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感動の再会

「ようやく見つけたぞ貴様らぁ! ここまで随分と手こずらせてくれたが、それもこれも今日までだ。王国に帰ったらキッチリと尋問してやるからな!」

「御託はいいからさっさと食えよ」

「言われなくとも――ハグッ!」


 甲冑を脱ぎ捨てた騎士団が運ばれて来た料理にガッついていく。30人近くいる(←前より増えてないか?)この集団は、遠路遙々俺たちを追って来たロームステルのオッサンとその部下たちだ。

 ダンジョンを囲む魔女の森で遭難しているところを冒険者パーティに発見され、こうしてアイリーンまで連れて来られたらしい。


「何にせよ生きてて良かったな。これに懲りたら俺たちを追い回す真似は止めとけ。アンタら相手にするのは時間の無駄だし」

「だが断る!」

「威張るなよ……」


 ったく、カタロストフといいコイツらといい、もっと別のものに執着してくれないものだろうか。


「いいかよく聞け。食い終わったら貴様らの番だからな? それまで逃げるんじゃ――――ととと! な、なんだ、身体が勝手に動――ふごぉぉぉ!」


 メリーがオッサンに憑依して鼻にソーセージを捩じ込んでいる。食い終わったら連行する気らしいし、このまま食えないように妨害しててもらおう。


「い、いいの? 放っておいても」

「いいんじゃないか? 俺たちは一向に困らん」

「まぁアンタがそう言うなら……」


 アイリや眷族たちが苦笑いしながら悪戦苦闘するオッサンを眺める。

 そもそも一つの街を任されている騎士団がこんな遠くまでやって来て問題ないのかという疑問すら浮かぶんだがな。無断で遠征してきたなら大した度胸だと言っておこう。多分帰国したら領主に激怒されるだろうからな。


「それにしてもアンタたち、ホントに運が良かったわね。一度魔物の森で遭難したら助からないって言われてるくらいよ。凶悪な魔物だって多いし」

「フン。我らは誇り高きロッカの騎士団。魔物ごときに遅れはとら――ふぐぁ!? 目にソースがぁぁぁ!」


 聞けば魔女の森にはBランクやAランクといった高ランクの魔物がいるんだとか。今のオッサンは食うのに必死で聴こえてないっぽいが、知らぬが仏ってやつだろうな。

 そんな光景を横目で眺めていたアイリが肩を竦めつつも、真剣な表情に切り替わった。


「それでね、話の続きなんだけど、ここからはサザンブリング王国に関わるから彼らにも聞いてもらうわ」

「「オッサンにも(我らにも)?」」


 俺は思わずオッサンと顔を見合せる。

 するとアイリは申し訳なさそうな顔で謝りつつ、理由を説明してきた。


「ゴメンね。先に謝っとくけど、ヒサシたちが来る前に軽く素性を調べてたのよ。危険な存在じゃないか――とかね」

「それは仕方ないと思うぞ? 逆の立場なら俺だってそうする」

「ありがと。それでね、足取りを遡ったらサザンブリング王国に行き着いちゃって、そんなところからわざわざ来たんだ~とか思いながら調べてたら、王国の異変に気付いちゃって」

「「異変?」」


 再度俺とオッサンは顔を見合せる。確か自称勇者の孫のリーザから内乱が発生するかもって理由で、フィルンを連れてオルロージュ帝国のマイホームに避難しに来たっけな。


「ええ。実は少し前にサザンブリング王国で内乱が始まったらしいんだけど、その事は知ってる?」


 おぅふ。ついに内乱が始まったか。

 この情報はロームステルのオッサンも知らなかったらしく、そんなバカなという顔をして鼻(ソーセージが詰まった状態)で笑う。


「何をでたらめな。すでに国王は長男であられるガーランド様を後継者にすると明言されている。争いが起こるわけなかろう」

「それってつい最近の事でしょ? なんの前触れもなくいきなり発表したらしいじゃない。本気で本人が明言したとでも思ってるの?」

「……何が言いたい?」

「鈍いわね。国王が偽者と入れ替わってるんじゃないのかって言いたいのよ」

「「……え、偽者?」」


 偽者というフレーズに、俺とオッサンの声がハモる。


「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待てぃ。何故に国王が偽者だと言い切れる?」

「これも眷族が気付いたんだけど、三週間くらい前にサザンブリング王国でオルロージュ帝国との会談が行われたのが判明したわ」

「それがどうした? 偽者とは全く繋がりがないだろう」

「国王が護衛を閉め出して行われた会談だとしても?」

「な!? 護衛もなしに会談を!」


 政治に関しては詳しく分からんが、護衛なしはさすがにマズイだろ。そんな無謀な会談を申し込まれたら断りそうなもんだけどな。

 さすがに気になった俺は横から口を挟む。


「どうして護衛を外したんだ?」

「そこまでは分からない。もしかしたら脅しに屈する理由が有ったのかもね」

「脅し…………あ!」


 ここで重要な事に気付いた。


「おい小僧、何か心当たりがあるというのか?」

「多分だが、国王はフィルンが人質にされたって事を告げられたんだと思う」

「フィルン王女! やはり貴様ら、あの時連れていたのはフィルン王女かぁ!」


 掴みかかってくるオッサンと揉み合いになりながらも話を続けた。


「仕方ないだろ! 誘拐されそうになったところを保護したんだから!」

「ならば我が騎士団にそう告げればよかろう!」

「言ったって信じないだろ! それにアンタが味方である確証も無かったんだし、あの場は逃げるしかなかったっつ~の! だいたいフィルンは無事なんだから怒るなよ!」

「――――無事?」

「そう! だからひとまず落ち着け!」


 何とかオッサンを落ち着かせ、俺が告げた内容をアイリが整理していく。


「なるほど。末子のフィルン王女が人質にとられたと知った国王は、会談に挑まざるを得なかったのね。恐らく王女が身に付けていた装飾品でも見せられたんでしょ。そして無防備になった国王は偽者と入れ換えられ、長男ガーランドを後継者にすると公言した。すると親族同士による骨肉の争いが発生し、付け入る隙を敵国に与えてしまった。それを行ったのは――」




「「「オルロージュ帝国!」」」


 訪れた当時は異変を感じなかったが、まさかオルロージュ帝国が黒幕だったとは……


「こここ、こうしてはおれん!」


 聞き終えたオッサンが食いかけのステーキを放り出し、ガチャガチャと甲冑を身に付け始めた。


「確かに突然の後継者発表に疑問を感じてはいた。不意に心変わりでもしたのだろうと納得していたが、今の話でそれは違う事が分かった。我々はすぐにでもサザンブリングに帰還せねばなるまい。行くぞお前たち!」


 オッサンに続き部下たちも食事を中断し、ドタドタと部屋を出て行った。


「あ、こら~! 食事を提供してやったんだから礼くらい言いなさいよ~! ――ったく最近のオッサン連中は……」

「うん、分かる分かる。ああいう奴らはキチンと懲らしめなきゃダメよね。私が責任持って呪ってやるからアイリは安心しなさい」

「いや、呪わなくていいから……」


 しっかしロームステルのオッサンたちが帰国したところで影響するとは思えないけどな。


「さてと。オルロージュ帝国の事は置いとくとして、アンタたちはどうするの?」

「そうだなぁ。元々レボルたち工作員がどこの国の奴らかを突き止めるのが目的の半分だったし、一度オルロージュ帝国に戻るのもいいかもなぁ」


 するとネージュ以外の仲間たちが一斉にブーイングを起こす。


「え~え? せっかく旅行を楽しんでたのにもう帰っちゃうわけ? まだまだ全然物足りないわ!」

「そんなのつまんないぞ~。もっといろんなところに連れてけよな~」

「旅行を途中で切り上げる。モテない男の思考回路で草……です」

「自宅に帰ったら陰キャ一直線どす。あまり引きこもらん方がええんちゃいますか」

「お前らなぁ……」


 文句ばっかり(というか途中から中傷になってないか?)言うので何か反論しようとしたところ、アイリから面白い提案が。


「だったら隣のプラーガ帝国に行ってみたら? もうすぐ武術大会が開かれるから、腕試しに参加してみるのもいいと思うわ」

「「「武術大会!」」」


 これにはついつい俺も目を輝かせてしまった。


「面白そうだな。いっちょ俺たちも参加するか?」

「もちろんよ! 大会を名目にすれば好きなだけ殺り放題だもの!」

「アハッ♪ やっぱ血だよな? 流血沙汰だよな? こういうのを待ってたんだぞ~!」

「敗者の名をメモリーに刻んで……くれます」

「賞品に肉は出るのん? 出ぇへんなら現地調達しますえ」


 物騒な事を言ってるが異論はなさそうだ。


「ではわたくしは観客席から応援してますね」

「おう、宜しく頼――」

「あ、言い忘れてたけど、ネージュにはここに残ってもらうわ」


 応援頑張る宣言をしようとしたネージュがアイリの顔を見て固まってしまった。


「あ、あの~、残ってもらう――とは……」

「貴女、勇者の血縁者なのに修行を怠ってるそうじゃない。ある人物が大変怒ってるわよ?」

「ある人物…………はっ、まさか!?」



 何かに気付いたネージュが顔を引き吊らせた直後、部屋の扉が勢いよく開けられた。中に入って来たのは……



「……しばらく見ないと思ったら、修行をサボって何をしている?」


 金髪に赤い目をした可愛らしいエルフの幼女だった。しかしネージュは彼女を見るなり……


「お、お、お――」




「お母さま~~~!?」


 次回、感動の親子の再会。


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