危機は去って観光開始
「改めて礼を言うぜ。ありがとうアイリさん。ほら、メリーもちゃんと礼を言えよ」
「…………」
礼を述べずに俺の膝の上でムスッとしているメリー。アイリさんは理解してくれたのか苦笑いをし、レンたち三人組は何故か白い目で俺を見てくる。
分かってるよ。ちゃんとメリーに礼を言わせれって言うんだろ?
「メリー、さすがに今回は俺たちだけじゃ危なかった。助けられたんだからそこは感謝しないと」
「…………ありがと」
「よしよし、ちゃんと礼を言えて偉いぞメリー」
「頭を撫でるな!」
「いでででで!」
おかしい。前より反抗的になってる気がする。
「メリー、助かったってのに何だって機嫌が悪いんだ? お前さっきからおかしいぞ?」
「おかしいのはアンタよ! 必要以上にベタベタして、今だってちゃっかり膝の上に座らせてるし、普段はこんなんじゃなかったでしょ? 前みたいに私を恐れなさいよ」
「恐れろって言われてもなぁ」
虚勢張ってるみたいで余計に可愛く見えるんだよなぁ。
「まぁアレだ。お互いに距離が縮まったと思ってだな――」
「勝手に縮めるなーーーっ!」
ゴスッ!
「グホッ! お、お前……キン○マ狙いはさすがにNGだぞ……」
「うっさい! アンタが変態なのが原因でしょ~が! 周りをよく見なさいよ。みんなドン引きしてるわよ!」
「いや、そんなはずは……」
「「「…………」」」
悲報、マジだった……。
「その……ね。大変言いにくいんだけど、幼い子が好きなのもほどほどにしといた方がいいわよ。どう見ても怪しい人だから」
「アイリはオブラートに包んでこう言ってくれてるけれど、本来なら即連行よ? 今回はスキンシップって事にしとくから、アイリーンにいる間は注意しなきゃダメよ?」
「はい……」
ムーザに苦言を呈された。伝説の魔女に説教かまされた野郎なんざ俺だけじゃないだろうか。いや自慢するわけじゃないが。
「それにしてもアンタ、銀河メンフィス共和国に関わっちゃうなんてよっぽどよ。一般人が耳にする事は殆どない存在。そこに片足を突っ込んじゃった以上、今後は気をつけなさい」
「俺としても好きで片足突っ込んだわけじゃないんだがなぁ」
「文句言っても仕方ないわよ。同じ日本人として協力はするけど、それでカタロストフが見逃すとも思えないし」
「確かに――というか、アイリさんも日本人だったの?」
「ええ。ついでに言うと、アンタより二つ歳上の18歳。転生してきたのは5年前になるかしらね」
めっちゃ先輩だった。今後も力を借りる事になるかもだし、今のうちにめっちゃ仲良くしておこう。それに……
「な、何? 私の顔をジロジロ見出して……」
よく見りゃめっちゃ美少女だし、ついでに恋人候補に立候補できれば尚よしだ。
更についででロリコン疑惑も解消されて超ラッキーに!
「お、今アイリはんを恋人に――とか考えとったやろ?」
「い、いえ、そんな事は……」
「ハハッ! 誤魔化さんでええって。せやけどライバルは多いって事だけは言うとくで? 見ての通りめっちゃ美少女やかさかい、それだけ狙ってくる奴は多いんや」
だと思ったよ……。うん、俺が入り込む隙はなさそうだな……。
「アイリはん、確か三人くらいと同時に付き合っとるし、上手く行けば――」
「こらホーク! ストップストップ!」
んん? 今確か……
「アイリさん。まさか3股とかかけてらっしゃる?」
「(ギクッ!)…………え、え~っと……」
「でも権力者なら当たり前じゃない? 愚民は黙って従えって感じでしょ」
「ちょ、ちょっと待って、それは違――」
「おお、なんかそれっぽいな! 強いダンマスでしかも美少女なら選り取りだろ!」
「いや、だから違――」
「しかもダンジョンの統治者ゆえに誰も逆らえないと」
「いやいや、だからね――」
「逆ハーレム、楽しそうどすなぁ」
「だから違うって言ってんでしょ~~~!」
ズド~~~~~~ン!
散々茶化した結果、アイリが暴走して部屋が爆発炎上。一同は口から炭を吐き、髪型をアフロにチェンジしていた。
しかしネージュだけは茶化さなかったためか無傷だが、何故かムーザさんたちまで巻き添えを食らっている。
「ゼェハァ……ゼェハァ……」
「ちょっとアイリ、私たちまで燃やすのはやり過ぎじゃない?」
「……ムーザに同意。我々は冤罪。燃やすならホークだけにすべきだった」
「薄情かおまいら……」
「うっさいわよ。どうせアンタらも心の中で笑ってたんだろうから同罪よ」
よく分からないが、日頃から積もり積もったものがあったらしい。
「あのね、私だって断ったのよ。でも彼らがそれで良いって言うから付き合ってるの。私から誘ったんじゃないって事は理解しといて。ちなみに3股じゃなくて4股ね」
イメージダウンさせてどうする……。
「あ、あの、わたくしは良いと思いますよ? 双方の同意があるのなら、他人が口出しすべきではないかと」
「くぅ~~~、ありがとうネージュちゃ~~~ん! エレムの子孫だけあって理解力があるのね!」ダキッ!
「い、いえ……」
「後でご褒美として、貴女の親族に会わせてあげるからね!」
「親族ですか?」
「ええ。多分ネージュちゃんも知ってると思うわ」
ネージュの親族? って事は勇者の末裔か?
「さて、そっちの話は後にして……コホン。ようこそアイリーンへ。さっきも言ったけど、私がここのダンマスのアイリよ。所持金が足りる限り滞在してていいから、ゆっくりしてってちょうだい」
「ありがとう。せっかくだから色々と見て回りたい」
「なら引き続きホークに案内させるわ」
「ほいほい。ワイに任せしてや!」
コアルームの出口がエレベーターになっていて、ホークさんは迷わず5階を押した。
よく見りゃ地上からコアルームまで全部で22ヵ所もあるじゃねぇか。ダンジョンの平均階層は3から5だと言われてるし、このアイリーンがいかに巨大かが分かると思う。
チーン!
「さぁ着いたで。これがアイリーンが人気のある理由や!」
「「「おおっ!」」」
一同が思わず感銘を受ける。ドアが開いた先には近未来都市が広がっていたからだ。
「雲を突き抜けている高層ビルに宙に浮いてるボートのような乗り物。遠くには遊園地がライトアップされていて、近くにはファミレスまである」
「今は夜間で見えへんけどな、昼間は海までしっかり見えるで」
「そっか。昼間も見てみた――いやちょっと待て。ダンジョン内に昼間とかあんのか!?」
「そらそうよ。ダンジョンには疑似太陽っちゅうもんが存在しててな、外の太陽と同じくらい照らしてくれるんや」
それまた画期的だな。
「そんじゃどこ行く? まずは軽~く腹ごしらえでもするか?」
「おお、肉がいいぞ肉! 早く食わせろ肉~~~!」
「レンは少し落ち着け。なぁホークさん、どうせなら宇宙空間を見ながら晩飯にしたいと思ったんだが、それは可能か?」
「おお宇宙か。なかなかお目が高いやないかい。やっぱ森を飛んでる最中に見えた宇宙船がインパクトあったんやなぁ」
「まぁね」
「よっしゃ! ほんじゃ宇宙船に行くやで~!」
ホークさんについて行くと、着いたのは天まで届く高層ビル。ここから宇宙船に繋がってるらしく、強化ガラスから景色を眺めつつ乗り込んだエレベーターが上昇を始めた。
「本来イグリーシアと宇宙の人間は違うてな、接触するのには申請が必要なんよ。でもアンタらはビップ待遇で免除や。アイリはんに感謝しぃや」
「そこは素直に感謝するよ」
「でもアンタに感謝はしてないから勘違いしないでよね」
ま~たメリーは余計な事を言う。
「何や何や、反抗期かツンデレか? そんな性格じゃモテへんでぇ」
「アンタみたいなチャラ男に言われたくないわよ。どうせアンタもヒサシと同じくモテない男の典型でしょ」
「お? お? 言うたな? 言いよったな? そこまで言うならワイの超ベッピンな女房を見せてやろうやないかい!」
「アンタのPC画面見せられても嬉しくはないわよ。いい加減現実を見なさいよ」
「ぬわ~~~! 何だってアイリはんと同じこと抜かしよんねん!」
ごめんホークさん。アイリさんにも言われたってとこで不覚にも笑っちまった。
「ワイの美人嫁はちゃんとした三次元の嫁や! ちょうど宇宙船にいるさかい現物見せたろうやないかい!」
――等と言ってるうちに宇宙船の内部に到着。居住区と思われる高級マンションまで案内されると、美人嫁が住んでるらしい部屋の1つのインターホンを押した。
そして開いたドアと同時に俺たちの口もあんぐりと開いた。
プシューーー!
「お帰りなさい貴方。御飯にする? お風呂にする? それとも――」
「まぁ待ちぃや。今日は知人も一緒でな? 今から外食しよ思うんやが、ミカも一緒に思うてな」
「ん……この子たち?」
「せや。アイリはんから案内役を頼まれてもうたんや」
「分かった。私も一緒に行くから少し待ってて」
プシューーー!
「「「…………」」」
「どや? 美人嫁やろ?」
そう言われて我に返る。金髪ツインテールの童顔だったが、二十代前半の美人さんだ。
そして俺は思わず土下座をし……
ズザッ!
「すんません! おもいっきり美人でした!」
すまんかったホークさん。雌の鶏を想像してました。




