ユーは何しにダンジョンへ?
翌日。カタロストフからの刺客をはね除けた俺たちは、アイリの誘いで作戦会議に参加する事になった。
侵入してきた刺客は俺たちを――いや、アイリたちの想像を上回る動きを見せたため、アイリの方でもカタロストフは絶対に排除しなきゃならない存在となったわけだ。
そんな会議はアイリによる第一声からヒートアップした様子を見せ始める。
バン!
「これは挑戦状よ、私たちに対する宣戦布告に等しいわ! 私たちを舐めたらどうなるか思い知らせてやりましょ!」
カタロストフ対策会議と記されたホワイトボードを叩き、アイリが続ける。
「カタロストフについて現在まで分かってる事をまとめるわ。まずは……」
・銀河メンフィス共和国という宇宙の彼方に存在した国が開発した人工生命体。
・成長速度がずば抜けて早く、僅か数年で同国の軍人と肩を並べるほどに。
・1000年経った今ではどこまで成長してるか未知数。
・危険とみなされ祖国から棄てられた。
・目的も不明だが当時の祖国から受けた命令を元に行動している可能性もあるため、いずれはイグリーシア全土を支配する可能性も。
・どこを根城にしてるのか不明。
・どういう訳かヒサシに対する執着を感じられる。
「軽く上げるとこんなところかな。でね、私としては最後の一文が気になるんだけど」
その台詞の直後、会議室にいる全員の視線が俺に集まる。
「いや、執着されてんのは分かるけどさ、俺には全く身に覚えがないぞ?」
「でしょうね。アンタは転生者なわけで、カタロストフとの接点は見当たらないもの。でも執着してるのは間違いないわ」
一方的に好意を寄せられてるってこんな感じかもなぁ。しかも損害を被ってるからより悪質だ。
「まるでストーカーだな。せめて奴の所在地が分かれば直接殴りに行くんだが」
「所在地ねぇ……」
それができれば苦労はしない。
――と言いたいところだったが、眷族の1人ペサデロ(メリー救出に協力してくれた少女)から朗報が伝えられる。
「……所在地の特定は無理だったけど、グリンが搭乗していたバトルギアに微かなリンクが残されていた」
「ホ、ホント!?」
「……本当。恐らくはグリンの行動を矯正するためと思われる」
忘れかけてたが、グリンの奴は命令を無視して俺を抹殺しようとした。それに気付いたカタロストフが自爆するよう仕向けた可能性が高いんだとか。
つまりバトルギアに引きずり込もうとしたのはカタロストフの意思って事だ。未遂に終わってマジ助かったぜ。
「……すでにリンクは断たれてるけど、完全に消滅するまではかなりの時間を要する。上手く行けば特定可能かと」
「でかしたわペサデロ! 早く特定を進めてちょうだい!」
「……すでにやっている。時間がかかるから肩揉んで」
「オッケー。――って何で私が肩揉まなきゃならないのよ!」
「……腰でもいい」
「そういう問題じゃな~い!」
これはありがたい。早く特定してくれる事を祈ろう。
「ったくもう……。ペサデロは後でシメるとして、その間にヒサシたちはアイリーンで過ごしてもらうって事でいい?」
「あ~、やっぱそうなるよなぁ」
「ん? 何か問題?」
「いや、実はさ――」
長期間に渡って行動を制限されそうだったので、俺たちが旅をしている理由を打ち明ける事にした。
こっちもついつい忘れそうになってるが、レボルたち工作員が所属している国を突き止めるってのがそもそもの発端だからな。
「――って訳でさ、サザンブリング王国に危機が迫ってるんだ。そりゃ宇宙だの銀河だのと比べたら小規模な話だろうけど、王女であるフィルンと知り合った以上放置するわけにもいかないんだよ」
「そうだったの。それで帝国ってフレーズだけをヒントに探し回ってるのね」
「ああ。オルロージュ帝国はすでに調べたから、残るのはプラーガ帝国とダンノーラ帝国なんだが」
そう話すとアイリを含めた眷族全員が眉を潜める。おかしな事を言ったつもりななかったんだが、ホークさんが苦笑いしながら教えてくれた。
「ヒサシはん、そりゃあり得へんっちゅ~やつやで。何せプラーガ帝国を動かしていた野心家の先代はもう居ないんやからな。末子のイケメン君が皇帝の座についてから、周辺国に対しては好意的に振る舞っとるで。もち不振な動きも無しや」
「そ、それならダンノーラ帝国は?」
「そっちはもっとあり得へんなぁ。何せダンノーラ帝国の裏ボスはワイらとの戦いに惨敗してからは絶対服従なんや。逆らったら消されるんは理解しとるやろうし、ま~ず裏切らんちゃうか」
「マジでっか……」
ならいったいどこの刺客だ? 俺にはホークさんが嘘を言ってるようには思えない。
それともレボルの口からでた帝国ってフレーズはブラフだったのか? う~ん、ますます分からん……。
「なんだか前途多難ね。色々と大変そうだし、しばらくはアイリーンで匿ってあげてもいいわよ?」
「いや、気持ちは嬉しいが、それだとカタロストフに狙われ続けるだろ? 寧ろここから出ていった方がアイリたちにとっては負担にならないだろ」
「でも……」
「悪いが気持ちだけ受け取っておくぜ」前歯キラ~ン
そう言って爽やかな笑顔を見せる俺。アイリが美人だったからそうしたわけじゃないぜ?
わりぃ、嘘だ。アイリがめっちゃ美人だったから気を引こうとしますた。すんまそん。
しかし、俺の行動を見破ったメリーたちは邪悪な笑みを浮かべ……
「アンタらは知らないだろうけど、コイツめっちゃロリコンだから注意した方がいいわよ」
「……え"?」
「そうそう~。ボクたちの体を見てニヤニヤしてるよな~」
「……ええぇ!?」
「そういえば御自宅にも子供たちが大勢いるらしい……です」
「……あ~~~うん……」
「もう言い逃れできしまへんなぁ」
「……確かに」
ヤバいぞ、何気にヤバいぞ。アイリにまで俺がロリコンだと疑われてる。ここは一つガツンと言い返さなくては!
「お前ら、さっきから勝手な事言いやがって。俺のどこがロリコンだと言うんだ!」
「あ~あのね、多分だけど、アンタの膝の上の事を言いたいんだと思うわ」
驚いた事に、指摘してきたのはアイリだった。
「膝の上って……メリーを座らせてるだけじゃないか。なぁメリー?」
「それがおかしいのよ! ていうか私に同意を求めるな~~~っ!」
ドゴッ!
「うぐぅ!? バ、バカ……さすがに股間への強襲はヤバい……」
「知るか! いっそ去勢されてしまえ!」ゲシゲシッ!
「やめろ、蹴るんじゃない!」
クソゥ、使い物にならなくなったらどうしてくれるんだ。
「ハァ……。てっきり兄弟愛みたいなものだと思ってたけど……」
「気付けてよかったのぅ、主よ」
「まったく、無害そうな顔で騙されるところでしたなぁ」
「まぁ、ドンマイやでアイリはん……」
アイリとその眷族からの評価もガタ落ちで、俺はもう泣きそうです!
「……コホン。まぁロリコンはともかくとしてね……」
「いや、マジでロリコンじゃないから!」
「……そういう事にしとくわ。で、ここから出て行くとして、次はどこに向かうつもり?」
「次か。そうだなぁ……」
「まだ決まってないなら――ん? あ、ちょっとゴメン」
誰かから念話が届いたらしく、アイリが会話を中断。すると間も無く。「ええ……」とげんなりした顔を作り、俺たちの方にチラリと視線を向けてきた。
「あのね、アイリーンの外で行き倒れてた騎士団を冒険者が保護したらしいんだけど、その騎士団の団長がヒサシたちを捜しに来たって言ってるようなんだけれど……」
「うわぁ……」
面倒事がもう一つ増えたよ……。




