リア充な眷族
「すんませんした! 俺の完敗です!」
「せやろせやろ? まぁ分かればええねん。ヒサシもな、もっと謙虚な気持ちでいれば嫁はんなんていくらでも来てくれるで。そもそも今の若いもんは――」
もうね、ただただ平伏すだけの俺って感じだよ。だってチャラ男みたいな見た目であんな美人さんを捕まえるなんて、もう完全に雲の上の存在ってやつだ。
しかもアイリの眷族で唯一既婚者というリア充の前に超が付くじゃねぇか。
ちなみに眷属と眷族は微妙に違い、眷族はダンマスとの絆が強固らしい。俺にとっちゃ関係ないが。
「なかなかの美人どすなぁ。どうやって知り合ったんか興味ありますわぁ」
「お、やっぱ気になるか? まぁ話せば長くなるんやが――」
「三行でまとめておくれやす」
「そ、そか? ほな三行で言うとやな、宇宙で知り合って、ワイに一目惚れして、そのままくっついてゴールインって感じや」
一切の障害もなくゴールを決めたらしい。
「あの……マジで一目惚れされた側?」
「なんやヒサシ、ワイが嘘言うてるとでも思うとるんか? なんならミカに聞いてくれてもええで」
プシューーー!
「お待たせ」
なぁんてやってるところにミカさん登場。何度見ても美人すぎて羨ましい。
「ほら、ちょうど出てきたとこやさかい、聞いてみいや」
「い、いやいいです。そこまで言うからには本当だと思いますんで」
下手するとおのろけ全開モードを披露されそうっていう懸念から本人確認はしなかった。だってミカさん自らホークさんの手を握ってるしな。
「ほんじゃディナーに行こか。めっちゃええ景色が見れるとこあんねん。今日は出血大サービスでワイが奢ったるさかい感謝しぃや」
「マジで!? やったぜ~♪」
「ホーク殿は太っ腹。メモリーに保存……しました」
「あの……本当にいいんすか?」
「おぅ、かまへんかまへん。フルコースでもなんでもドンと来いやぁ!」
太っ腹なホークさんに案内された場所はコスモアイリーン(この宇宙船のこと)でもトップクラスの人気レストランで、外の景色――つまりは宇宙を眺めながら食事を楽しめるらしい。
運が良ければ流星も見れるとかで、地上の貴族連中は大金を積んでアイリに頼み込んでるんだとか。けど殆どが一蹴されてるし、ここにいる俺は優越感に浸るべきかもな。
「うんめ~、こんな美味ぇステーキ初めてだぞ! この味付け最高かよ~!」
「この絶妙な歯応えに口の中で溶けていく感触。癖になりそうやわぁ」
肉食のレンとウルはご満悦の様子。
「どれ、俺も…………うん、確かに美味い!」
イグリーシアの薄い味とは比較にならないな。さすが転生者のアイリが絡んでる事だけはあるぜ。
「どや? 飯も美味いし眺めも最高やろ?」
「そりゃまぁ。日本にいた時ですら宇宙に出た事はなかったですし」
「せやろせやろ。でもってな、こうして嫁はんとの仲を見せつけるのも醍醐味の1つやさかい、食いながらよう見たってや」
「もぅ、ホークったら~。はい、あ~ん♪」
「あ~む♪ うんめ~はコレ!」
「「「…………」」」
おかしい。料理は美味いのに味がどんどん薄くなっていく。
いやまぁ幸せそうなのは結構だけども、少しは周りの目も気にしてほしいところだ。
「ウザいわね。壊してやろうかしら」ボソッ
「やめとけって」
「何よ、アンタだって妬ましく思ってるんじゃないの?」
「ウザいのは同意するが妬ましくは思ってねぇよ。俺にはメリーが居るしな」
「…………」
露骨に嫌そうな顔するのは止めてもらえませんかねぇ。
「アンタ、やっぱり本物のロリコ――」
「何でもいいから早く食えよ」
「開き直んな変態!」ゴスッ!
「イダッ! だから玉を狙うなって!」
こんだけ騒いでるのに、向かいの二人はイチャイチャを止めない。もう完全に二人だけの世界に入ってるな。
「でも羨ましいです~ぅ。わたくしも素敵な出逢いに憧れますね~」
「ケケケケケ♪ それが叶ったらネージュの幸せもブチ壊してやるわ」
「止めてください。かれこれ数百年は出逢いがないのです……」
「……可哀想だから見逃してあげるわ」
エルフは長生きだし、そのうち出逢いくらいはあるだろ。
「よっしゃ! せっかくやし、今から大人の相談タイムと行こうやないか。女の子たちはミカの近くに集まってぇや。色々と相談に乗ったるさかいな」
「はいはいはい! 是非お願いします!」
ネージュが真っ先に食い付き、頭にクエスチョンマークを浮かべた他4人もミカさんのところへと移動し、俺とホークさんは少し離れた席へと移る。
いったい何をする気だろうと思ってると、ホークさんが酒臭い息を吐きつつガッチリと肩を組んできた。
「……で、誰が本命なんや?」
「へ?」
「とぼけんでもええがな。あの5人の誰を狙うとるか聞いてんねん」
「いや、さすがにあの年齢層は……」
「アホ。それが負け組の考えなんや。ええか? 今は幼女でもいずれはベッピンになるかもしれないんやで? だったら今のうちにキープしときぃや。それが後悔しないで済む唯一の方法やで」
「な、なんか大げさじゃないすか?」
「んなことあらへん! 一度きりの人生、真剣に生きなどないすんねん!」
「う、うす……」
う~ん、将来の前にメリーとは離れられないし、そうなると必然的にメリーになるか?
でもなぁ、俺を死に追いやった張本人だしなぁ。仮に俺が他の誰かと縁を持ったら全力で邪魔してきそうで怖いんだが……。
「お? なんやえい真顔やん。そこまで真剣に考えんでもええんやで?」
さっき真剣に考えろって言うたやん!
「ま、冗談はこんくらいにしてやな」
「冗談かよ」
「こっからは真面目な話や。お前さん、何者かに取り憑かれとるで?」
――と言われても正直微妙だ。何せメリーがすでに取り憑いてるからな。
「そういうのは慣れてるんで」
「違うっちゅ~に! メリーはんとは一心同体みたいなもんやろ? そうじゃなくてやな、獣人の女の子が背後にピッタリと張り付いとるんやと」
「……え?」
何でもあの場ではカタロストフから逃れた直後って事で、気を使わせないために教えなかったらしい。
「ペサデロっていう白衣着た辛気臭い女が居ったやろ? アイツが言うにはな、物理的に接触できない存在がヒサシはんに憑いとるらしいで。世間一般でいう幽霊ってやつやな」
「ちょ、怖いこと言わないでくださいよ!」
「な~にビビっとるんや。寧ろヒサシはんの守護霊的なポジションらしいし、逆に羨ましいで」
「いや、羨ましいって……」
「ホンマやて。アイリはんも言うとったで? ヒサシはんと話す度に睨んでくるから凄く話し難かったらしいしな。ま、そんだけ好かれてるって事やし、身に覚えはあるんやろ?」
でも俺を好いてくれてる獣人の女の子なんてイグリーシアで出会った覚えは――
「あーーーっ! もしかしてリサか!?」
「お、なぁんや、やっぱり心当たりあったやんか」
そうだった。出会った時にはすでに幽霊になってて、もっと早く出会ってたらって後悔したんだっけな。
「まさかリサがついて来てるなんて」
「照れ臭そうにしとるって事は結構ええ関係に発展した仲なんか?」
「それは……」
思い出させてくれたお礼って感じに、リサとの経緯を話した。泣き上戸なのか、聞き終えたホークさんは涙を拭いながら俺の背中を叩いてくる。
「悲恋やないか! ごっつう悲恋やんか! そうかそうか、ヒサシはんも心にキズを負ってきたんやなぁ」
確かにそうだ。リサが生きてる状態でこの宇宙を見せてやりたかったよなぁ。
あ、でも憑いてきてるって事は景色も見てるのか? いやいや、二人で肩を寄せあって眺めるのがいいんだろうが。つ~か今さらな話すぎて寂しくなってきた……。
その後もホークさんの泣いたり笑ったりのマシンガントークに付き合い、本人もすっかりベロンベロンになったところで今日は解散。酔っぱらいの旦那を担いでミカさんは帰っていった。
「はぁ……。リサ……か」
「な~に呆けてんのよ。今さら死んだ人間――いや、死んだ獣人に執着したってどうにもならないでしょ」
「そりゃそうなんだけどさ。でもやっぱり生きてたらって思うと……な」
「なんだよヒサシ~、案外みみっちいやつだな~」
「いつまでも過去を引きずる典型的なダメ男……ですね」
「もう少しシャキッとしとくれやす」
なんかフルボッコになってきた。
「いいじゃんかたまには。時には過去を振り返るのも大事なんだぞ」
「アンタの場合は振り向いたままでしょ」
「うっ……」
「まぁまぁ落ち着きなさいな。困ったヒサシ君に朗報を持ってきてあげたから」
「ほら、ムーザもこう言ってる事だし――」
「――ってムーザ!?」
なんと、会話に混ざってきたのは伝説の魔女ムーザだった。
「そんなバケモノを見るかのような視線。お姉さんには堪えられないわぁ」
「いや、小芝いはいいから朗報ってやつを教えてください」
「もぅ、連れないわねぇ。もしかしたら愛しのリサちゃんが甦るかもしれないのに」
「へ~ぇ。リサが甦る――」
「そ、その話をくましく!」
とてつもない朗報に俺は食いついた。




