない。
あまり馬に負担をかけたくないとジムは考えて大きな荷馬車にしなかった。
野宿もするので、荷馬車の中で4人が風雨を防げることは出来るだけの広さはあるが。そこだけでは狭いので、テントも積んでいる。雨の野宿用に、馬の雨よけシートも積んでいた。
知識を持って生まれてくる人がいる。
こういった知識は荷馬車にも使われている。リーフスプリングのサスペンションが付いているのだ。
車輪も木製であるが、軸は金属で出来てる。車輪の周辺にゴムのようなクッション材が貼り付けられている。
その為乗り心地は、未舗装の道を行くに割に、思ったよりも良いものであった。
荷馬車には幌付いている。幌に使われているシート地も優秀な物である。
強い日差しも遮り、水も通さず雨漏りはしない。
この世界では、石油は発見されていない。化学繊維は無いのだ。
その代わり、素材として、魔獣を含む、獣や草木などの自然界から取れる物がある。
元々ゴムは樹液である。なので当然この世界にもある。空気入りのタイヤまでは無理でも、タイヤとして使える樹液がある。
シートはそれようの採取した樹液に、温泉のお湯を混ぜた物を、平らな石の上に薄くのばして乾かして作っている。
こういった技術は、マリサの薬作りと同じように、秘伝であり、門外不出の物が多い。
素材の取れる所が限られることもあるが、誰でもが作ってしまうと値崩れが起き、品質の悪い物が出てきたりと、まともな生産者が暮らしていけなくなるからだ。
荷馬車は、ジムの生まれた村にむかって進んでいた。
私とリコは馬車の中にいることも多かった。
ジムは馬を引きながら歩いている。
荷馬車に乗って手綱を引くよりも、馬の負担を減らしたかったからだ。
マリサもその横で歩いている。、マリサはジムの横にいたかっただけである。仲が良い。
私とリコはやることが少ない。だが、ゆっくり二人で話す時間がもてた。
二人の記憶と知識で、もっと快適な生活が出来ないか。下世話なことだが、金儲けが出来ないかも話し合ったりした。
私は気に掛かっていたことがある。魔力のことだ。マナのことは何となく理解できた。そういう物だと考えている。だが、魔力がなんなのかがわからない。マナが魔力に変わるようだ、魔法や魔術は魔力でないと発動しない。マナのままでは身体強化や、薬草作りくらいしか出来ない。
「リコ、魔力ってなあに」
「リズ姉、魔力は魔力なのです。私の記憶や知識でもそういうものなのです」
「じゃあ、魔物から取れる魔石は何なのかな」
「あれは、魔力を蓄えるものです。その魔力を使って魔道具を動かすのです」
「では、魔獣は魔力をどうやって魔石に溜めこめるのでしょう」
「それはですね、今は解っていないのです。魔力がこもっていれば魔道具動かせるのです、それで良いのです」
マナや魔力、そして魔石も、そういうものは、そういうものだそうだ。
結局何もわからなかった。




