へビィメタルな邪神
復活した邪神によって瞬殺されたオッサン将軍。それを目の当たりにしたカヤロー以下兵士たちは再び言葉を失い、呆然とした顔で邪神を見上げる。
一方の俺とユラは注意深く邪神を観察し、対処法を探りに出た。
「ユラ、コイツの分析はできるか?」
「ちょうど分析が完了したところです。ランク的にはSランクに相当。表面はイグリーシアには存在しない硬い素材に覆われており、物理防御は極めて優秀。右腕に搭載されたキャノン砲は、最大半径2、300メートルにまで影響を及ぼす可能性があり――」
かなりの広範囲じゃないかそれ!?
「左腕に搭載された機銃砲は、人の群を容易く散らすほどの銃弾を無限に撃ちだし――」
弾切れは期待できないってか?
「加えて膝と肩に搭載されたミサイルポッドからは30発以上のホーミングミサイルが同時発射可能であり――」
避け切れる自信がない!
「更に頭部のレーザーに触れると分子分解を起こす恐れがあり、極めて危険な存在と言える……でしょう」
それ無理。もう無理。メリーが憑依してなきゃ絶対終わるやん。もはや邪神というより破壊神だろ……。
「先の守護神はCランク……であり、アレとは比較にならないほど危険……です。動力源は胴体中央部にある……もよう。完全に復活する前に破壊すべき……でしょう」
「これで完全体じゃないってのかよ!」
そんものが地上に出たら大惨事だ。絶対にここで破壊しとかないと。
「ゴチャゴチャトウルサイヤツラメ。オマエラモケシズミニシテヤロウ」
「やべっ!?」
腕をこっちに向けてきたんで、ユラを抱えておもいっきり横っ跳びした。
シュ――ドゴォォォォォォン!
直後に放たれる砲撃により、凄まじい爆炎が辺りに広がる。俺とユラは逃れたが……
「うわぁぁぁぁぁぁ! 燃える、燃えるぅぅぅぅぅぅ!」
「おおおおお助けぇぇぇぇぇぇ!」
数名の兵士が巻き添えを食らい、炎に飲まれて火ダルマになる。
さすがに命の危険を感じたのか、カヤロー以下兵士たちはミイラの群れに退却というなの突撃を始めた。
「そ、総員退却ーーーっ!」
「「「うひゃぁぁぁぁぁぁ!」」」
だがそれを見逃すほどお人好しな邪神ではなかったらしく……
「ゼンザニシテハモノタリヌガ、カタナラシニハチョウドヨイ。マトメテキエルガヨイ」
シュ――ドゴォォォォォォン!
カヤローたちは声を上げる間も無くオッサン将軍の後を追うように消し飛んだ。あれだけ喧しかったミイラの呻き声も殆ど聞こえない。今の一撃でこのフロアにいた殆どのミイラが消し飛んだってのか。
「さっきより威力が上がってやがる……」
「影響範囲を見る限りはまだ本調子ではない――もしくは、敢えて手加減したというところ……でしょうか」
天井と地面が大きく抉れているのが燃えカスに照らされてハッキリと見える。手加減してこれならマジでヤバい!
「一気に仕留めるぞ。ユラ、バックアップを頼む」
「了解。奴の気を引きますので、ミスターヒサシはその隙に」
「ああ。シンプルで良いと思うぜ!」
ダッ!
「そこの邪神。何を勝ち誇っているのか分かりませんが、雑魚を蹴散らした程度で威張られては困ります」
「フン。コムスメガナマイキナコトヲイウ」
「ユラが生意気? そのような発言は後ろにいるミスターヒサシを倒してからにしてください」
「「何ぃ(ナニィ)!?」」
ユラのやつ、いきなりバラしやがった! つ~か挑発されてどうする! こうなりゃしゃ~ねぇ。
「作戦変更、真っ正面からブッ叩く!」
「バカメ、ジュウサツシテクレル!」
ズダダダダダダダ!
左腕から放たれる無数の銃弾。射線に乗らないよう大きく飛び上がり、なんとか銃撃を回避した。
「っと危ねぇ、迂闊に近寄ったらハチの巣だ!」
『何怯んでんのよ。物理不通があるんだから、気にせず突っ込みなさい』
そういやそうだったな。今なら銃弾の雨に突っ込めるだ。
「――な~んてな、行っくぜぇぇぇ!」
「オロカナ、クウチュウデハカイヒデキマイ」
ズダダダダダダダ!
飛び上がった勢いそのままに魔剣アゴレントを振り下ろす。邪神の銃弾は俺をすり抜け、天井へと着弾していく。
「バカナ、ジュウダンガキカナイダト!?」
「そうさ、バカはテメェだ!」
バギィィィ!
「グガッ! キタイニ――キレツガ!?」
叩き割ったつもりだが、辛うじてヒビが入った程度に終わる。ならばと連撃を仕掛けようとしたところで、邪神の背後からユラが迫った。
「亀裂さえ入ればこっちのもの。中は表面よりも遥かに脆い」
ガシッ!
「グッ……オノレコムスメェ!」
「これで終わり――ヘビィウェルダン」
「グガガガガガァ!? マズイ、ジュツシキガコワサレル!」
邪神の頭部にユラが張り付き、両手から激しい炎を噴射した。かなりの高熱だったらしく白かった頭部が黒焦げとなり、焦った邪神が暴れだす。飛び退いたユラが華麗に着地すると、俺に向けてサムズアップをしてきた。
「作戦成功……ですね」
「どこがだよ!」
「ミスターヒサシが囮になったの……ですよね?」
「ちげぇよ、俺が真打ちだ! それにまだ終わっちゃいないんだから気を抜くな」
「了解です」
かなりのダメージを与えたはずだが動きを止める気配はない。やっぱり胴体にある動力源を狙うべきか。
「よし、今度は腹に大穴開けてやる!」
「クッ、チョウシニノルナァ!」
ドドドドドドドド!
「おおっと、今度はミサイルか? あいにくだが効かねぇ――ってコイツ、なんで天井を?」
「クハハハ! ドウセキサマニハキカントオモッテナ、アラタナエネルギーヲチョウタツシヨウトオモッタノダヨ」
「新たなエネルギー?」
「フン!」
「あ、待ちやがれ!」
天井に大穴を開けた邪神が空高く舞い上がっていく。俺とユラも後を追うと、ピラミッドから出た邪神がある方角を見て意味深な事をほざいてきた。
「クククク。ミツケタゾ、ワガキタイヲサラナルタカミヘトミチビクエネルギーヲ!」
「更なる高みだと? いったい何を――」
『あーーーっ! コイツ、回復の泉の方角を見てるぞ~!』
「あっ!」
レンに言われて気付いた。あの山奥にあった泉は邪神をも回復させちまうってのか。
「クッソォ、そっちには行かせねぇぞ!」
「ククク、ソレハコマッタ。ナラバジカンヲカセガセテモラオウカ!」
ドドドドドドドドドドドドドドドド!
「テメェ、またミサイルを!」
「クハハハ! シタニイルセイメイタイハ、アト1フンデバクシスル。ミステテモヨイナラオッテクルガイイ。サラバダ!」
ザッ!
こっちを嘲笑うような台詞を残し、邪神泉の方へと高速飛行していく。
「ミスターヒサシ、残り50秒を切りました」
「分かってる。すべて撃ち落とすぞ!」
「了解」
空高く打ち出されたミサイルが地上へと急降下してくる。その数ざっと100発はありそうだ。
「バーストハリケーン。フルパワーで放出」
「俺も行くぜぇ!」
『いったれヒサシ~! 技の名前はガルストームスラッシュだぞ~!』
「おっけぃ――ガルストームスラッシュ!」
ユラが広範囲でミサイルを巻き上げ、俺が手当たり次第に落としていった。魔剣の衝撃範囲も相当なもので、ひと振りで5、6発は落とせている。
「残り30秒。まだ半数は残っています」
「ああ、もう一度さっきのを頼む」
「了解。バーストハリケーン」
『アンタも働きなさいよヒサシ』
「分かってるつ~の! ガルストームスラ~~~ッシュ!」
同じ動作で九割は撃ち落とせた。――が、撃ち漏らしが数発残っている。
「残り10秒。5発のミサイルが地表に降下中です」
「もうひと踏ん張りだ。行くぜぇ!」
ドゴン!
「1つ!」
ドガン!
「2つ!」
バァン!
「みぃ~~~っつ!」
「残り5秒」
「くっそぉぉぉぉぉぉ!」
ダァン!
「よし、あと1つは――――そこか!」
「残り1秒」
「ヤバい、間に合わない!」
下には呆然と見上げるマルセルたちがいて、そこへ一直線に突っ込むミサイルが!
俺の不注意ですまねぇ! 心の中でそう叫び思わず顔を背ける。
だが俺もマルセルも幸運だった。予想外の奴がこの場に居たんだ。
「フッ、新奥義――燕返しぃ!」
スパァン――
――チュドォォォン!
「い、今の技は!?」
地上から10メートルは離れてたミサイルを斬り落とした!? いったい誰がと目を凝らせば、そこには見知った人物が。
「ようヒサシ。腹ごなしのついでに駆けつけてやったぜ!」
「タケゾウ!」
間一髪のところをタケゾウによって救われる形となった。




