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閑話:反省会

「あ~~~もぅ、ムカつくムカつくムカつくムカつく~~~! なんで私が負けなきゃならないのよ~~~!」


 不貞寝しているメリーの様子を見に来てみれば、布団や枕を投げ散らかしているという予想以上の荒れっぷりを発揮していた。


「おいおい、他所様の部屋で暴れるなよ。家具とか壊したら弁償させられるぞ?」

「寧ろ壊させなさい! 弁償してやってもいいから」

「弁償するのは俺なんだから壊すなよ。絶対だぞ!」


 天井のシャンデリアとかメッチャ高そうだからな。下手すりゃ一生タダ働きさせられるかもしれん。


「あ~もう信じられない! こうなったのもアンタの責任なんだから、1発と言わず100発は殴らせなさいよ!」

「だぁぁ止めろ、負けたのはお前自身のせいだろうが! 転生者とはいえ相手は普通の人間だったろ?」

「この大バカ! 転生者の時点で普通じゃないのよ! それにね、アンタが登録した名前だけど、アレは何? ギャグのつもり!?」

「ギャグって……」


 大会参加者の欄に記入する際、メリーだけだとつまんないかな~と思ってファントムメリーにしたんだよな。


「カッコいいだろ? ファントムメリー」

「よくない! 何よその絶賛中二病ですみたいな名前は。控え室にいた連中に笑われたじゃないの!」

「その後キッチリ仕返ししたんだからいいだろ。つ~かそいつら全員に懺悔夢要(リグレットドリマー)かけるとか、寧ろやり過ぎ」

「やり過ぎ? 身の程を教えてやったんだから感謝してほしいくらいだわ」

「白目を向くほど感謝してただろ」


 気絶してたとも言うけど。


「まぁ終わっちまったもんはしゃ~ないし、一度サザンブリング王国に戻って様子を見てこようぜ」

「メンドクサ。明日にしてよ」

「ニートみたいな事言ってないで。ほら、帰るぞ~」


 ズルズル……


「――ってちょっとぉ、足を無理やり引っ張んな! スカート捲れるでしょ!?」

「知るか。ベッドで横になってるくせにスカート履く方が悪い」

「理由になってない! というか離しなさいよ、この変態!」


 ゲシゲシッ!


「痛ぇっつぅの! 相変わらず足癖の悪いやつめ、こうなりゃ力ずくだ!」

「ふん、やってみなさいよこのヘタレ!」

「おぅ、やってやろうじゃないか!」



 負けたイライラのせいか、次第に取っ組み合いへと発展していく。メリーが枕を投げれば俺はベッドをひっくり返すという感じだ。

 が、ついにやってはいけないラインを超えてしまう事態に!



 ボフボフッ!



「な、なんだこの枕、俺の顔に張り付いて来やがる!」

「忘れたの? 私が手にした物を自在に操る念始動接(ムーブキネシス)よ」

「くそっ、卑怯だぞメリー!」

「イヒヒヒヒ♪ 何とでも言いなさい。さぁ、トドメはベッドで――」




 ガッシャ~~~~~~ン!




「「あっ……」」


 何かが砕ける音と共に天井からパラパラと破片が落ちてくる。メリーが持ち上げたベッドがシャンデリアに直撃したんだ。

 室内が暗くなった事によりキラキラと舞う破片がとても幻想的で――




 ――ってそうじゃない!


「ど、どうすんだよこれ。完全にブッ壊しちまったぞ……」

「大丈夫でしょ? かき集めてくっ付ければ何とかなるわよ」

「かき集める――っておい、素手で触ったら危ないぞ!」

「バカね。素手で触んなきゃ意味ないのよ」


 ササササッと破片をかき集めたかと思えば、すぐさま放り投げるメリー。すると破片の一つ一つに意志が備わり、元のシャンデリアへと戻っていく。


「なるほど。念始動接(ムーブキネシス)か」

「そ。元の状態に戻れって命令したから、勝手に落ちたりはしないわ。それより今のうちに退散するわよ。誰も見てないんだし、何食わぬ顔して立ち去れば――」



 ガチャ!



「「ひっ!?」」


 こっそり出ようとしたところでアイリの眷族であるペサデロ(メリー救出に協力してくれた人型の魔物)が入室してきた。


「な、なんだペサデロか」

「――ったく、驚かさないでよ」

「……驚かせたつもりはない。ただ、何かが砕ける音がきこえたから駆けつけただけ」

「「…………」」ギクッ!


 おもいっきし聴かれとるやん! だが俺たちには【とぼける】という選択肢以外ない。


「……何か壊さなかった?」

「「…………」」ブンブン!

「……そう。気のせいだったみたい」

「「…………(ホッ)」」


 あっぶね~。寿命が一年くらい縮まった気がしたぜ。


「……あ、あれは……」

「「…………!!」」ギク!

「……シャンデリアの一部が欠けてる?」

「「!!!!」」ギクギク!


 しまった! メリーが回収しきれてない部分が床やベッドに残ってるんだ!


「……昨日まで異常はなかったはず。おかしい……」

「い、いや、おかしいってそんな大げさな。どうせ経年劣化ってオチだろ? そんなに気にすんなよ」

「そうそう。物はいつか壊れるんだから、壊すなら今のうちによ」

「……よく分からないけど分かった。さっきの砕けた音は気にしないようにする」

「うんうん、それがいい。たかがシャンデリアで――」


 ガチャ!


「シャンデリアがどうしたですって?」

「「うひぃ!?」」


 ペサデロに続いてアイリまで登場。なんつ~タイミングの悪さだ!


「ななな、なんでもないぞ?」

「そそそ、そうそう。別に何ともないんだからも~ぅ」

「……ふ~~~ん?」


 ヤ、ヤバイ。アイリが胡散臭そうにこっちを見ている。何とかシャンデリアを誤魔化すため、メリーとの緊急念話会議を開始した。


『で、マジでどうするよ? いずれはシャンデリアをブッ壊したってバレちまうぞ?』

『言われなくても分かってるわよ。こういう時はほら、マイペースなニュースキャスターみたいに話題を変えちゃうのよ。できるだけさりげな~くね』

『話題を変えるったってよ、いったいどんな話題にすりゃいいんだ? 急に言われても思いつかねぇぞ……』

『そのくらいさっさと思いつきなさいよバカァ! 諦めちゃそこで試合終了だってよく言うでしょ!』

『そもそも試合ですらねぇよ! 俺に文句言う前にメリーが話題を振れ!』


 そんなやり取りを1分間みっちりとやった結果……




「……コホン。あのね、言い出すタイミングが掴めなかったけれど、アンタたちの念話、最初から駄々漏れ状態だからね?」




「「なんで~~~~~~!?」」

「私には神様の加護が与えられてて、近くで行われた念話は傍受できちゃうのよ」

「そ、それってつまり……」

「うん。割と最初の段階で気付いた」


 お、終わった……。完全なる試合終了宣言である。


「じゃあ二人とも、私についてきてちょうだい。罰として、今日1日タダ働きしてもらうから」



 俺たちに拒否権はなく(まぁ当然だが)、メリーを含む幼女軍団は全員メイド服へと着替えさせられた。

 そして連行された場所はというと、予想通りに大きなお兄さん(オッサンや爺さんも含む)が集まりそうなファンシーでプリティーなお店である。



「「「お帰りなさいませ~、ご主人様~~~♪」」」

「お、お帰りなさい……ませ……」

「ちょっとメリー、そんなガチガチに緊張してたらお客が楽しめないじゃない。もっと柔らか~く笑って笑って」

「ぐぬぬぬ……」


 アイリにダメ出しをされて怒りに震えるメリー。しかし契約書にサインしちまった以上、今日1日は逆らえないのである。

 詳しい説明は省くが、ここイグリーシアの契約書には神の力が宿っていて、違反すると強烈なペナルティが課せられるんだ。それを回避するには黙って従うしたかないってわけさ。

 あ、ちなみにだが、俺がメイド服を着るわけにはいかないため、付け髭をして老執事の格好をさせられている。


「くぅぅぅ、悪霊の私がどうしてこんな事を……」

「何でもいいからお客をもてなすのよ。悪霊だって肝試しに来た連中をもてなすんだから、理屈は一緒でしょ?」

「祟るのともてなすのは全ッ全違うわ!」

「文句言わない! ほら、ユラとウルだって真面目にやってるじゃないの」


 別のテーブルでは客が注目したサンドイッチでウルが手懐けられており、また別のテーブルでは役職通りだった元メイドのユラが可愛らしいターンを見せたりして投げ銭を獲ていた。


「ふん。犬やゴーレムを私と一緒にしないでちょうだい。あの二人は現状で満足なんでしょうけど、私は違うわ。寧ろあっちのレンみたいなのが理想よ」


 はたまた別のテーブルではレンが客のオッサンを土下座させ、そのオッサンの頭を足でグリグリと踏みつけていた。


「ねぇオッサン。ボクは構わないけどさ~、周りの人たちドン引きしてないか~?」

「いいんです! 他所は他所、うちはうちです! それよりもっと力を込めて!」

「こんな感じ~?」グリグリィ!

「あああぁぁぁサイコ~~~ゥ! 幼女に愛されてる俺サイコ~~~ゥ!」


 うん。楽しそうで何より。


「あれはちょっと特殊な客よ。多分次回以降は要注意人物に指定されるから、あまり気にしなくていいわ」

「じゃああっちは? ネージュが母親のムーシェにイビられてるみたいだけど」

「……え?」


 そして何故か娘のテーブルに母親のムーシェが。


「オ、オーダーを確認します。メロンソーダチョコレート割りで、イチゴとオレンジのトッピングを追加で宜しいでしょうか?」

「……本気で注文すると思った? 思った? 思っちゃった? バカな娘を持つと親が大変。これだから常識のない娘は――」


 ゲシッ!


「ガフッ!?」

「ムーシェ、アンタは退場!」

「……ファッキューアイリ」


 アイリに飛び蹴りをかまされたムーシェが警備員によって運び出されていく。


「これで平和は守られたわ。ほら、メリーももっとスマイルスマイル!」

「うっさいわね! 悪霊がスマイルしてたまるか!」


 メリーのスマイルか。確かに貴重かもしれん。そんな風に想像しながら、その日の仕事をこなしていくのであった。



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