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コギャル姫

 グロスエレム教国の首都カニエビにあるメンヒルミュラーの部屋の前


 数日間メンヒルミュラーが姿を現さないという話が多くの者に知れ渡り、業を煮やした貴族たちがどういう事かと詰めかけた結果、慌てた側近が「すぐに確認致します!」と言い、本人の部屋へとやって来た。



 コンコンコン!


「メンヒルミュラー様~、どこかお身体の具合が悪いのですか? メンヒルミュラー様~!」


 コンコンコン!


「ダメですな。返事はおろか、物音1つ聴こえませぬ」


 メンヒルミュラーの側近を勤める男がお手上げポーズで首を左右に振る。気まぐれで部屋から出てこない事はあっても夜食の際には現れるため、これまでは問題視されてこなかった。

 だが数日かけても出てこないというのはやはり異常で、何かしらの異常が発生してるものと親衛隊隊長のカスティーラも不安顔だ。


「我々親衛隊としても教祖様の安否が心配です。無礼を承知で中を確かめるべきでは?」

「それはなりませぬ。メンヒルミュラー様からは何があっても扉を開けるなと厳命されているのですから」

「そうは言っても急病にかかっていたらどうするおつもりですか。下手をすると取り返しのつかない事になるのですよ!」

「で、ですがいきなり寝室に押し入るというのは……」

「そのために我々親衛隊がいるのです! 我が隊員は私を含め全員が女性。これなら問題はないでしょう!?」

「お、落ち着いてください。まだ病気かどうかも分からぬ有り様では――」


 フン、押し問答をする余裕があるのなら、さっさと中を確かめればよいものを。すでに遠征に出た軍隊が引き返し始めたという情報もあるし、こちらとしても手をこまねいている暇はないのだ。首都占拠の計画を前倒しにするためにも、メンヒルミュラーの所在をはっきりせねばならん。


「失礼。横からですまないが、ここは親衛隊の言う通りに彼女らに中を確認してもらうのが得策ではなかろうか?」

「ですがアムドリフェン侯爵、我々にとってメンヒルミュラー様のお言葉は絶対。開けるなと言われれば従うのみです」

「万が一という可能性もありますぞ? もしも本当にご病気なら……」

「その通り。すぐにでも確認すべきだ!」

「急がねば手遅れになるやもしれんぞ!」


 私の意見に他の貴族たちが同調、押し黙る側近。しばしの沈黙が続いた後、折れたのは側近の方だった。


「わ、分かりました。では親衛隊の方々、中の確認をお願い申します」

「承知した……フン――――くぅぅ!」


 親衛隊の隊長が扉に手をかける。しかし何かで固定されてるのか開く様子はない。ならばと他の隊員と共に押そうとも、軋む音すら聴こえない有り様。

 さすがにおかしいと思ったのだろう側近が、荒々しく声をかけた。


「メンヒルミュラー様、おふざけが過ぎますぞ! 早く開けてくださいませ!」

「ええぃ邪魔だ! こうなったら蹴り破ってくれる!」



 ガンッ!



「いっっった~~~い!」

「だ、大丈夫ですかカスティーラ殿?」

「こ、これはマジックアイテムによる結界だ! ――ふぅ、痛いなぁもぅ……」


 そこまでして開けさせないだと? あの教祖、いったい何を考えている……。

 だが諦めるわけにはいかん。奴の様態を正確に把握しておかなくてはな。こんなところで公に使いたくはなかったが……


「破傷石なら持っている。これを使ってみようか――――ハッ!」



 ガシャン!



 破傷石は魔力的な結界を打ち破る効果がある。これにより結界は剥がれ、強烈な蹴りを食らっていた扉は音を立てて砕けた。


「おお、扉が崩れましたぞ!」

「よぉし、これで中に入れる。メンヒルミュラー様、ご無事ですかーーーっ!? メンヒルミュラーさ――――え、居ないぃぃ!?」


 まの抜けたカスティーラの声が辺りに響く。いや、それよりも!


「教祖様がいないだと!? いったいどういう事だ!」

「私に言われても分からん! 中はもぬけの殻だ!」


 親衛隊を押し退けて中に入るが、やはりどこにも姿はなかった。


「こ、これは一大事ですぞ、早く捜さねば! メンヒルミュラー様~~~!」

「我々も捜すぞ! 何者かに誘拐されたのやも知れん!」

「「「ハッ!」」」


 側近や親衛隊、その他の貴族連中が慌ただしく散っていく。それを尻目に留まると、1人思案し始める。


 メンヒルミュラーが誘拐? それはあり得ん。奴が部屋に籠ってからというもの常に動きを監視していたのだからな。

 つまり、奴は意図的に姿を消したという事だ。これは……



「ま、まさか、我々の計画が露呈したとでもい言うのか?」


 いや待て、結論を急ぐな。完全にバレてるのなら、すでに私は拘束されているはずだ。


「ならば計画に気付きつつも、私が尻尾を出すまで泳がせている?」


 それもない。そこまで頭の回る女なら、周囲に不安を与えるような事はしないはず。


「まったく、敵対している私まで振り回すような真似を――」




 いや、待てよ? 今現在メンヒルミュラーは行方を(くら)ましたままだ。つまり今の首都は主が不在という事になる。

 これを上手く利用すれば、民衆を(かどわ)かしメンヒルミュラーを見限らせる事もできるのではないか?


「クククククク、そうかそうか。つまりは天運、これぞ天命。全ては私の思うがままに動いている。この機に乗じて一気にケリを着けてくれよう!」



★★★★★



 後先考えずに興味本位で事を進めると、後で超絶後悔することになる――というのをリアルタイムで痛感している俺なわけだが、興味本意でハンドルを握るJKがいる事もまた事実であり、どうしたものかと頭を悩ませている今日この頃――



 キキィィィィィィ――――ガツン!



「ごふっ!」

「アッハハハハ! ごめんごめんヒサッチ。やっぱ運転って難しいね~」


 そりゃ無免許のJKには難しいでしょうよ。


「あの……大丈夫ですかヒサシさん?」

「俺は大丈夫だよ。それよりネージュの方は大丈夫だったか?」

「はい。このチャイルドシート? という装置のお陰で何ともないです」

「そりゃ良かった」


 実はトラさんの不思議変化により、運転席と助手席の間にもう1つの座席がプラスされたんだ。その分車体も横に広がってるが、異世界を走るのなら全く問題はない。

 「ところでチャイルドシートってなんですか?」というネージュからの質問には「小柄な女の子を守る装置」とだけ言っといた。


「やっぱ姉ちゃんには早かったな。まぁ運転は俺に任せな!」

「マジ~? トラさんって男前だし男萌え~」


 どっちかっつ~と、男燃えだがな。


『んお? 下の団体様がトボトボと歩いてやがるぜ。どっかの商隊か?』

「どれどれ――お、本当だ。平原から山道に入ってくところだな。つ~かみんな表情が暗くないか? それに商隊っていうより複数の家族連れに見えるが」


 少なくとも30世帯以上がぞろぞろと歩いている。そこへ荷台のメリーから激が飛ぶ。


「ウケケケケ♪ 獲物がうじゃうじゃいるじゃない。トラ、下の連中に向かって突撃よ。全員惹き殺しちゃいなさい!」

「「しね~よ!」」


 メリーの意見はともかくやはり気になるってことで、トラさんに近くまで寄せてもらうことにした。

 軽トラを見た人たちは最初こそ遠巻きに怖がっていたが、乗っていたのが幼女ばかりだったことに安心したのか、1人の青年が駆け寄ってくる。


「見たことのない馬車に乗ってるけれど、アンタらは旅の人かい?」

「旅人っつ~か冒険者な」

「そうだったのかい。だけどこの先にあるナスタールの街に行くつもりならやめときな。あの街は今グロウス教徒に占拠されちまってるからな」

「グロウス教徒に!?」


 聞けば二日前の夜中に多くのグロウス教徒が乗り込んで来てしばらく交戦が続いたらしいが、奴らの中には魔物を手懐けている者も居たらしく、抵抗虚しく街を乗っ取られてしまったようだ。


「早朝になって領主が処刑されちまったし、もうあの街は終わりさ……」

「終わりさ――って、これからどうするつもりだ?」

「近隣の街を頼ろうかと思ってる。キミたち、よかったら護衛を頼めないだろうか? あまり多くの報酬は出せないが……」


 放って置けないのは確かだが、グロウス教徒ってそんなに強かったっけ? っていうのが正直な感想で、メリーたちも同様の反応を見せる。


「あのグロウス教徒が強いわけないでしょ」

「そうだそうだ~。二日前に戦ったけど、全然強くなかったぞ~」

「強くないなんてトンでもない! 奴らのまとめ役をしている男は高ランクの魔物を多数抱えてやがるんだ。そんなの勇者クラスか軍隊じゃなければ勝てっこない!」


 そう言われると、逆に燃えるのがメリーたちというもので……


「多数の魔物ですって? 上等じゃない。私の恐ろしさを思い知らせてやるわ!」

「一人占めはダメだぞメリー!」

「レン、貴女も……です」

「ウチは肉さえ貰えればええんどす」


 はい。ヤル気満々な幼女たちが通りますよっと。


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