再会!
「この先がクロック王国のあった場所か」
オルロージュ帝国から西へと進んで行くと、荒れ果てた平原が見えてきた。荒野と呼ぶのに違和感があるその地は、所々に平原を切り取ったように残されている異様な場所だ。言うなればミサイルが直撃した場所は荒野、直撃しなかった場所は平原のままって感じか。
「メモリーにより……ますと、かつてここには平原が広がっていたはず……です。遠くに見える山の中にクロック王国は存在したよう……ですが、この様子だと同じように荒れている……のでしょう」
だが生命が根付いてる様子はなく、鳥や小動物どころか魔物すら姿を見せない。
「普通人が居なくなったら魔物が住み着くのが定番なんだけどな~。全っ然血の気が無くてつまんないぞ~」
「確かにつまんないわねぇ。国が崩壊した跡地ならゾンビとかグールとか出そうなもんだけれど」
「つまらんかどうかは別として、時刻は丑三つ時だしアンデッドがいないのは妙だな。ここって少し前に地震やら竜巻やらの天変地異が起こった場所だろ? 犠牲者も多かったらしいし、浮遊霊とか多そうなもんだが」
それともアレか。小動物と一緒にカタロストフが消去しちまったのか? いや、アイツならアンデッドすら研究に利用してそうだな。
「とりあえず呼んでみまひょ――――アオ~~~~~~ン!」
ウルの遠吠えが荒れた平原に響き渡る。これには他の狼に自分の存在を知らせる意味があり、他にもそれを糧とする動物や魔物が寄ってくるそうな。しかし……
「反応なし。これはいよいよもって奇っ怪どすなぁ」
「マジかよ。生態系とかどうなってんだ?」
「そんなもの、とっくの昔にブチ壊されてるに決まってるでしょ。カタロストフが生態系なんか気にするとでも思ってるの?」
「思わんなぁ」
「でしょ? アイツなら既存のを壊した上で、別の生態系を作るくらいやるわよ。そのうち地面から戦闘兵器が生えてくるんじゃない?」
マジでありそうだから怖い。
「おや? アレは……」
「どうしたウル?」
「あの山で何かが動いてはります」
「あの辺りって……クロック王国の王都があった場所か?」
カタロストフが罠を敷いて待ってるって事だろう。
「待ち伏せ上等。さっさと乗り込んでケリつけてやるか」
「前もいいけど後ろも気を付けなさいよ? さっそく何かが迫って来てるし」
「後ろから!?」
メリーの忠告で振り向けば、ギンギラギンに装飾を施したデコトラが――
「――ってデコトラ!?」
「これって絶対アイツよね」
メリーの言うアイツに一人だけ――いや、1車両だけ心当たりがある。それは……
キキィーーーーーーッ!
『ようお前ら、こんなところで会うたぁ奇遇だなぁ!』
ライトをパッシングさせながらデコトラ本体が喋る。何を隠そう、このデコトラこそがグロスエレム教国で出会った転生車こと軽トラのトラさんだ。
「ト、トラさん、なんだってこんな場所に――のついでに、なんでデコトラに……」
『いやよ、たまたまアイリーンに立ち寄ったらお前、アイリの嬢ちゃんから面白いそうな話を聞かされちまったからよ、こうやってカチコミに来たって訳よ』
「カチコミって……」
『カタ焼きそばとかいう奴と戦うんだろ? だったらカチコミじゃねぇか』
多分カタロストフの事を言ってるんだろうなぁ。カタしか合ってない点については敢えて触れないでおこう。
「ともかく、トラさんが来てくれて心強い」
『おぅよ。このまま山んとこまでカッ飛ばすからよ、ちぃと狭いが後ろに乗ってくんな。他の乗客と仲良く頼むぜ!』
「乗客?」
何の事かと思いきや、荷台に乗り込んでビックリ! 中にはロームステルのオッサンと仲間の騎士たちが鮨詰め状態で乗ってやんの。
「なんだってまたオッサンが?」
「フン、我らは誇り高きロッカの騎士団。受けた恩は必ず返す! さぁトラよ、さっさと出撃するのだぁ!」
『分かってるって。んじゃしっかり掴まっとけよ~~~!』
一気に加速するトラックの中で、これまでの経緯を聞いた。
アイリからの(つ~かアイリとトラさんって知り合いだったんだな)情報を元にオルロージュ帝国へとやって来たトラさんだったが、何の巡り合わせか俺を追ってきたロームステルのオッサンと鉢合わせ。
帝都の様子がおかしい事をお互い察知して探索を開始。その最中に黒ずくめの男から俺がクロック王国の跡地に向かったと聞き、こうしてやって来たんだと。
黒ずくめは十中八九レボルだな。
「つ~かオッサン、サザンブリング王国は大丈夫なのか? 下手すりゃ後継者争いが起こるんじゃ……」
「その点については心配無用。後継者はグレンモーゼ様とフィルン様しか残っておらん。更に都合が良い事に、フィルン様はオルロージュ帝国にて身を隠しておられる。これで反対勢力がフィルン様を担ぎ上げる事はできまい」
どうやらサザンブリングの方は大丈夫らしい。
「それからいいが。いや、それでもかなり危険だぞ? 下手すりゃオッサンだって死ぬかもしれない」
「だからどうした? 我らロッカの騎士団が死を恐れるとでも? フン、死の恐怖なんぞとっくの昔に投げ棄ててやった。今の我々は人柱になる事すら躊躇わん!」
なぜかオッサンたちがお地蔵さんになってるところを想像しちまった。いや何となくな。
『お~いお前ら、奴さんの出迎えだ。ちょいと揺れるから我慢してくれよ~!』
ガクン!
「「うおっ!?」」
言った側から激しい揺れが襲い、俺とオッサンは抱き合うような形で壁にダイブした。メリーやレンたちも同様で、右に左にと激しく揺れる。
「ちょっとトラ! もっと安全運転を心掛けなさいよ!」
『メリーの嬢ちゃん、文句は肩ロースに言ってくんなぁ。アイツの手下共が鉄砲玉かって出たみてぇなんでな!』
今度は肩ロースか。カタ焼きそばよりは近付いたな、うん――ってそうじゃない!
「すまないけど、さすがに酔いそうだ。悪いがトラさん、もう少しなんとかならないか?」
『コイツを見ても同じ事が言えるってんなら考えねぇでもないぜ?』
ウィーーーン!
「「「うげっ!?」」」
開いた天井を見て一同絶句。空一面をドローンみたいなのが埋めつくし、それらがデコトラに向かって銃撃してやがったんだ!
「マズイ、ユラ!」
「保護フィールド展開!」
ガギギギギギギギギギギギン!
降り注ぐ銃弾をユラが弾き、その隙に天井が閉まり事なきを得た。
『な? ヤバかったろ?』
「「「な? じゃない!」」」
全員がトラさんに突っ込む。
「ったく、もう少しで蜂の巣になるところだったぜ。それにこの状態、現地に着いたとして外に出られるのか?」
「私は平気だけど?」
「そりゃメリーは当たんねぇからな」
「ボクだって割と平気だぞ~!」
「そりゃレンの場合は剣さえ無事なら大丈夫だからな」
「ウチも平気どす」
「そりゃウルの場合はスキルで擬態できるからな」
「ユラも兵器……です」
「無理してボケなくてもいいぞ?」
「ブッ殺しますよ?」
「いや、マジで面白かったから早まるな」
『取り込み中に悪いんだが現地に着いたぜ? 降りるんなら覚悟決めてくんな!』
おっと、冗談やってる場合じゃない。
「よし、いちにのさんで一斉に飛び出るぞ? んでもって、ユラがシールド張ってる下を進んで行くんだ。じゃあ行くぞ――」
1――
2の――
3!
バァン!
「保護フィールド展開!」
透かさず展開されたシールドの下に全員で固まり、辺りの状況を確認する。どうやら周囲をぐるりと囲んだ山の中にいるようで、ここ全体がクロック王国のあった場所らしい。
城らしき建物はどこにもなく、代わりにポッカリと空いた大きなクレーターのようなものが目の前にある。
「この巨大な穴は何だ? 相当深そうに見えるぞ」
「クロック王国を襲った天変地異の1つに城を飲み込んだ地割れがあったはずだ。こうして見ると地割れには見えんがな」
そう言うと、ロームステルのオッサンは興味深そうにクレーターを覗き込む。
「しっかし真っ暗で何にも見えねぇな。この中に片言外人が待ち構えてやがんのか?」
残念トラさん。肩ロースの方が近かった――ってそうじゃない!
「すぐにでも調べたいところだが、外の危険を排除しときたいよな」
今もセコセコと銃撃を繰り返すドローンを全員で見上げる。ユラのシールドも無限じゃないだろうし、このままってわけにもいかない。
「いい加減、人間味のない物体を相手にするのも飽きてきたんだけどね。先に壊しとく?」
「そうだな。すまないが――」
――と言おうとしたところでドローンの一部がキレイに消え去る。何事かと目を凝らせば、頼もしいあの人――いや、あの鷹だった。
「ハッハッハーッ! 真打ち登場やでぇ!」
「ホークさん!」
「おおっと、俺も忘れんな――よっと!」
ホークさんが華麗に登場したのと、ホークさんの背中から飛び降り様にドローンを斬りすてていく、みすぼらしい格好をした素浪人ことタケゾウも登場だ。
「ようお前ら。ま~た厄介なことに巻き込まれてやがんな? 面白そうだから手を貸すぜ!」
「タケゾウ!」
そんなホークとタケゾウに触発されたトラさんとオッサンたちもが、空の敵に向かって攻撃を開始する。
「へへっ、盛り上がってきたとこだし、俺たちも攻勢に出ようぜ!」
「うむ、望むところ。全体、弓を構え~~~い!」
ホークさんの風魔法、タケゾウの剣術、トラさんの二丁拳銃、騎士団の弓。これにより徐々にだが、空に広がっていたドローンは数を減らしていく。
「おお~いヒサシ~! ここはワイらに任してお前らは穴ん中を調べたりぃや」
「わかりました。空はお任せします」
さぁて、鬼が出るか蛇が出るか……。




