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負傷メリー

 アムドリフェン侯爵の側近であるボランゾが投げつけた破傷石の影響で、俺に取り憑いていたメリーとレンが気を失うほどのダメージを受けた。

 ボランゾはすぐに拘束されたが二人が回復する様子はなく、メンヒルミュラーが呼びつけた医者に見てもらうことに。

 いてもたっても居られない俺は医務室に突撃するも邪魔だからと追い出され(←当たり前)、次の日の夕方に付き添っていたカスティーラが渋い顔をして出てきた。


「カスティーラ、二人の様態は!?」

「それなんだが、メリーの方はお手上げだな。医者が診察しようにも直接手で触れる事ができないときた。これではどうする事も……」

「そんな……」


 このまま消滅――なんて事が脳裏を過ったが、メリーがそう簡単に消えるはずがない。それを信じてこれからの事を考えよう。続いてレンの様態だが、こちらは意外な返答が返ってきた。


「そう気を落とすな。レンの方は魔力が一時的に不足してるだけで、そのうち目を覚ますだろうと仰られたぞ」

「ホントか!?」


 あの破傷石ってのは結界を破ったり邪悪なものを打ち消す効果があるらしいからな。貯まっていた魔力が飛び散った状態なんだろう。

 とりあえず落ち着きを取り戻した俺は医務室で横たわるレンを魔剣の状態へと戻し、そこに居た医者に礼を述べるとメリーを担いでネージュたちが待つ応接室へと戻った。


「ヒサシさん、メリーちゃんの様子は……」

「レンは大丈夫だそうだ。そのうち目を覚ますよ。けどメリーの方は分かんないな。俺以外は触れないし、助けるにしても俺にしかできないっぽいんだが」

「そう、ですか……」


 ネージュが暗い表情でソファーに座る。ユラとウルは言葉こそ発しないが、不安そうな表情までは隠せてない。


「俺の方で回復させる方法を探ってみる。見つかるまではここに滞在する事になるけど、みんなもそのつまりでいてくれ。ところでトラさんはどこ行ったんだ?」

「それでしたら邪神スラグビスのところだと思います。首都の一部を破壊したのを多くの人たちが目撃してますので、元凶は滅んだと告知するために中央広場に展示されてるとか」

「そういうのって普通は隠すもんだと思ってたが」

「観光客を集めるために一役かってもらうとメンヒルミュラーが言って……ました」

「既に近くの出店ではスラグビス饅頭とか売られてとります」


 商魂逞しいなおい! これもエレムのお導きとか言い出さないだろうな? いや、言ったところで誰も困らんけども。

 あ、エレム教と言えば……


「そういやネージュ、トラさんとの勝負はもう止めたのか? エレム教の化けの皮を剥がすとか息巻いてたが」

「……今思い出しました。わたくしとした事が本命を忘れるなんて、らしくないですね」

「え……ネージュ?」

「今日という今日は完全決着を目指します!」


 ダッ!


「お~い、ネージュ――って、もう行っちまったか」




 気分転換も必要だと考え、メリーをユラとウルに任せて中央広場に向かうと、すでにそこはお祭り会場と化していた。例の饅頭以外にも模型なんかも売られてて、子供たちには大好評のようだ。

 けれど目玉は何といってもスラグビス(って奴が搭乗していた人型兵器)本体で、強制起立で展示されているスラグビスの周辺だけは人集りが半端ない。


「パパ! ボクもあれ欲しい!」

「ハハハハ! 買っても家に入りきらないから眺めるだけにしなさい」


 うん、ごく普通の親子連れの反応だな。


「このスラグビスっていうのが首都を襲ったんだってさ」

「え~、何それ怖~い」

「ハッ、今度襲ってきたら俺が指先1つでダウンさせてやんよ!」


 うん、ごく普通のカップルの反応だな。


「うんうん、これで観光客も増えそうだよね~。珍しいから写メっとこ~」


 うん、ごく普通のJKの反応――




「――って、ちょっと待てぃ!」

「ん~? どうしたのヒサッチ~?」

「どうしたじゃねぇ! お前は一国の君――」

「あ~ダメダメ。今はお忍びだから、カミングアウトはノーセンキューだよ~」

「――っとすまねぇ」


 さすがに君主相手にため口聞いてるのがバレたら袋叩きにされそうだもんな。


「じゃあ撮影の続きっと……」

「だから待てぃ!」

「も~、さっきから何なの~?」

「お前の手に持ってるやつ!」

「あ、コレ? スマホって便利なアイテムだよ~」


 はい出ました、便利なスマホ。現代人に欠かせないアイテムが何故にイグリーシアに存在するんかと。


「それ、どこで手に入れた?」

「ん~~~、知人に貰った~」

「その知人って誰? 凄く偉い人?」

「偉いと言えば偉いかな~。ウッチも色々と助けられたし~、も~頭が上がらな~いって感じ~?」

「おいおい、一国の君主が助けられたって、相当な実力者なんじゃ……」

「実際に強いよ~。ほら、前にアキバで話したでしょ~? 料理を用意してくれてるダンジョンマスター。その子から貰ったんだ~」

「マジか!」


 それ、おもいっきり転移者か転生者やん。スマホなんて用意できるくらいだし、もしかしたらメリーを治療する方法も分かるかもしれねぇ。そうと決まれば!


「折り入って頼みがあるんだが、そのダンジョンマスターに俺を紹介してくれ」

「紹介するの~? 一応は話してみるけど、ダメって言われても怒らないでね~」

「もちろん怒りはしない。だけど、これだけは伝えてくれ。俺と同化したパートナーの悪霊が消滅の危機なんだ。今は(わら)にも(すが)る思いで助かる方法を模索してる。是非協力して欲しいってな」

「分かった~」


 いつもの気の抜けた返事をして宙を眺めるメンヒルミュラー。後に念話を交わしてると分かるのだが、だったらスマホいらねぇじゃんと突っ込んだのは別の話だ。


「ヒサッチ~、了解貰えたよ~」

「マジで!?」

「うん。今日中に迎えが来てくれるらしいよ~。それまでは――」

「姫様~!」


 寛いでて――とでも言いたかったのだろうメンヒルミュラーの台詞を遮り、側近のオッサンがヨタヨタと走ってきた。


「血相変えてどうしたのソッちゃん?」

「大変ですぞ姫様! あのアムドリフェンの奴め、不吉な言葉を残して自害致しました!」

「「自害!?」」


 詳しく聞くと、拘束した後に投獄されたアムドリフェンだったが、突如として狂ったように笑い出したらしい。

 一向に収まる気配がなかったのだが、色んな幹部たちが集まったところでようやく落ち着きを取り戻したはいいものの、次のように発言したのだとか。



『邪神復活を成した今、日没と共にグロスエレムの首都は崩壊する。止めたければエレムの血で洗い流すがいい』



 ――と。


「詳しく問い詰めようとしたのですが生憎と舌を噛み切られてしまい、全容は不明のままで御座います。苦し紛れの戯言であればよいのですが……」


 どうも戯言には聞こえない。アムドリフェンの野郎、自分が支配者に成れないなら滅んでしまえとか言ってたくらいだし、何らかの仕掛けを施しててもおかしくはないな。

 なら一体何を仕掛けたのか。思い付く限りの事を考えていると、急に辺りがざわつき始めた。


「おい、何だあれ?」

「胸の辺りが光ってる――わよね?」

「さっきまで光ってなかったぞ。もしかして生きてるんじゃ……」

「マジかよ! おい衛兵、仕事しろ!」

 

 胸が光ってる!? そんなバカなと振り向けば、確かに胸部が赤く光ってやがる。


「おいおいおいおい、かな~り嫌な予感がしてきたぞ? アムドリフェンの台詞って邪神が絡んでるんじゃないか?」

「どうして~?」

「自分の目で見ただろ? アムドリフェンが邪神を操ってるところを。アイツが死んだことで起動する仕掛けを施されてもおかしくはないぜ」

「え~~~!? マッジ~~~!?」


 マジじゃなければそれでよし。マジだったら厄介だ。


「お~い、ヒサシ~。邪神の野郎が復活しそうってのは本当か?」

「街の人たちが噂してましたが……」

「ああ、ネージュにトラさん。見ろよ邪神の胸部んとこを。もしかしたら暴走や自爆といった可能性があるぜ」

「マジかよ!? そりゃ一大事だ、俺が確かめてやるよ」


 ヒョイ!


 胸部を点滅させながらも直立不動な邪神に足をかけ、軽々と飛び上がっていく。半壊した頭部を開いて中を覗いたトラさんだったが、何故か急に飛び降りてきた。


「ヤベェぜヒサシ! モニターに自爆までのカウントダウンが乗ってやがった!」

「何だって!?」

「カウントゼロまであと500秒しかねぇ。急いで逃げねぇと危ねぇぞ!」


 クソッ、悪い予感が当たっちまった!


「メンヒルミュラー、早くみんなを避難させるんだ!」

「わ、分かった~!」


 衛兵や側近に指示したりと慌ただしく右往左往するが、とても全住民の避難は間に合いそうにない。アムドリフェンの発言を信じるなら、邪神の自爆は首都全土を吹っ飛ばすくらいの威力があるはず。何とか自爆を止める方法は――



「そうだ、霊蔵庫(ソウルガレージ)だ! あれならデカイ邪神でも収納して持ち運べる! メリー、すまんが――」


 そう言いかけて気付く。メリーは気を失って動けないんだった!


「クソクソッ! メリーに頼りきりだった自分を殴ってやりたい! けど今はそんな暇すらおしい!」


 名案が浮かばず俺までパニックになりつつある中、意を決した顔のネージュが邪神をよじ登っていく。


「お、おい、何をする気だ姉ちゃん?」

「ネージュ危険だ、早く離れないと!」

「大丈夫です。たった今止める方法を思い付いたのです」

「ええ!?」

「確かアムドリフェンはこう言ったのですよね? 止めたければエレムの血で洗い流すがいい――と。だったら邪神の自爆は()()()()()()()止められません」

「わたくしにしかって、それはどういう――」


 俺が追及しかけたが、ネージュが返答する間も無く答えが現れた。


 スパッ!


「痛っ! でもこの程度で自爆を止められるなら、このくらい!」


 邪神の頭部に立ちナイフで手首を切りつけると、血がポタポタと滴り落ちる。すると即座に邪神全体が光を帯び、間も無く胸部の光もろとも消え去った。


「ネージュ、お前まさか……」

「隠していてすみません。わたくしは勇者アレクシスとその妻エレムの子孫です」


 そういう事か。エレムの血統だから自爆を止められたんだな。


「何にせよお手柄だ。ありがとうネージュ!」

「おぅよ、姉ちゃんのお陰で多くの命が救われたぜ! だから今度は姉ちゃんを助けねぇとよ。なぁヒサシ?」

「分かってるさ――――よっと」

「え?」

「止血しないとマズイだろ? 貧血で倒れちまうぜ」


 ネージュを抱えて医務室までダッシュ。すぐに医者が手当てをしてくれた。その間にトラさんの方で自爆は防いだ事をメンヒルミュラーに伝えて一件落着。国家転覆を企てたアムドリフェンの野望は完璧に打ち砕いた。


 その後は国を上げての盛大なパーティーが催されたが、トラさんにだけ代表として出てもらい、俺たちはやって来た迎えと共にグロスエレムを出立する事に。

 そう、祝杯よりもメリーを回復させるのが最優先だからな。


「そういう訳で、よろしく頼むよホークさん」

「任せとき。ダンジョンまであっという間やで!」


 迎えに来たのは件のダンマスの眷族(←眷属とは微妙に違うらしい)で、ワイルドホークのホークさんだ。最初は人化してて分からなかったけど、人気の無いところで人化を解いて、いざダンジョンに出発だ。


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