メンフィス飛空艇団
「どうします? 戦いますか? それとも諦めますか? ボクとしては死ぬ間際まで抵抗していただけると楽しめるんですがねぇ。ククククク」
こんな悪趣味を持った大人にはなりたかねぇな。もっとも……
「ウケケケケケ! そうよね、楽しまなきゃ損よねぇ」
「滝のように流れる血は絶景だもんな~」
「ユラはん。肉は満遍なく焼いておくれやす」
「善処します」
こっちもこっちで殺意が高いし。こりゃ4人に任せてもいいな。
「グレンモーゼ様は下がっててください。さすがにコイツは危険過ぎる。俺たちで相手をしますよ」
「分かった。このようなバケモノに暴れられては我が国はおしまいだ。お前たちに全てを託す!」
アースランに注意を向けつつグレンモーゼを後ろに庇う。その間メリーたちは素早く動き出していた。
「行きますえ。瞬足隠密!」
ウルが得意スキルで走りながら姿を消す。常人には見えないが、アースランはどうだ?
「消えた――――いや、そこです!」
ズダダダダダダダ!
看破されていたようで、側面に回っていたウルに向けて銃弾の雨を浴びせてくる――
「させません!」
シュイーーーン!
――が、ユラが割って入り、保護フィールドを展開。全ての銃弾を弾き落とした。
アースランから舌打ちが聴こえてきそうな流れに乗り、レンが頭上から魔剣を振り下ろす。
「そこだ~! で~~~~~~ぃ!」
「む!?」
ガキィィィン!
「おっと危ない。なかなか物騒な物をお持ちのようですが、お嬢さんにはまだ早かったですねぇ。ククククク!」
レンの声に反応したようで、両方のアームでクロスガード。上手く防いだアースランが嫌みったらしい笑い声を上げている――
――かに見えたが、実は違う。この時すでに奴の敗北は決定的なものとなっていた。何故ならば……
「はい終了」ペタッ
「ん? なんの真似だ小娘? ボクに触れたところで意味は――――な、これは!」
密かに忍び寄っていたメリーがアースランに触れる。これにより接触不動が発動し、アースランが搭乗している機体が完全に動かなくなった。
「き、機体が動かないだと!? どういう事だ小娘! 貴様いったい何をした!?」
「私のスキルよ。アンタはもう動けないの。これからは私たちの玩具として頑張ってちょうだい――ユラ!」
「お任せを。ヒートカッター」
ジジジジジジジジ……パカン!
「ひぃ、やめろぉぉぉ!」
操縦席をユラが焼き切り中にいたアースラン本人を引きずり出す。
どうやら本人も接触不動の影響を受けている(←腰を抜かしてるだけかもしれないが)ようで、無抵抗で床に投げ出された。
さて、ここからは幼女軍団による大人の時間が始まるため、惨劇を見せないようにするためグレンモーゼには顔を伏せてもらおう。
「すみません。ちょっと尋問を行うので、しばらくは外の景色を眺めててください」
「よく分からんが、とりあえず分かった」
これでよし。メリーたちの方は……
「さて、幾つか質問するから正直に答えなさい。いいわね?」
「フッ、なぜボクが格下の君たちに命令されなければならな――ギャッハァァァ!? イダイイダイイダイ!」
反抗しなきゃいいのに。余計な事言ったせいでレンに剣を突き立てられてら。
「立場が分かってないな~。今のお前は生きるか死ぬかの瀬戸際なんだぞ~。そして決定権はボクたちにあるんだ。逆らうなら次は右肩だぞ~? 分かったか~?」
「分かる分けないだろう! なぜボクがこのような――ギャッハァァァ!? イダイイダイイダイ!」
今度はウルが右肩に噛みついた。ドクドクと流れ出る血が痛々しい。
「ウル、食してはダメですよ。肉はキチンとボイルしなければ」
「待て待て待て待て! この小娘はボクを食べようとしているのか!? わ、分かった、喋る、知ってる事なら何でも教え――グェッハァァァ!? イダイイダイイダイ!」
「何で簡単に降参しようとしてるのよ? もっと抵抗してくれなきゃ面白くないじゃない」
メリーからは腹に草刈り鎌を突き立てられている。これだけやられて気絶しないのは感心するところか?
「た、頼むから待って。お願いだから話を聞いてくれ……」
「しょうがないわねぇ。じゃあ話してみなさいよ。その代わり余計な事しゃべったら――」
「わ、分かったって。まずは聞いてくれ」
先ほどまでの態度を一変させ、従順になって語りだした。
「ボクはカタストロフという奇妙な女に造られた存在だ。アースランという名前も彼女がつけたもので、メンフィス共和国にて実在した人物らし――ギャッハァァァ!? イダイイダイイダイ!」」
「つまんない話をしてんじゃないわよ。もっと面白おかしく私を楽しませなさい」
「そんな無茶な!?」
確かに無茶だが、それを乗り越えないとお前さんの未来は無いと思うぞ? いやマジで。
「それにしても今回の尋問はいつもに増して残虐だな」
「だって仕方ないじゃない。コイツ、さっきから笑ってんだもん」
「え? 笑ってる?」
「そうよ。何か奥の手でも隠し持ってるんだわ。ねぇ、そこんとこどうなのよ?」
「…………ククッ」
メリーの言う通りだったらしく、アースランが口の端を吊り上げニヒルに笑う。まるで今までの感情は嘘だったかのように鳴りを潜め、口元は笑っていても目は全く笑ってはいない。
「まさか気付いてらっしゃるとはねぇ。イグリーシアの者もなかなか侮れないと言ったところでしょうか」
「随分と余裕どすなぁ?」
「ククッ、そりゃそうですとも。時間は充分に稼げましたのでね。精々この国が滅び行くところを指を咥えて見ていることです」
時間を稼がれた?
「おいテメェ、いったい何を企んでやがる?」
「ククク、そう焦らずともすぐに分かりますよ。カタストロフ様が造り上げた飛空艇団は完璧ですからね。こんなちっぽけな島国なんぞ、跡形もなく消して差し上げましょう!」
「だから何をする気――」
「ミスターヒサシ、アレを!」
俺の袖を引っ張っぱりつつ空を指したユラが叫ぶ。遠くの空き黒い点々が見え、次第に大きくなっていく。
「そういや飛空艇団とか言ってやがったな。アレがそうなのか」
「クククク、その通りです。ボクが操る機体ほどの破壊力は有しませんが、それをカバーできるほどの数。その数約1億!」
「1億ぅぅぅ!?」
そりゃマズいぞ、俺たちだけじゃ手が足りねぇ! いや、そもそもどれだけの戦力がいる? いやいや、そんな事よりタイムリミットは?
クソッ、考えがまとまらねぇ!
「クク、愚かにもカタストロフ様に仇なした事を後悔するのですね。クククク――」
グシャ!
「ユラ?」
「行きましょう。コイツに構ってる暇はありません。今は飛空艇団の撃破に専念すべきです」
アースランの頭部を踏み潰したユラに言われて落ち着きを取り戻す。
「そう……だな。けどグレンモーゼを放っておくわけにはいかない。せめて城の護りを何とかしなきゃ――」
「グレンモーゼ様、ご無事でしたかぁ!」
っと、ビビったぁ……。あの声はロームステルのオッサンだな。
あ、そうか。オッサンに守備を頼めばいいんだ!
「お~い、オッサン!」
「むむ? お前たちも無事であったか。城が半壊しているが、いったい何が――」
「そんな事よりアレを見ろ。今はあの飛空艇団を撃退する方が先決だ!」
「飛空艇団だと!?」
既に小型のコンテナに見えるくらいの位置まで接近されていた。まるで畑を荒らしているイナゴのように無数で飛来しており、それを見たグレンモーゼとオッサンも、事の重大さに気付いて顔を青ざめさせる。
「何なのだあの数は? プラーガ帝国の竜騎士隊ですら、あれほどの数はないぞ……」
「ア、アレが城を強襲したのか? いや、まだこれから来ると言うのか!」
「俺らは今から撃破しにいくから、オッサンはグレンモーゼ様を頼む」
「まさか貴様らだけで挑もうと言うのか!? 危険過ぎるぞ!」
「けどやるしかねぇ!」
時間が惜しい俺たちは会話もそこそこに飛空艇団に向かっていく。
機体の中は無人か? いや、そんな事はどうでもいい。見える敵機は全て落とす!
「いっくぜぇぇぇぇぇぇ!」
もう無我夢中で落としまくった。1機が小型のビルと同じくらいの大きさだが、切っ先を向けて手当たり次第に貫通していく。
「ウケケケケケ! ドンドン落ちなさい。私に触れられた奴はみ~んな墜落よ!」
メリーは得意の接触不動でひたすら触れる作業を繰り返す。地味に見えるが効率はとても良い。
「ボクだって負けないぞ~、ガルストームスラァァァッシュ!」
レンは魔剣アゴレントによる魔力も込めて、硬いはずの機体に次々と傷をつけていく。一見意味がなさそうに見えるも、傷口から急速に腐敗が進行。最後には全体が真っ黒に染まり、地上へと落ちていく。
「射程内に敵機捕捉、攻撃を開始します――ヒートシャワー!」
ユラは両手から高熱のサーチライトのようなものを照射。飛空艇の正面からジワジワと溶かしていき、最後は落下途中で消滅した。
「はいっ――と。はい命中~。ほいっ――と。こっちも命中っと」
唯一飛行ができないウルはメリーの落とした飛空艇を砲弾代わりにし、飛空艇を撃墜していく。
しかし、これだけやっても手が足りず、ついには俺たちの迎撃をすり抜けていく飛空艇が出始めた。
「ヤバい、抜かれちまった!」
「あ~もぅ、こっちも1機逃しちゃったわ!」
「どうするヒサシ~、抜けた奴を追うのか~?」
「いや、ダメだ。それだと迎撃が追い付かねぇ!」
だが無情にも逃した飛空艇が城の方へと飛んでいく。まずは城を完全に潰す気だな。
一撃二撃は耐えられても、すぐにオッサンたちはやられちまう。クソッ、どうしたら……
ドゴドゴォォォン!
「……え?」
何だ? 逃した飛空艇が落ちてくぞ?
「よう、苦戦しとるやないか。ワイらが来たからにはもう安心やで!」
「ホークさん!」
どうやらアイリの眷族たちが駆けつけてくれたみたいで、他にもファイアドレイクやらバハムートやらが飛空艇を撃墜していく。
「やったぜ、これで勝て――」
「バカヒサシ! 後ろよ!」
「――何っ!?」
しまった! 俺を標的とした飛空艇がミサイルをブッパしてきやがった! 慌てて身を翻そうとするが間に合うかは際どい!
シュピン!
「ミ、ミサイルが一刀両断……ハッ!?」
真っ二つになったミサイルの前に、一人の少女が浮遊していた。
「キミは…………ペサデロ!」
「……間に合ってよかった」
ふぅ、間一髪助けられたぜ……。
「……後はバーサーカーな奴らに任せておけば大丈夫」
「ああ、ホントに助かった。礼を言うぜ」
「……礼を言うのは早い」
「え?」
なんでかなと首を傾げてると、ペサデロから思わぬ朗報が飛び出した。
「……大量の飛空艇を発艦させたお陰で、カタストロフの居場所が判明した」
「マジかよ!? あの女はどこに隠れてやがんだ?」
「……オルロージュ帝国の隣。元々クロック王国があった場所」
それは1ヶ月以上前に天変地異が起こって崩壊したクロック王国の跡地だった。




