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拷問はさいこ~ぅ!

「全員縛り終わったわね?」

「ああ。手先だけは器用だからな。縛るくらいなら任せとけ」

「上出来ね。じゃあお楽しみのメインディッシュに行くわよ~♪」

「「「ヒッ!?」」」


 拘束した盗賊たちを一ヶ所に固めると、不適な笑み浮かべたメリーが舌舐めずりをする。

 俺が一人一人拘束する間、如何にメリーが恐ろしいのかを盗賊たちは理解した。

 そりゃな。皮を剥いだり目をくり貫いたり楽しみよね~♪ とか物騒なことしか言わないんだから、普通の少女だと認識するのは無理があるよな。


「そういやメリー、コイツら急に動きを止めたよな? あれってやっぱり金縛りか?」

「ん~~近いと言えば近いけど、さっきのは別ものよ」

「違うのか」

「そうね。だって金縛りだと目は動かせるし、首だって多少は動くもの。さっきのあれは怨霊に力を分け与えてやったのよ。コイツら相当恨みを買ってたみたいだから、怨霊に頼んで押さえつけてもらってたってわけ。辛うじて動いてる奴は恨みが少なくて、拘束しきれなかったのよ」


 そういうことか。恨みは買うもんじゃねぇな。


「さ~てと、誰からにする~? 拷問なんか怖くないっていう奴はいないかな~?」

「「「ヒィィィ!」」」


 断言するが、そんな奴はいない。


「しょうがないわね。じゃあ目が合ったアンタにするわ。いいわよね~?」

「ヒッ!?」


 選んだ捕虜の顔をメリーが覗き込む。月夜に照らされる狂気を含んだ顔は、死ぬまで脳裏から離れないだろうなぁ。


「一番メリー、歌いま~す! あおぞ~ら~斬り裂いて~♪」



 ザシュ!!!



「んぎゃあ"ーーーっ!」


「白い雲を貫いて~♪」



 ドチュッ!



「グェ……」


「あ、気絶した。な~によも~ぅ、こんなに早く終わったら楽しくなんかないじゃない」


 鉈で背中を斬り付けただけならまだしも、胴体貫いたらアカンべ。もう助かんないだろうし、気絶してるうちに死ねるならまだマシかもな。


「じゃあ次の生け贄はアンタが選んで」

「俺がか?」

「そうよ。ほ~ら盗賊たち、選ばれたくなかったら(ひさし)にゴマすりなさい。イッヒッヒッヒッヒッ!」


 メリーがそんなこと言うもんだから、みんな必死こいてアピールを始める。


「頼むよ旦那、助けてくれ! そうしたら一生神として崇めるぜ!」

「アンタ男前じゃねぇか、街でも入れ食い状態だろ? いやぁ羨ましいぜ!」

「いよっ、アンタが大将! できる男は違うねぇ!」


 むさいオッサン共が何言ってんだろうな。これが美少女だったら嬉しいってもんだが、正直吐き気しかしない。

 そう思うと不思議と殺意が湧いてきた。全員選んでやりたいが、一人となると……よし、無言でウィンクを決めてきたコイツにしよう。


「お前だよお前、気色悪いお前!」

「……!?」ビクッ!

「は~い、一名様ご案な~い♪」

「い、嫌だ、やめてくれぇぇぇ!」


 そしてまた拷問が始まる。


「今度は体力しだいで助かる仕組みにするわ。松明を地面に置いてっと…………はい、そこで背筋してなさい」

「ヒィィィ!」


 地面に埋めた松明の上で海老反り状態にされた男。少しでも体勢を崩せば火炙りになるって仕組みだ。

 いやもう、諦めて楽になった方がいいんじゃないか?


「ウケケケケ! いい眺めじゃない。じゃあこの調子で――――はい、次はアンタね」

「ヒッ!?」

「アンタには椅子になってもらうわ。但し……」


 ゴト……


 ツルハシの尖った部分を上下にして設置し、それを男の腹にあてると……


「痛みを伴うけどね~!」

「グウェェェェェェ!」


 躊躇(ちゅうちょ)せず男の上に腰を下ろし、ツルハシの先端が食い込んでいく。いやもう鬼畜すぎて見てらんない……。


「グェ……」

「チッ、もう気絶しちゃうとかやる気あんの? 日頃からもっと鍛えときなさいよ」


 これに耐えられるやつなら盗賊なんてやってないんじゃないかなぁと。しかも本人にヤル気は無かったという。救われねぇなおい。


「じゃあ次の生け贄は……」

「ま、待ってくれ! 俺たちだって好きでこんなことしてたんじゃねぇ!」


 メリーの非道っぷりを見て盗賊の頭が叫びだした。


「な~に? 今さら罪の告白~? 別にアンタらの罪状を聞いたところで――」

「まぁそう言わずに聞いてくれ。俺たちだって最初は反対してたんだ、村を襲ったら商人や旅人が寄り付かなくなるからよ」

「じゃあなんで襲ったのよ?」

「それなんだが――」



★★★★★



「――って感じでな、やけに報酬がウマウマだったって訳さ」


 恐怖に耐えかねた俺は本当のことをブチまけてやった。多少話を盛って俺たち盗賊が被害者っぽく見せるためにな。

 長いこと盗賊の頭をやってっとよ、口は達者になるもんだぜ? こん時ほど自分のキャリアに感謝したこたぁねぇぜ。


「ふ~ん? つまり、他の大陸から来た侵略者がこの大陸にある国を陥れるための一環として、アンタら盗賊を利用して国力低下を行ってるんだ」

「おぅよ、こちとら盗賊家業だからな。長いものには巻かれるが性分ってやつさ」


 小娘もウンウンと頷いて聞いてやがる。あとはヘイトを侵略者の方に向けてやれば、俺たちは無事に解放されるって算段だ。

 だからこそ最大限に言い放ってやる。


「俺たち盗賊じゃあ統率の取れた兵士にゃ勝てねぇ。頼む、殺しちまった村人の仇を取ってくれ!」

「…………」




 しばしの沈黙のあと、小娘はにこやかな顔で言ってきた。


「分かったわ。アンタたちは解放してあげる」

「ホントか? マジで感謝するぜ!」


 へっ、チョロいもんだぜ。サイコパスな小娘だったが所詮はガキだな。こうも簡単に説き伏せることができるとは。


「恩に着るぜ、あばよ!」

「…………」


 無言な小娘と少年に見送られ、夜が明けないうちに村を出た。何人か犠牲になっちまったが微々たるもんだ。俺さえ生きてりゃどうにでもならぁな。


「おい、お前らも助かったんだからちったぁ喜べよ」

「「「…………」」」


 振り向き様に言ってみたが、解放されてから一言も喋らねぇ。ちょいとイラッときちまったが、拷問を目の当たりにしちまったし仕方がないのかもな。


「んん? 妙だな……」


 しばらく歩いて気付いた。林道を通ってたはずなんだが、いつの間にか草原に出てたらしい。向かう先に草原なんてなかったはずだが……。

 そう思い目を凝らすと、思わず腰を抜かしそうになった。


「あ、あの村は数日前に襲った村じゃねぇか! 」


 松明を掲げる先にはあるはずのない村があった。村人の逃げ込む先を無くすために家屋は残らず壊したはず。なのにすっかり元通りになってやがる!


「チッ、なんだか気味が悪いぜ。野郎共、引き返す――ん? なんだ?」


 引き返そうとした俺を手下共が遮り、村の方を指す。

 何かあるのかと振り向くと、村の方からユラユラと揺れる複数の黒い影が現れやがった!


「まだ生き残りがいたのか。おい野郎共、残らず蹴散らし――」


 ガシィ!


「な、なにしやがる!? まさかお前ら裏切る気か!」


 気付けば手下共に押さえつけられ、黒い影の元へと引っ張られていく。

 さっきから一言も喋らないと思ったら、まさか裏切りを画策してやがったとは!


 ドサッ!


「クソッ――ぺっぺっ!」


 地面に倒され口元に付いた土を吐き出すと、何者かが俺の正面に立った。よく見りゃソイツには見覚えがある。


「テ、テメェはこの村の村長!? なんで生きてやがんだ!」


 そうだ、俺は命乞いするこのジジィをバッサリと斬り殺したはずだ!

 いや、それだけじゃない!


「テメェもテメェも、その後ろの奴も、みんな俺が始末した。なのになんで生き返ってやがんだ! それに家屋だって元通りじゃねぇか、いったいどういうカラクリだ!」


 堪らず一気に捲し立ててやると、ようやく村長が口を開いた。


「確かにワシらは死にましたのぅ。しかしですな、ある人物の好意により一時的に甦ったのですよ」

「ある人物……だと?」

「はい。ワシは初対面でしたが、貴方はご存知のはずですぞ?」


 そこまで言うと、村長の後ろから対面したくない()()が出てきやがった!


「イヒヒヒヒ! 私よ、わ~た~し♪」

「ヒェッ!?」


 なんだってあのサイコパスがここに!?


「まさか本気で逃がすとでも思ったぁ? フッ、バッカじゃないの~! せっかくの獲物を逃すわけないじゃ~ん! アンタの運命は~、ここで、終・わ・る・の♪」


 冗談じゃねぇ、さっさとここからズラからねぇと!


「た、たたた、助けてくれぇぇぇ!」


 腰を抜かした俺は地を這って逃げ惑う。一刻も早くあの小娘から逃げるんだ!

 しかし、俺の行く手を阻むように手下共が立ち塞がる。


「どこ行くんですお頭ぁ?」

「そんな慌てなくてもいいじゃないスかぁ」

「うるせぇぞお前ら、そこを――」


 退け――と言いかけて言葉を失う。


「どうしたんスかお頭ぁ? アッシらの顔に何か付いてんスかぁ?」

「まるで化け物でも見たかのように怯えてるじゃないスかぁぁぁ」

「お、お、お、おま、おま……」


 手下共の顔がみるみるうちに崩れていき、気付けばゾンビと成り果てていた。


「ヒィィィィィィ!」


 情けない声をあげて後ずさると、後ろにいた村長が俺を見下ろし告げてくる。この村長も姿をゾンビと変え……


「ぞ、ぞろぞろ……飯の……時間がのぅ……」



 ガブリ!



「ンギャアアアアアア! ヤ、ヤメロ、ヤメロォォォォォォ!」


 おもいっきり腕に噛みつかれ、そのまま食い千切られてちまった! しかも村長だけじゃない。村人や手下までがゾンビと化して、いたるところに噛みついてくる!


 ガブガブガブガブッ!


「ア"……ガ……ヤメ……」


 手足だけじゃなく顔まで食われて言葉が出ない。やがて意識を失いそうになった直前、元凶とも言える小娘と目が合う。


「クククククク……アヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!」


 笑ってやがる。それも飛びっきりの狂気を含んで。やっぱこの小娘は只者じゃねぇ。本物の化け物だ。

 こんなんだったら異国の奴らに加担するんじゃなかった、クソッ……。



★★★★★



「きったねぇ! コイツ頭のくせに白眼むいてウンコ漏らしてやがる! しかも泡まで吹いてやがるし、いったいどうしたってんだ?」

「ああ、それね。ちょっと良い夢を見せてやってんのよ」

「良い夢?」

「そ。懺悔夢要(リグレットドリマー)っていうスキルをかけたんだけど、いっそ死んで楽になりたいって思っちゃうくらいな目に合ってると思うわ。イヒヒヒヒヒ!」


 すっげぇ狂気を含んだ顔。いったいどんな悪夢を見せられてんだか。


「はぁ~満足満足♪ これであと三日は戦えるわ」

「燃費悪いなおい……。三日経ったらどうするつもりだ?」

「そしたらコイツらをけしかけた連中を捕まえればいいわ。幸い尋問して居場所は割れてるんだし」


 尋問じゃなく拷問だけどな。


「ふぁ~あ……。ヤベェ、本格的に眠くなってきた。俺は納屋で寝てくるけど、メリーはどうすんだ?」

「私に睡眠は不要だから朝まで遊んでるわ。()()()()ならまだ残ってるし」

「ああ、ほどほどにな」


 犠牲になるであろう盗賊たちの冥福を祈りつつ、俺は眠りにつくのであった。


メリー:Lv???

発覚スキル:懺悔夢要リグレットドリマー

相手が気絶や瀕死、極度の精神的ダメージを負ってる時に悪夢を見せるスキル。現世でも予知夢かもしれない嫌な夢を見た場合はこのスキルをかけられている可能性あり。対処法は寝ないことだが、人間である以上絶対に無理。


足利久:Lv2

備考:この男はいつまでレベル2でいるつもりなのか。もう少し鍛えた方がいいと思うがのぅ(byオルド)

所持品:銀貨32枚、銅貨165枚、干肉少々

補足:盗賊が持っていた所持金を獲得。銅貨100枚で銀貨1枚となる。

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