棺の中身が知りたくて
五階まで進んだ俺たちの前に出現した謎の棺。この中に邪神が封じられている? ――にしては厳重は管理をされてるワケではなく、無造作に放置されてる感が否めない。それにさっきから気になってたのが……
「この部屋妙に埃っぽいなぁ。もう何ヵ月も放置されっぱなんじゃ……」
誰かが踏み込んだ形跡もないし、魔物すら出てこない。何なんだこの部屋は。
『何にせよ敵はまだ来てないんだから、ここで待ち伏せすればいいじゃない』
「それもそうか――ん? ボロボロだが棺に張り紙がしてあるな。え~と……」
・その昔、とある錬金術師が開発した対侵略者用のゴーレムが眠っています。過去何度も解放を試みましたが、どうやっても解放の仕方が不明です。解放に成功した冒険者は、是非とも冒険者ギルドに報告を。アナタの健闘を祈ります。――冒険者ギルドより。
「何だこれ? 邪神とはまったくの別物じゃねぇか」
『安っぽい張り紙だし、冒険者ギルドがやったっぽいわね』
『なら邪神はどこにいるんだ~? こっから先は無いんだよな~?』
罠部屋には罠しかなかったし、この小部屋も棺以外は何もない。
『なら下の階層に別ルートの階段が有ったんじゃないの?』
「まぁその可能性が高いよな。しかしだ、今ここに冒険者ギルドからの挑戦状が叩きつけられた」
『『……は?』』
「分からないか? 俺たちは試されてるんだよ。この棺を開けてみろと言われてるんだ」
そう、これはきっと運命なのだ。この棺を解放し、最終兵器であるゴーレムで邪神を討てという導きに違いない。
そう、俺たちはこの日のために鍛練を積んできた(←妄想です)。血の滲むような努力を惜しまなかった(←激しく妄想です)。
そう、これは男のロマンなのだ! 早く棺を開けろと俺の中の何かが訴えている!
『何か妄想してるとこ悪いんだけど、こんな小さな棺にゴーレムが入ってるとは思えないんだけど?』
「む、言われてみれば……」
『それにさ~、こんな棺に構ってないで、タイアー共和国の連中を探した方が良くないか~? 一刻を争うんだろ~?』
「そ、それもまた正論……」
だがどうしても……こんな状況でも俺のロマンが止まらない!
「ゴーレムを解放する! いいか? これは俺個人の意見を優先したわけじゃない。邪神が復活した際の対処法を得る必要があるためだ」
『……あっそ』
『……ったく、好きにしろよなも~』
「おうとも。好きにさせてもらおうじゃないか!」
まずは棺にしがみつき、おもいっきり蓋を持ち上げようと試みる――が!
「……んだよこれ、びくともしねぇ」
『いくらバフがかかってるからって、アンタ1人で開くくらいならとっくの昔に開けられてるわよ』
う~ん、だとしても特に重そうには見えないんだけどなぁ。やっぱ特殊な封印が施されてるのか。
「じゃあアレか。錬金術師が施したんならアイテムか何かで開けられるかもしれん。どこかに鍵穴とかあったりしな――を、妙な凹みを発見したぞ」
棺の真ん中らへんに空いている正方形の凹み。ここに何か填めるんじゃなかろうか。
「どっかその辺にないか? ちょうどいい形をしたやつ」
『見ての通り何も無いわよ。飾りっ毛の無い壁にマジックアイテムの灯りが付けられてるだけね』
『そんなのテキトーに詰めればいいだろ~? 砂だったら削りとれるんだし、かき集めれ~』
よりによって砂かよ。いや他に何も無いんじゃ仕方ないか。
ガリガリガリ……
「こんなもんでいいか。どれ……」
『ブッブーッ! キー以外を填めないで下さい。故障の原因となります』
「なんか注意されたぞ? 故障するから止めろって」
『ずいぶん近代的な棺ね。けど故障したら二度と開けられないかもだし、諦めたら?』
「バカ言え。ここまで来といて簡単に諦めてたまるか。――そうだ、罠部屋の炎で燃やしてみよう!」
『中身まで燃えちゃうんじゃないか~?』
「頑丈そうだし大丈夫だろ」
そう思い移動させようとしたが……
『ブッブーッ! 無断での持ち出しは禁止しています』
「またかよ。しかも重すぎて動かねぇし」
『だからもう諦め――』
「い~や、まだだ! こうなりゃ叩き斬ってやる!」
ガツッ!
「くぅ~、硬てぇ!」
『ブッブーッ! 暴力反対です。断固抗議します』
「なぁにが暴力反対だ! お前こそおとなしく開きやがれっ!」
ガツゥゥゥン!
『警告警告! 中身が破損する恐れがあります、直ちに攻撃を中止して下さい!』
「うっせぇわ!」
ガンガンガンガン!
『……いい加減にしませんか? バカの一つ覚えみたいにガンガンぶっ叩いて、あなた相当痛い人ですよ? あんまふざけたことやってっとブッ○しますので』
「なんかブチギレてるぞ? しかも痛い人とか言われた」
『痛いのは合ってるんだから諦めなさい。それに凹みにはキー以外入れるなって言ってるんだから、その形に近いやつを入れてみればいいじゃない。タイアー共和国の商人から貰った石盤とか近いんじゃないの?』
「おおっ! そういやアンクルさんに貰ったのがあったっけ」
今思えば最初に思い出すべきアイテムだったな。
「よっと、これでどうだ?」
カチン――ウィィィン……
貰った石盤が見事に凹みへと填まり、棺から鈍い機械音が発生し始めた。
「どうやら正解みたいだ。これで開いてくれれば……って、やっぱり開かないぞ?」
『よく見なさいよ。石盤にメーターが表示されてるじゃない。少しずつゼロに近付いてるようだから、ゼロになったら開くんじゃないの?』
「ホントだ」
また叩いたら今度こそ襲って来そうだし、しばらく待ってみるか。
「それにしても楽しみだな~。邪神への対抗手段として造られたゴーレムだぜ? こりゃかなりの戦力だろ」
『そうか~? ゴーレムなんてたかがしれてるだろ~』
『フン。私がいれば、鉄クズなんかいらないわよ』
「んん~? 二人とも嫉妬してるのか~? 見苦しいから止めた方がいいぞ~^^」
『スッゴいムカついた。この場で切腹してやろうかな~』
『じゃあ私はピラミッドの屋上から飛び降りてやるわ』
「ごめんなさい、マジで止めて」
――等とバカなやり取りをしてると、時間を知らせるアラームが。
チーーーン!
「電子レンジかよ!」
『そんなツッコミよりほら、棺の蓋が勝手に開いてくわよ』
見れば棺の蓋がズズズッとスライドしていくじゃないか。
さてさて、中で眠っているのは小柄な体型で可愛いメイド服を着ていて、青い髪をツインテールにした可愛らしい――
「女の子……だよな?」
『そうね』
『それ以外の何に見えるんだ~?』
「いや、それはそうなんだが……」
なんつ~かこう、俺ってば部屋を間違えました? とか言っちゃいそうなくらいにして、メイド服着てることからも邪神に対抗できそうには思えないっつ~か、やっぱり何かの間違いじゃありません? 的な感じに思っちゃうわけよ。
『――で、どうすんのよこの子。一緒に連れてくの?』
「バカ言っちゃいけませんよキミ。見るからに年齢一桁な女の子にメイド服着せて連れ回してるとか、こんなん通報案件でしょ~よ」
『そんなの今さらだろ~』
『私とレンとネージュを連れ歩いてる時点でアンタは完全にアウトよ。見る人が見れば一発でそういう趣味だと思われたでしょうね。御愁傷様』
「そうだった、みんな漏れなく見た目が幼女じゃねぇか……。今まで何度かジロジロと見られることがあった気がするが、それって俺がロリコン扱いされてたってことか……」
『良かったわね。疑惑が解けて』
「いや、寧ろ深みが増したような気がするのは気のせいでしょうか」
『どっちだっていいだろ~。それよりほら、中の子が目を覚ましたぞ~』
いつの間にか女の子が上体を起こし、俺の方を凝視していた。
「あ、えっとぉ……」
「貴方……不思議な人」
「……へ?」
第一声がそれかいと思う台詞だが、続く内容ですぐに理解した。
「貴方の中から複数の反応を感じ……ます。とても不思議……です」
この子はメリーとレンの反応を感じ取ったんだな。これはひょっとすると、見た目より有能かもしれない。
「俺の名前はアシカガ・ヒサシ。いや、こっちの世界だとヒサシ・アシカガの方が正しいか。それでキミの名前は?」
「現在はデフォルト状態……です。以前の名前は消去されて……ます」
初期化されてるってことか? う~ん、造った本人がやったんだろうか? まぁ考えても結論は出ないが。
「自分を解放したのは貴方……です。貴方に名付ける権利が……あります」
「いいのか? じゃあ――」
っと言われても急には思い付かない。何関連付けれるワードがないかと思い、棺の中を調べてみると……
「――お? 蓋の裏側に何か書いてあるな。え~と…………UR0089? これは何かの暗号か?」
「それは自分の型番……ですね」
なぁんだ、特別な意味合いはないのか。でも待てよ? この型番を上手く使って……
「よし決めた。キミは今日からユラだ」
「ユラ……ユラ、ユラ……ユラユラ、ユラユラユラユラ――」
「お、おい、大丈夫か? 何かおかしいところでもあったか?」
「いいえ。短いので使用するタイミングを計っており……ました」
名前が短いと使い難いのか? 貴族の長ったらしい名前の方がよっぽどだと思うが。
つ~か絶対そうだよな? もし貴族風にするなら、ユーラレイレイハク――やっぱダメだ、めんどくせ。
「そのタイミングとやらはよく分からんが、問題ないってことでいいのか?」
「問題ありま……せん。これからはユラと名乗り……ます」
無事名前が決まったところでユラが起き上がり、スカートの先を摘まんで一礼した。
しかしこのゴーレムは対邪神用のものだとはとても思えない。そう、つまりは強そうに見えないってことだ。
「さっそくだがユラ、お前は邪神との戦闘に向けて造られたという記述があったんだが」
「製造目的はそうであったよう……ですが、邪神との力量差が激し過ぎたためお役御免となり……ました」
「おぅふ……」
やっぱ使えねぇじゃん……。
『プクククク♪ な~によヒサシ、アンタってばこんなポンコツを手に入れるために四苦八苦してたの? めっちゃお笑いなんだけど!』
「うぐ……」
『アハッ♪ ゴミ掴まされてダッサすぎ~!』
「ぬぐ……」
悔しい――けど言い訳できねぇ!
「中の二人、聴こえてますよ?」
『『え?』』
「あんま調子に乗ってっとブッ○しますので、そこんとこよろです」
まさかユラのやつ、念話を傍受できるのか?
「凄いじゃないかユラ! もっと色々とできるのか?」
「もちろん――と言いたいところ……ですが、動力源の魔石が貧相なために必要出力が確保できず不可能……です」
魔石がディスられてて錬金術師がちと可哀想に思えてきたが、この言い分だと動力源を確保できれば更に有能になるってことだ。
『ハッ、そんなのハッタリに決まってるわ。ポンコツが生意気言ってんじゃないわよ!』
『どうせ付くならもっとマシな嘘を付けよな~』
「嘘ではありません。証明するから動力源をよこしやがれです」
ま~たコイツらは……。それにユラもなかなか頑固なのな。
『へ~、そこまで言うならメリー、あの魔鉱石をコイツにやってみろよ~』
『あ、それ良いわね。――ほら、これを使いなさい』
メリーがユラに投げたのは、山中にいたオーガが取り込んでいたレアアイテムの魔鉱石だ。
それを受け取ったユラは、全身から虹色のオーラを立ち上がらせ――って!
「なんだこのオーラは!?」
「大丈夫……です。少々魔力が強すぎたようなので今から抑え……ます」
そう言うとみるみるうちにオーラが収まっていく。
「この動力源は大変素晴らしい……です。今のユラなら邪神を倒せそうな気が……します」
「ホントか!?」
「はい。肝心の邪神がどこにいるのか不明……ですが――――む? 我々以外の生命体の音源を感知……しました」
「音源? でもこの階層には俺たち以外は居ないと思うが」
しかしユラはバッチリ感知してるらしく、壁に向かって腕を振り上げると……
「チェストーーーッ! ……です」
ドゴォォォォォォ!
一撃で壁が崩れ、その奥にあった部屋が丸見えになる。
そしてその部屋にいた全員が驚き、こちらへと振り向いた。




