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日常?

 あれから……最終兵器に封じたカタロストフを自爆させた後の話だが、まぁ何てことはない。俺たちは普通に帰って来た。もちろんメリーも無事だぜ?

 タネ明かしをすると案外ガッカリされるんだが、その辺は大目に見てほしい。

 まずは最終兵器から脱出するところから振り返るとだな……



~~~~~



「クソッ、手足が固定されてて身動きが取れねぇ!」

「な~にアホみたいに騒いでんのよ? 憑依を解いたんだから当たり前でしょ」

「――ってメリー、いつの間に!」

「アンタがパニクってる間にカタロストフの精神を破壊してたのよ。ほら――」


「…………」チ~ン


 なんだこれ? カタロストフが白目むいて倒れてやがる。


「メリーさんよ、いったい何があった?」

「簡単な話よ。アンタの事になると他が疎かになったみたいで、気を取られてるうちに憑依してカタロストフに内蔵されていた自爆装置を起動って流れね。もう助からないから放心したんじゃない?」


 なんつ~か酷ぇ話だ……。


「そんな事よりほら、さっさと脱出しないと爆発に巻き込まれるわよ?」

「お、おう、そうだな」



~~~~~



 つ~わけで余裕を持って脱出できたんだなこれが。じゃあナディア先生が話した内容はなんなのかって話だが……


 まぁアレだ。武勇伝っぽく盛らせていただきましたって事で、メリーがピンチになってなければ俺が脱出時に叫んだ事実もない。ただ地上に出た後に地下深くで電子レンジが弾ける音がしたくらいだ。


「ヒサシ様、さっきからベッドの上でウンウンと頷いてらっしゃいますが、何かお困りごとでも御座いましたでしょうか?」


 メイドのフレネートが窓を開けてる手を止めて、心配そうに顔を覗き込んできた。彼女はメイドの中では最年長(俺より少し歳上だったかな?)で、この邸では一番しっかりしている。

 今日は俺が起きるのが遅かったのもあり、余計に気を使わせちったな。


「ああ、すまないなフレネート。ちょっと過酷な戦いを振り返ってたんだ」

「なるほど、左様で御座いましたか。確かにメリー様の大ピンチでしたものね。無事にお戻りになられてホッとしました」

「あ~、うん……」


 ――とまぁ、このようにメガ盛りの武勇伝が我が家では事実として認識されつつあるんだなこれが。しかしロームステルのオッサンやアイリたちも事実を知ってるし、いずれバレるのは時間の問題ではないかと思われる。

 そこで俺から諸君らに対する忠告だが、話を盛るのはほどほどにしとけ。マジで後悔するからな。現在進行形の俺のように。



 つ~かどうすっかなこれ……。



 コンコン!


「失礼しますねヒサシ様。起きるのが遅いようなので、気になって来ちゃいました」


 そう言って茶目っ気たっぷりな笑みを見せるのは、サザンブリング王国の末っ子王女であるフィルンだ。

 すでに王国内での世継ぎ争いは終わってるんだが、今度は貴族たちの権力争いに発展してるらしく、いまだ故郷には帰れないでいる。


「フィルン様、気になってるのはヒサシ様の武勇伝ですよね?」

「いいじゃありませんか。魔物との戦いとか、お城育ちの私の耳にはあまり届いてこないのですから」


 フィルンと一緒にメイドのリリアンもやって来た。歳が近いためかフィルンの専属メイドに成りつつあるんだとか。そらならそれで、フィルンが居る間はリリアンに頼もうと思う。


「あ、いい事を思いつきました。どうせならメリーちゃんも交えてお話ししましょう。――リリアン」

「はい、ただいま!」


 リリアンがメリーを呼びに行ったようだ。つ~かまだ朝飯すら食ってないんだが……




「キャーーーーーーッ!」

「「「!?」」」


 リリアンの声が邸に響く。たった今出て行ったばかりで何が? ――という疑問を棚上げしてメリーの部屋へ駆け込むと……


「あ……ああ……」


 入ってすぐの場所で、顔を真っ青にしたリリアンが腰を抜かしていた。


「どうしたリリアン!?」

「あ……あ……あれ、あれを!」

「あれ……ですか? あれとは――ひっ!?」

「そ、そんな……メリー様!?」


 付いてきたフィルンとフレネートまでもが顔を青く染める。

 まぁそれもそのはずで、彼女たちが見たものは……




「アッヒャヒャヒャヒャ! ドッキリ大成功~~~♪ やっぱこういう反応が楽しいのよね~。子供たちにやってトラウマになったらナディアにキレられそうだし、リリアンやハルミが理想のターゲットだわ」クビツリ~ノでプラ~ン


 天井から首を吊ってる――ように見せているメリーだった。

 だがそれを見た俺はマジで首吊ってると勘違いし、メリーを降ろさんとすがり付く!


「バ、バカヤロゥ! お前なんて事を!」

「はぁ? 何で怒ってん――オゥエ!」

「しっかりしろメリー! いくらなんでも死ぬのは早すぎるだろうが! せっかく生きて帰ったんだから早まった真似するな!」グィグィ

「ぐるじぃぃぃ、グビが閉まるグビが閉まるグビが閉まるぅぅぅ!」

「頼む、メリー、目を覚ましてくれぇぇぇ!」

「うぐぐぐぐぐぅぅぅ――離しなさい、このバカヒサシィ!」

「ほげぇ!?」


 膝蹴りをくらい悶絶(もんぜつ)する俺の横で、メリーも息を切らしていた。


「あ"~~~苦しかった。悪霊が絞殺されるとか、末代までの恥になるところだったわ」

「よ、よかった。自殺願望のあるメリーは居なかったんだな?」

「あったり前でしょドアホ! まだまだこの世界を堪能仕切れてないんだから、簡単には死なないわよ。というか浄化されない限り死なないから」


 実際にメリーを浄化しようとしたら万単位の霊能者が必要らしいからな~。

 けど実質無敵なメリーに触れるのは俺だけという。うん、悪くない特権である。


「も~、メリーちゃんったら脅かさないでください! 罰として、昨日の出来事を詳しく話してもらいますからね?」

「それ、フィルンが話を聞きたいだけじゃないの? まぁいいけど、朝食が終わってからにしてちょうだい」

「む~ぅ、仕方ありませんね……」


 そういや朝飯がまだだったと思い出し、ささっと顔を洗って食堂に向かった。すでに子供たちは食べ終わったようで、ネージュと共に別室に移動するところのようだ。


「兄ちゃんおはよ~!」

「「「おはよ~!」」」

「おう、おはようさん」

「す、すみませんがヒサシさん、子供たちに拉致られそうなので助けて――」

「なんだよ~、せっかく遊んでやるって言ってんのに生意気だぞ~」

「そうだそうだ~。こうなったらみんなで回してやるからな~」

「ちょ、まわすって何ですの!? たたた助けてくざさいまし~~~!」


 嵐のように走り去って行く様子を見て、俺とメリーは苦笑いをしながら椅子に座る。

 しっかしネージュと子供たちは仲が良いよなぁ。実年齢はだいぶ離れてるはずなのにな。1つ疑問なのは、いっつもネージュだけがボロボロになってる点だが、いったいどんな遊びをしてるやら。

 ちなみにネージュの性格が変わっても子供たちには何の影響も無かった。ガキ共強ぇ! ネージュはネージュでちゃっかり俺のマイホームに住み着いてるんだが、まぁ過酷な修行で病んでるのかもしれないし、本人の気の済むようにさせてやろう。


「あ、そういやレンとユラはどこ行ったんだろ?」

「お二人ならウルさんを伴って冒険者ギルドに向かわれましたよ。なんでも帝都絡みの依頼が多いらしく、朝早くに職員の方が斡旋しに来てましたので」


 俺の疑問に答えてたのは、隣街で孤児院の院長をやっていたナディア先生だ。とある理由からレボルとの戦闘に巻き込まれてしまい、安全確保のために孤児たちと一緒に彼女も保護したんだよな確か。

 もうレボルとは対立してないが居てもらった方が賑やかなので、このまま居座ってもらう事になったんだ。


「やはり皇族貴族の大半がお亡くなりになったのが影響し、急激に治安が低下しているのでしょう」

「帝都の依頼かぁ」


 ナディア先生が言った通り、帝都の人たちはカタロストフの(しもべ)とそっくり入れ替わっていた。つまり本来居るべき人たちは皆殺しにされてるって事で、今じゃオルロージュ帝国全体が大混乱してるんだよなぁ。特に後継者がどうなるかって方面でな。いずれは決まるんだろうが、それまでにどんだけ時間がかかることやら。


「ささ、メリーちゃんにヒサシ様、食事しながらで結構ですので、最終決戦の内容を詳しくお願いします!」

「ちょっとフィルン、いい加減に落ち着きなさいよ」

「何を言ってるんですかメリーちゃん、世界を揺るがす悪の枢軸を倒したのですよ!? これが落ち着いていられますか! しかもちゃっかりお二人の恋愛フラグまで立てちゃってるくらいにして!」

「「はぁ!?」」


 俺とメリーの声がハモる。恋愛フラグだと? 俺とメリーが? 確かにメリーはちっこく可愛いが、恋愛という対象からは程遠い。せいぜい可愛い妹ってところだ。

 それはメリーも同じだったようで……


「私がコイツと? 絶対にあり得ないんだけど! っていうかヒサシ、ニヤニヤしながらこっち見んな! キモい!」


 ドゴッ!


「あぅち!」


 そんな! 妹だと思って微笑ましく見ていただけなのに……。

 しかし、そこへ更なる混乱が押し寄せる事になる。


「ふぁ~あ……。これこれ、何を朝っぱらから騒いでおるか。煩くて昼寝もできんぞよ」


 眠気眼で現れたのは、自称勇者の孫にあたる魔族娘のリーザだ。サザンブリング王国からフィルンと共に避難してきたんだが、いまだ王国の混乱が収まらずに帰還できないでいる。

 いや、リーザくらいの強さなら戻っても問題なさそうなもんだけど、三食をきっちりよういしてくれるメイドがいる俺の邸は居心地が良いらしい。


 ハッ!? まさかこのまま寄生する気なんじゃ……。いやいや、ここは勇者の血統を信じよう。


「勇者の末裔が朝っぱらから昼寝? イヒヒヒヒヒ! そんなだからいつまで経っても嫁の貰い手がないのよ」

「な、なんじゃと小娘! ワッチとてその気になれば、どんな男だってイチコロぞよ! ほれヒサシよ、存分に甘えるがよいぞよ?」



 ムギュ!



「お、おい、(無い)胸を押し付けてくんなって……」

「照れるでない照れるでない。ワッチの魅力で虜にしてくれるぞよ」


 ふざけてたんだろうが、これが良くなかったらしく、メリーの心に火を付ける事に。


「ふざけんなこのロリババァ! ヒサシは私のパートナーなんだから、アンタにくれてやる気はないわよ!」



 ムギュ!



「おい、だから(無い)胸を押し付けるなと……」

「そもそもアンタがハッキリしないから悪いのよ!」

「そうじゃのぅ。この際だし好みの女はどちらなのか態度で示すぞよ」

「いやいや、そんな急に言われてもな……」


 ――なんて言ってる暇はなかった。気付けば猛スピードで接近してくる足音がすぐ側まで迫っていたんだ。



 ドドドドドドドド!



「ヒサシ殿~~~! 幼女に惑わされてはなりませんぞ~~~!」


 ハルバード片手に走り寄って来たのは、グロスエレム教国で教祖の親衛隊隊長を勤めていたカスティーラという幾つか歳上の女性だ。

 なぜか彼女は俺がロリコンであるという疑いを持ち、その性癖を正そうと邸に住み着いてしまったんだ。

 そもそもロリコンじゃねぇし。いやマジで。つ~か危ねぇから屋内でハルバード持ち歩くなっつ~の!


「ヒサシ殿の心を惑わす悪魔共め、このカスティーラが成敗してくれる!」

「失礼ね。悪魔じゃなくて悪霊よ!」

「ワッチは勇者の孫であるぞよ!」

「細かいことはどうでもいい、覚悟ぉぉぉ!」


 こうして女共の戦いが始まった。つ~か朝飯食ってるから静かにしてほしいんだがな。

 そんな埃が舞うところにメイドのハルミがやって来た。


「お取り込み中ごめん――じゃなかった、失礼します! 冒険者ギルドの職員がヒサシさん――じゃなくって、ヒサシ様とお話ししたいと言ってます!」


 今度はギルド職員? こりゃ冒険者ギルドでレンたちがトラブルを起こしたな……。


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