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悪霊少女が行く! 俺の相棒は最強最悪の悪霊ちゃん  作者: 北のシロクマ
スペール王国及びタイアー共和国編
41/88

開封の試練

 傭兵団を壊滅させ次の階層へと進んだ俺たちの前に、鉄製の頑丈そうな扉が現れた。

 周囲にはそれ以外に何もないし、ここを通る他ないようだ。


「カヤローの奴らもこの先に進んだはず。硬そうだが強引に開ければ――」


 渾身の力を振り絞り押し広げようとするも、扉は硬く閉ざされたまま。


「――くくぅぅぅぅッハァハァ! ふぅ~ダメだぁ、うんともすんとも言わねぇ。どうやったら開くんだこれ……」

『押すんじゃなくて引くんじゃないの?』

「そうか! ――って掴むところが無いし、絶対違うと思うんだが」

『じゃあスライド式じゃない?』

「ならば右――――ダメ、左――――もダメ、やっぱ開かねぇ!」


 ユラが入ってた棺の件もあるし、これも謎解きなのか。どこかにヒントは……


「ミスターヒサシ。スキャンの結果、この扉は中央からのスライドによる両開きであることが判明……しました」

「マジかよ……」


 試行錯誤の末、ユラから答えをいただいてしまった。


「ですが普通に開けるよりも……」



 ドゴォ!



「破壊した方が早い……です」

「…………」


 さっきまでの苦労は何だったんだというくらいに、あっさりと扉が破壊された。


『アンタよりユラの方が有能じゃない。恥ずかしい奴ね』

『ぜって~ヒサシの方がポンコツだよな~』

「ほっとけ!」


 だがお陰で先に進めるな。扉の先は――



「――え? なんだこの空洞は……」


 扉の先はすぐに行き止まりで、代わりに真下へと垂直に伸びた空洞が現れた。


「あの貴族たち、まさかここから飛び降りたのか?」

「ここから下まで約50メートル。この高さで飛び降りた場合は良くても重傷、下手をすると即死……です」

「なら飛び降りた可能性は無しだな。だとすると――ん?」



 空洞の下からウィーンって感じの機械音が聴こえてきたぞ? その音は徐々に大きくなってくる。何かが上がって来ようとしてるのか?


 構えた俺だったが、それは杞憂に終わる。上がってきたのは……



 チーーーン!



『6階に到着です』

「エレベーターかよ! 紛らわしいことしやがって」


 だがカヤローの奴らもこれに乗ったんだと思い、俺とユラも乗り込んでみた。

 すると間も無く。先ほどと同じ機械音を発して、ゆっくりと下降し始める。


「あそこから50メートルくらいってことは地下まで降りるのか。上がったり降りたりとややこしい作りだなぁ」

「内蔵されたメモリーに……よりますと、地中深くに沈めることで外部と邪神が接触するのを防いだと……あります。更にピラミッドの上部に誘導することで侵入者を撹乱、上までたどり着いた者には最終試練が課せられ……ます」

「最終試練?」

「邪神を倒せる者だけが封印を解ける――それが前マスターのお言葉……です」


 不穏なワードが出てきたぞ。つまり邪神を倒す前にも何かあるってことだ。



 チーーーン!



『地下3階に到着です』

「…………」


 開いた扉の先を見てゾクリとする。



 ォォォォォォ……



「だだっ広い空間に光源が一切なし――か。しかも不気味なうめき声まで聴こえるし、すでに無数のアンデッドに囲まれてると思ってよさそうだな」

「それだけではありま……せん。光源を頼りにアンデッド達が集まって……きてます。松明を消さない限り追い回される……でしょう」


 きっとカヤローたちは死に物狂いで駆け抜けたに違いない。


「アイツらがどっちに向かったか分かるか?」

「遥か前方に微かな光源が見られ……ます。走ればすぐに追い付ける……でしょう。ユラとしてもさっさと駆け抜けるのが――」



「オオオオ!」



 グシャ!



「――理想です」


 背後から迫っていたミイラに裏拳をかまし、見事に頭部を砕くユラ。正直アンデッドより無表情なユラの方が怖くなってきたが、絶対に口には出さないでおく。


『イヒヒヒヒ♪ ヒサシはユラが怖いんだって~! や~い臆病者~!』

「ダァァァ! 余計なこと言うな!」

「ショックです。このような可愛げの有る女の子が怖いだなんて」

「お前も無表情で言わない! つ~か全然悲しんでないだろ!」

「当たり前です。ユラが可愛いからって意地悪しないでください」

「あ、はい……」


 実はユラも自己主張が強いタイプなのか。そして何となく分かってきたのが、語尾のですますがキチンと続いている時は感情的になってるサインだ。

 なによりコイツ、本当にゴーレムなのかという疑問が浮かんでくる。背中にファスナーとか付いてないだろうな?


「背中に不可思議な視線を感じます。変態行為はご自重ください」

「ご、誤解だから! 何もしてないから!」

「心拍数の上昇を確認。嘘はよくありませんよ?」

「だから違うっての!」

『ヒサシ。前々から思ってたけど、アンタってやっぱり……』

『アハッ♪ ロリコンかっくて~い!』


 あ~もぅ、魔物なんぞよりコイツらの方がよっぽど厄介だ!



 オオオオオオ……



「ったく、騒いでたらワラワラと集まってきたじゃねぇか。走るぞユラ」

「了解」


 邪魔なアンデッドのみを蹴散らしつつカヤロー達を追いかける。少し走ると明かりが見えてきて、やがて剣と剣がぶつかり合う音も聴こえてきた。


「ミスターヒサシ、あの貴族たちは守護神と戦ってる……ようです」

「それも前のマスターが(こしら)えた試練ってやつか?」

「はい。守護神すら倒せない者が邪神とは戦えまい――という前マスターのお言葉……です」

「その守護神ってのが()()か」


 貴族達の松明が守護神のご本尊を照らしている。割と大きめなソレは、ツタンカーメンのような頭部をした全長4、5メートルのゴーレムのようだ。



「侵入者ヲ……駆逐、侵入者ヲ……駆逐」

「ダ、ダメだ、剣が折れちまった!」

「うわぁ、アーマーに穴がぁぁぁ!」

「ええぃ、なぜ逃げ腰になっている? さっさとこのデカブツを倒さないか!」

「ですがゴーレムの物理耐性は強固であり、我々の武器では有効打を与えられません!」


 にわか知識だと、ゴーレムって魔法は有効だが物理攻撃が通りにくいんだったよな。どうやらここでも同じらしい。


「ええぃ、使えん奴らめ……。ならばザケンナ将軍、貴殿が頼りだ!」

「承知つかまつったぁぁぁ!」


 ガタイの良いオッサン将軍がゴーレムに斬りかかる――が、やはり力では敵わないらしく、グイグイと押し戻されていく。


「出力……70パーセント」

「ぬぉぉぉぉぉぉ、ワシを相手に七割しか出さんと申すか!?」

「7割デ……充分。現ニ問題ナク……対処デキテイル」

「ぐぬぬぬぅ……」

「どうした将軍! 貴殿の力はその程度ではあるまい!?」

「ぬわぁ!」

「将軍!?」


 ドン!


 とうとう力勝負に負け、壁に叩きつけられていた。



「守護神は魔物でいうとCランクのゴーレム……です。ベテラン冒険者でも入念な準備を行わなければ勝てない……でしょう」

「ったくしゃ~ない。まずは邪魔なゴーレムを倒すか」


 残りの兵士を薙ぎ倒しにかかるゴーレムだが、やつの動きは鈍い。俺は颯爽(さっそう)と駆けつけるとゴーレムの頭上まで飛び上がり……


「オラァ、脳天直撃斬!」



 ドゴォォォ!



 さすがは魔剣アゴレント。ゴーレムの頭部を陥没させただけじゃなく、胴体までブッた斬ってやったぜ!


「制御不能、制御不能、戦闘継続ノ不可ヲ確認。機能……停止……シマ……ス……ゥ……」


 ガシャーーーン!


 最後は横倒しになり、動かなくなった。


「フッ、決まったな」

『脳天直撃斬とか言うダサい技を言わなければね』

『これ、技の名前はボクが考えた方が良さそうだな~』


 ――等と難癖を付けられており、俺としては非常に不満である。


「ミスターヒサシ。今は彼らへの対処を優先すべき……かと」

「おっと、そうだったな」


 一撃で守護神を破壊したら、カヤローたちが言葉を失っちまったからな。


「お~い、カヤロー生きてるか~? もしも~し!」

「……おおお、おま、おま、おま、お前はさっきの冒険者。どどどどどうやってここまで? 戦場の棺はどうした!?」

「戦場の棺なぁ。ついさっき解散したぞ? リーダーが消えちまったからな」

「き、消えただと? おのれぇ、傭兵風情が勝手に逃げ出しおってからにぃ!」


 逃げてはいないんだがな。それより後ろからアンデッドが来てるし、おとなしく捕まってくれればいいんだが。


「――で、どうするオッサンたち。この状況でもまだ戦うつもりか?」

「と、とんでもない! もはや邪神復活は絶望的とあらば、恥を忍んで降参を――」



 ゴゴゴゴゴ……



「な、なんだこの揺れは?」

「この反応…………いけません、邪神が復活しようとしています」

「なにぃぃぃ!?」


 ユラが守護神を指して警告してくる。いや、正確には奥にある巨大な扉を指していて、上部の赤いランプが激しく点滅しているのが見える。


「あの扉の奥に邪神が? けど復活させた覚えはないぞ?」

「恐らくは守護神が打倒されるとフラグが立つように設定されてたと思われます」

「なんてこった!」


 これじゃあ俺が復活させたようなものだ。マルセルに何て言えばいいんだよ……。



 ……ン、……ャン、……シャン、ガシャン、ガシャン!



「こ、この音はまさか……」

「大変です、邪神の始動を感知しました。扉のすぐ向こう側です」



 ドガァァァン!



 言ってる間に扉が破壊され、ついに邪神が俺たちの前に姿を現す。


「テカッテカな白銀のボディで守護神より一回り大きいってか? しかも両腕の先に砲口と来やがった。もう兵器にしか見えねぇ」


 ファンタスティックな世界に不釣り合いな機械兵か。そりゃ邪神扱いされるはずだよ。


「おお、これがかつてイグリーシアに現れた侵略者か。何という神々しい輝き!」

「よぉし! ここは一つ、ワシが直々に交渉してやろうではないか」


 またまたオッサン将軍がしゃしゃり出てくると、何の警戒もなく邪神へと近付いていく。

 残り4、5メートルほどといった場所に止まると、威勢よく声を張り上げた。


「聞け~ぃ邪神よ! ワシはタイアー共和国にてその人ありと陰で(ささや)かれているザケンナ将軍であ~る! おとなしく我が軍門に下り、その腕を振るいに振るうとよい!」


 誰が聞いても血迷ったとしか思えない内容だ。邪神と言われるほどのやつがおとなしく従うはずがない。


『なぁ、あのオッサン馬鹿じゃないか? それとも勇気が有りすぎるのか?』

『どっちも合ってると思うわよ。馬鹿の比重が大きいけれど』


 という二人の評価とは裏腹に、ザケンナ将軍に頭を垂れる邪神。いやいや、どうしてそうなる、と思ったその瞬間!



「……ツマラヌ。キエロ」



 ジュゥゥゥゥゥゥ!



 オッサン将軍がいた場所に頭部のレーザーが照射され、跡形もなく消滅させた。


「……ヒサビサノシャバハズイブントホコリッポイ。イッタイドノクライネムッテイタノカ」


 上手く聞き取れないが、復活したぜヒャッハーって感じか?


「マァイイダロウ。ホカニモザコガイルヨウダシ、カル~クカタナラシトイクカ」


 どうやら戦闘は避けられないらしい。


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