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グリンの信念

 ドドドドドドドッ!


 グリンが搭乗している人型兵器(バトルギア)の背中から無数のミサイルが発射された。その数は空一面を覆うくらいの凄まじいもので、すでに勝った気でいるグリンが見下すように挑発してくる。


『フッ、どうです? これだけの量を撃ち落とせるのならやってみせてください。出来るものならね』

「言われなくたってやってやるわ! みんな、お願い!」


 グリンから挑戦を真っ向から受け、アイリの眷族たちが迎撃にあたる。

 しかしあの量だ。俺を手伝おうと飛び上がったところ、意外にもグリンが行く手を阻んできた。


『おっと、貴方にはボクの相手をしていただきますよ』

「俺を始末するのも目的の一つってか?」

『いえいえ。カタロストフ様の目的はいつだって貴方です。ダンジョンの制圧はそのついで。最初から貴方の身柄を抑えるのが()()()()()

「過去形じゃねぇか。心変わりでもしたってのか?」

『ええ。ここに来るまでにも色々と思考をめぐらせてました。なぜカタロストフ様が貴方に拘るのか、何度も思考を繰り返しましたが、結局分からずじまいですよ』


 カタロストフが俺に拘ってる? そんなもん、こっちが聞きたいくらいだぜ。

 だが冷静な俺とは対称的に、グリンの奴は徐々に感情を昂らせていく。


『ボクは造られたのはカタロストフ様から必要とされていたからです。ダンジョン制圧という大きな使命をいただいた事にも感謝しています。しかし貴方は違う。カタロストフ様とは関わりのなかった完全なる部外者です。なのになぜ貴方を要求するのかが分からない。分からないからもどかしい!』


 口調だけは丁寧でいながら、グリンは怒りを露にしている。


『本来ならば――』



 シャーーーーーーガシガシガシィ!



「なっ!? 鎖が身体に!」

『――こうやって拘束した後、速やかにダンジョンを脱出する予定でした。ですがご安心ください。これを使用するつもりはありません』



 シュルルルル……



 バトルギアの両肩から放たれていたチェーンが収納されていく。身体が自由になったところで、改めて剣を構えた。


「そんな便利なもんを敢えて使わない? 随分と舐めた事言ってくれるな」

『舐めてなんかいませんよ。ボクは貴方を捕える気はない。つまり――』




『貴方を抹殺するのが目的なのですから!』



 ズダダダダダダダ!



「おわっと! 銃弾の雨ってやつか。蜂の巣は勘弁だぜ」

「なかなかのジャンプ力ですね。少しでも低ければ数発は被弾していたでしょうに。ですが、空中では自由に避けられませんよ!」


 ズダダダダダダダ!


「させません。――保護フィールド展開」

「何ッ!?」

 

 俺が被弾する前にユラが飛び上がり、迫る銃弾を全て打ち消した。


「クッ……。ならばこれでどうです!? 防破音波(ブレイクメロディ)!」


 ピキィーーーーーー!


「ぐへぇ!? なんだよこの不快な音!」

「クククク。この音波を受けた者は防御能力が著しく低下するのです。これで――」

「その音源、掻き消します――」



 アォ~~~~~~ン!



 不快音にウルが対抗し、上書きするように掻き消した。


「こ、これもダメだと言うのですか! ならば直接粉砕するのみ――タァァァ!」

「お、肉弾戦か? ボクに任せろ!」


 ガッ――バチバチバチ……


「そんな! 最新型のビームサーベルまでもが通用しないと!?」

「アハッ♪ 魔剣のボクが鍔迫(つばぜ)()いで負けるわけないだろ~! ほいっと!」



 ズバン!



「グアッ!?」


 ビームサーベルを握っていた片腕をスパッと斬り落とした。万策尽きたのか、グリンは片膝をついて喚き出す。


「お、おかしい、1000年前よりも遥かに強化されたバトルギアですよ!? それをこうも容易く防がれるとは……。こんな……こんな事が許されるものかぁ!」

「許すとか許さねぇとかどうでもいい。今のテメェじゃ俺たちには勝てねぇのさ」

「黙れぇ!」

「いいえ、黙るのはアンタよ。さっきのミサイルは眷族が全て撃ち落としたわ」

「なんだと!?」


 言われてみれば着弾した衝撃は一切なかった。言った通りに全て処理したんだろう。


「ついでに教えてあげる。このダンジョンは仲間として認識した相手のステータスを底上げするバフがかけられ、敵対者にはデバフ効果をもたらすの。つまりアンタは弱くて当然ってわけ」

「クッ……」


 さすが転生者のアイリ。どうりで苦戦しなかったわけだ。


「さ、どうすんだ? テメェが選択出来る道は殆ど無いぜ?」

「…………フッ」


 コイツ、これだけ追い詰められてんのに笑ってやがる。アイリの眷族が健在な上に俺たちもほぼ無傷。この状況を覆せるとは到底思えないが。


「クククク……。驚きましたよ。ええ、想定外とは正にこの事でしょう。ですがね、ボクには最後の手段が残されているのです」

「へっ、強がりやがって。どうせ自爆するとかそういうパターンだろ?」

「その通り」



 ……え、マジで?



「ちょ、待て、早まんな!」

「フハハハハ! もう遅いですよ。すでに自爆コードは入力済みです。5、4、3――」


 残り数秒!?


「ダメだ間に合わな――」

「大丈夫よ。任せて」


 妙に落ち着いたアイリがグリンの周囲に壁を生成した。そして……



 ボン!



 あ、あれ? 意外に強くない?



「ダンジョンの壁は破壊不可なのよ。封じ込めるのは簡単ってわけ」

「な、なるほど……」


 オーバーに狼狽えてた俺がバカみたいじゃないか……。


「それよりグリンはどうなった?」

「はい、壁消滅――っと」


 取り除かれた壁の中には操縦席が剥き出しのバトルギアが辛うじて原型を留めていた。肉が焼けた嫌な臭いが鼻を突き、ベットリとこびりついた血が操縦席を染めている。


「なかなかの絶景ね。記念撮影でもしたら?」

「そう思うのはお前だけだぞメリー」


 どっちにしろグリンは死んだ。これでひとまず安心――



 ギ……ギギギギ……



「んん? 機体が動いたような……」

「気のせいじゃないの?」

「それならいいん――」



 グ――――ガシィ!



「ヒサシ!?」

「何っ!? コイツ、生きてるのか!?」


 残った片腕が急に延びてきたかと思えば、俺の胴体を鷲掴みにしやがった!


「クソッ、離せ――離しやがれ!」

「この死に損ない、ヒサシから離れなさい!」

「こんの~、離れろって言ってんだろ~!」


 メリーたちが必死に剥がそうとするも、火事場の馬鹿力みたいに離れない。


「つ~かこの野郎、俺を操縦席に連れ込もうとしてやがる!」


 この時俺は直感した。この機体、俺を取り込むつもりだ。


「こうなったら焼き切りましょう――へビィウェルダン」


 ユラによる至近距離での熱攻撃だ。これならすぐに――


「――っておい、全然効いてないぞ!?」

「そんなはずは……しかし損耗してる様子がないのは確かで……」

「こうなったらウチが噛み切りますぅ」


 続いてウルも噛みつくが、文字通り歯が立たない。


「これはおかしいどす。さっきよりも硬なってますわ」

「ならボクが――ってあれ~? なんで斬り落とせないんだ~?」


 クソッ、レンでもダメだってのか!?


「どきなさい! 私が斬り落としてあげる!」


 見かねたアイリが飛び上がり、おもいっきり剣を振り下ろす。



 ガン!



「う、うそでしょ!? 私の剣で傷が付かないなんて……」

「な、なんでもいいから早くしてくれ!」


 仲間もダメ、アイリでもダメとくりゃ、身動きできない俺は叫ぶ事しかできない。その間にもジワジワとコックピットに引きずられていくし、もはや万事休す――




「こうなりゃヤケよ。私のヒサシから離れなさい――憑依合体(リンクネーション)!」


 メリーが俺の中に入り込んだ。すると……




 ピキ……ピキピキ……ピキピキピキピキ……




 バキィィィ!




『「っしゃあ、助かったぜ!」』


 俺を拘束していたバトルギアの手がバラバラに砕け散った。


『「フン、ガラクタの分際で調子に乗るんじゃないわよ!」』


 しかし俺に憑依しただけで砕けるとか、よく分からない現象だった。この先も注意が必要だな。


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