サンドマスター
「お、おい、コイツら生きてやがるぜ?」
「あの爆発で生きてやがるとは……」
「構うこたぁねぇ、一気にやっちまえ!」
外に出ると案の定傭兵たちが待ち構えており、俺たちを見るなり襲いかかってきた。それを待ってましたとばかりに血気盛んな二人と一匹が迎え撃つ。
「アハッ♪ み~んなまとめてガルストームスラッシュ!」
「バーストハリケーン」
「ガルルルルル――バウッ!」
「張り切るのはいいけどリーダーは殺すなよ。色々と聞きたいことがあるからな」
――って聞いちゃいねぇな……。
おまけに返り討ちにあった傭兵側は圧倒的な力量差に怯み、徐々に後退し始めてるし。
「ヤベェぞコイツら、全く歯が立たねぇ!」
「もう10人以上やられちまったぞ!?」
「いや、20人以上だ、早く頭に報告を!」
五体満足の仲間が減り、横たわる仲間が増えていく傭兵たち。
けど俺たちは手を抜くつもりはない。不意打ちを仕掛けて来たのはあっちだし、誰に挑んだのかその身で思い知ってもらわなきゃな。
「頭の命令だ、一旦退けぇぇぇ!」
どうやら負傷した仲間を見捨てて逃げる気らしい。しかも冒険者ギルドに投げ込んできた例の爆弾まで放ってきやがった。
「ミスターヒサシ、ユラの近くへ」
ドドォォン、ドドドォォォン!
「すまん、助かったぜ」
「いえ。ちなみに足元は見ない方が精神衛生上よろしいかと」
「え――うげっ!?」
反射的に足元に視線を落として後悔した。下半身を失くした男が貞子のように這いずっていたからだ。
「だ、だずげで……」
「仲間もろともとかホントに容赦ない連中だな。せめて苦しまないようにしてやる」
ザスッ!
「ゲェ!」
「化けて出るなよ? 出るならメリーの許可を取ってからにしてくれ」
足元の男にトドメを刺し、逃げる傭兵たちを追いかける。だが数が多すぎて倒せど倒せど団長らしき人物の元までたどり着けず、挙げ句に街の外に出てまで追いかける羽目に。
「くっそ~、コイツらどこまで逃げるんだよ~!」
「逃げ切れるまでだろ」
「いえ、それは無さそうです。たった今立ち止まりました」
「何だって?」
見れば逃げていた連中が振り返り、俺たちが来るのを待っているかのようだ。
「なんだ、ついに観念したの――」
ズズズズズザァァァァァァ!
「ぬぁ!? な、なんだこれ、蟻地獄か!」
「バウゥゥ!?」
「足元が崩れるぞ~!」
砂漠の砂が音を立てて地面に吸い込まれ始めた。足を取られた俺たちは、そのまま砂の中へと埋まっていく。
そこへ団長らしきヒョロガリな男が現れ、俺たちを見下しながら言った。
「ケッケケケケ! バカな奴らめ、まんまと罠にかかったな? わざと逃げてみせれば野生動物みたいに追って来るとはな」
「誘い込まれたってのか」
「そういうことさ。ま、仲間を犠牲にしちまったが結果オーライ。俺様の策に敵う奴らなんざこの世に――」
――ザッッッバァァァァァァン!
「――い……な……い?」
「いいえ。ここに居ります」
「アハッ♪ あんなんじゃ罠の内に入んないぞ~」
「バウ!」
「伊達にレベル100を超えてねぇしな」
三人と一匹が沈み行く砂地から同時に脱出。ヒョロガリ男は口をパクパクしながら後退し始める。そして……
「た、たたた、退却~~~!」
「「「ひぇ~~~!」」」
恐らくは最後の手段だったであろう罠が空振りに終わり、傭兵たちは回れ右。今度こそ死に物狂いでの逃走を開始した。
「な、何なんだよアイツら、あんなバケモノみたいな連中が居るなんて聞いてねぇぞ!」
「け、けどお頭ぁ、今は逃げなきゃ殺されちまいやすぜ!」
「わ~ってるよそんくらい! このままじゃ追い付かれちまうんだから、さっさと爆弾を放りやがれ!」
「さっきので全部でさぁ!」
「バッキャロゥ! だったらどうすんだよ、諦めて戦えってか!?」
「その通り。貴様らは死ぬまで戦うのだ」
「んな無茶な――って誰だテメェら!?」
逃走中の傭兵団の前に黒ずくめの男たちが立ち塞がる。
「お頭ぁ、こんな連中に構ってる隙は――」
ザシュ!
「ゲハァ!」
「言ったはずだ。貴様らは死ぬまで戦うのだと。死にたくなければおとなしく戦うのだな」
「ど、どっちにしろ死ぬじゃねぇかよぉぉぉぉぉぉ!」
仲間が殺され、自棄になりながら引き返してきた傭兵たち。そこへ俺たちが到着し、全力でぶつかり合う――が、結果は最初から見えており、ウルに食い殺される者、レンに斬り倒される者、ユラに殴り飛ばされる者とが入り乱れ、たちまち傭兵の数が減っていく。
やがて団長と数名を残すだけとなり……
「た、頼む、ここは見逃してくれ! こうする他なかったんだ!」
「お前らが爆死を狙った冒険者ギルドにはヴァリアンも居たんだけどな。躊躇せずに実行するあたり、お前らには良心ってもんが無さすぎる。今この場で――」
「ミスターヒサシ、地中から敵対反応」
「何っ!?」
ザバァァァァァァン!
「シュゥゥゥゥゥゥ!」
慌てて飛び退いた俺たちの足元から巨大なヘビが出現した。
「ひ、ひぃぃぃ! ビッグサンドワームじゃねぇか! 滅多に人前に出てこないコイツがどうして――ウギァア!」
「シュゴォォォォォォン!」
ヘビだと思った魔物は巨大な虫だったらしく、団長と以下傭兵たちはビッグサンドワームとかいう魔物に飲み込まれてしまった。
「メモリーによると、この魔物はランクBに指定されており、キャラバン等が襲われた場合はほぼ助からないと言われてるほどです」
「だが滅多に姿を現さないとか言ってなかったか?」
「仰る通りで、こちらから攻撃を仕掛けない限りは滅多に襲ってはきません。何者かが刺激して起こしたとしか……」
「ほぉ、感のいい小娘だ。ビッグサンドワームは我々が起こしてやったのだよ」
「誰だお前ら――って……」
見上げた俺はウンザリした。ロームステルのオッサンに続き、どこぞの帝国の工作員たちまで俺らを追ってきたらしい。
「レボル、お前らかよ……」
「今度こそ借りは返させてもらおう。そのためにコイツを誘導してきたのだからな」
「へっ、こういうのを他力本願って言うんだぜ? ユラ、ビッグサンドワームの相手を頼む。今のユラなら余裕だろ?」
「もちろん……です。たかが砂虫に遅れはとりません」
ダッ!
軽やかに駆け出したユラがビッグサンドワームに殴りかかっていく。的が小さいユラ相手に巨大砂虫は狙いが定められない。倒せるのは時間の問題だろう。
「レンとウルはレボルたちを!」
「おっけ~!」
「バウッ!」
生憎とこっちも戦力は増大してるんだ。魔物が加わった程度で覆ったりはしない。
「ガルルルルル――グワッ!」
「ぐあっ! き、気を付けろレボル、この狼はAランクのサバイバーウルフだ!」
「何だと!?」
「今頃気付いても襲いぜ! ウル、一気にやっちまえ!」
「バウ!」
さて、ウルだけに任せてはいられないな。前とは一味違う俺の実力を見せてやろうじゃないか。
「レン、俺の手に」
「ほいさ~!」
魔剣アゴレントに戻ったレンを握りしめ、レボルに斬りかかる。
「いくぜレボル!」
バキィン!
「くっ、以前よりも力が!?」
「いつまでも同じじゃないぜ? オラオラァ!」
力任せにアゴレントを振るう度にレボルの破損が大きくなり、至るところの金属が剥き出しになっていく。レボルはオートマタで心臓を狙っても意味がなく、全身が動かなくなるまで叩き壊すしかない。
「これでトドメだぁぁぁ!」
ボキッ!
「ぐおっ!」
ついにレボルの首がへし折れ、全身の動きが止まった。
そうか、頭部を破壊すりゃ良いんだったか。
「あばよレボル。二度と俺の前に現れるんじゃねぇぞ!」
グシャ!
頭部を踏み潰して完全勝利。ウルも他の工作員を倒し終えていた。
「ようやく終わり……ましたか。こちらはとっくに丸焼きにして……ますよ」
「巨大虫の丸焼きか。街にでも売り付けてやれ」
ユラの方もビッグサンドワームを丸焼きにしていた。これにて一件落着だな。
★★★★★
その頃のメリーちゃん。
「ひぃぃぃ! も、もう許して……」
「イヒヒヒヒ♪ まだまだ夜は長いわよ~?」
楽しい拷問タイムが続いていた。




