ピラミッドの秘密
「邪神を復活させようとしている!?」
マルセルの話を聞いて驚愕する。何故ならば、遥か昔にどこからともなく現れた侵略者がこの地で暴れまわり、幾つかの国を滅ぼしてしまったらしいのだ。
多大な犠牲を出しつつも何とか抑え込むことに成功した後、ピラミッドに封印したそれは人々から邪神と呼ばれるようになっという。
「もしも封印が解かれれば、国にとっての一大事。そんなことになればタイアー共和国とて無事ではすまないかもしれないのに……」
「なら俺たちがピラミッドの中を調べてくる。マルセルはタイアー共和国の奴らを叩き出してくれ」
「承知した! ――が、くれぐれも注意してくれたまえ。もしも封印が解かれた場合、速やかに離脱すること。いいね?」
「分かってるって」
と言われても、正直メリーやレンがいればどうにでもなりそうだと俺は思うし、何よりピラミッド探索の邪魔されて憤ってるんだ。例え邪神が復活しても、俺の邪魔はさせねぇぜ!
「ネージュとウルはここで待機だ。ピラミッドの中は危険だろうし、危なくなったらゲートで逃げてくれ」
「分かりました。ヒサシさんもお気をつけて」
「バウ!」
さて、ピラミッドの方でも戦闘が発生してるな。
「メリー、レン、邪魔者の排除を頼むぜ!」
「言われなくてもやってやるわ!」
「アハッ♪ 斬って斬って斬りまくれ~!」
「クッ、なんだコイツら? ガキのくせして強過ぎる!」
「グハッ! 子供相手にこのザマとは……」
入口を封鎖していた共和国軍を少女二人が斬り伏せていく。一瞬呆気にとられる王国軍だが、ハッと我に返り……
「よ、よし、この調子ならいけるぞ、一気に押し戻すんだぁ!」
「「「おおっ!」」」
これで入口付近ががら空きになったな。
「今のうちに内部へ突入しよう。ロームステルのおっさんたちは入口の守備を頼むぜ。後ろから攻めて来られちゃ面倒だかんな」
「了解し――いやいや待て待て! なぜ我々がお前らに――」
「時間がねぇから急ぐぞ!」
「おいぃぃぃ!」
喚くおっさんを残し、俺たちはピラミッドの中に入り込んだ。
「のんびりと探索したかったが状況が状況だ。メリー、憑依合体で最初から全力だ」
「アンタから憑依しろだなんて珍しいわね。でも移動や戦闘はアンタもやりなさいよ?」
「もちろんだ。男のロマンを汚した連中は許さねぇぜ!」
シュィーーーン!
この憑依合体はただ操られるだけの憑依とは違い、俺自身も自主的に動けるんだ。その上メリーのスキルも使いたい放題だし、正に無敵ってやつさ。但しデメリットとして超絶な不運体質になっちまう。そこで――
「レンは魔剣形態で頼むぜ」
「おっけ~♪」
こちらも手にすると超絶なデバフが掛かる魔剣アゴレントを装備する。これにより不運体質が打ち消され、完璧な状態になれるんだ。
「っしゃあ! タイアー共和国め、超絶無敵なヒサシ様が相手に――」
パカッ!
「のわぁ!?」
『『――って、いきなり罠に掛かるな~!』』
不覚にも落とし穴の罠が作動し、穴の底へと落下していく。
しかも底には剣山。高さも相まって通常なら助からないところだ――が!
シュン――――ドシン!
「イテテテテテ……、なんだぁ? 元の位置に戻って来ちまったぞ」
『物理不通で剣山を回避して、視着転向で転移したのよ。私のスキルがなかったら今頃くし刺しだったんだから、感謝しなさいよね』
今までも何度か見ていた気もするが、視着転向ってのは目に見える範囲で行き来できる瞬間移動だ。前方にいた幽霊が、いつの間にか後ろに居たりするのはこのスキルらしい。
「感謝ついでに聞くが、ピラミッドに入り込んだ奴らの居場所を探知できないか?」
『そんな便利なものは無いわよ。せいぜい熱源が近くに有るかどうかくらいね』
「地道に探すしかないか」
やむ無く片っ端から捜索にあたる。大部屋小部屋はもちろん宝箱の中とかも丹念にな。
『――って、何だって宝箱をひっくり返してんのよ!?』
「いやほら、少しでも探索気分を味わえたらな~っと」
『んなもん放っときなさいよバカ! それより敵よ、敵を探して殺しまくりなさい!』
『メリーの言う通りだぞ~。早く血を吸わせなきゃ、人化して勝手に進むからな~』
「あ~もぅ分かったよ!」
二人に念話で急かされ更に奥へと進んでいく。途中何組かの冒険者パーティが出口へと逃げていき、彼らを追うタイアー共和国の兵士を次々と粉砕。罠も強引に回避しつつ二階、三階へと上がって行った。
「構造的に上の階の方が狭くなってるはずだし、そろそろ最初に入り込んだ奴らと遭遇しそうなもんだが」
『そいつらかどうか知らないけれど、この先のT字路で待ち構えてる奴らがいるわね』
「待ち伏せか」
少し手前で走るのを止め、注意深く進んでいく。――のだが、メリーが急かすように言ってきた。
『別に警戒しなくていいから早く行きなさいよ。罠があったところで物理不通で無力化できるんだし』
「そりゃお前は慣れてるからいいだろうけど、いざ降りかかると反射的に身構えちまうんだって」
『なら手本を見せるから、アンタは黙って見てなさい。レン、行くわよ』
『おっけ~』
ザッ!
身体の主導権をメリーに譲った途端、無謀にも急加速を始めた。そしてT字路に差し掛かった瞬間!
ササッ!
「うおっ!?」
左右から飛び出す長槍に驚くものの接触することなく、逆にすり抜けたのを目の当たりにした男たちが「えっ?」っという顔を作っていた。
「バカね、隙だらけよ!」
ズバズバッ!
「ゲフッ!」
「グホォ!?」
いまいち理解が追い付いてなかったようだがメリーとレンには関係なく、流れるような動きで右側にいた男二人を瞬く間に斬り倒す。
「テ、テ、テメェは何モンだぁ!? まさかバケモンかよ!」
「コ、コイツぁやべぇぞ、さっさと逃げ――」
「まさか逃がすとでも思ってるの?」
ザシュッ!
「ゴハァ!」
「はいざんね~ん――っと。後は……」
チャキ!
「ヒィ!?」
逃げようとした男を後ろから斬り倒し、腰を抜かして尻餅をつく男に切っ先を向けた。
つ~かどうでもいいけど、俺の身体を使って女の喋り方は止めて欲しいんだが……。
「た、頼む、許してくれ、追手が来たら始末するようにってリーダーに言われてたんだ」
「リーダー?」
「ああ、俺たちゃ【戦場の棺】って言う傭兵団でな、訳あってタイアー共和国に肩入れしてんのさ」
戦場の棺? どっかで聞いたことあるような……
「あーーーっ! 思い出したぞ。戦場の棺って言や、何日か前に港街で喧嘩売ってきた奴らじゃねぇか!」
「喧嘩? そういやそんな事も――って、お前はあん時のガキか!?」
「ああ、そうだよ。あの時はよくも連れに因縁つけてくれたなぁ?」
「まままま待て、マジですまなかった、こんなに強ぇとは思わなかったんだ!」
こんなところで会うとはな。てっきりオーガ共に全員食われたと思ったんだが、仲間を見捨てて逃げ延びてやがったか。
「あの時先頭に立ってたハゲ野郎に絡まれたんだ。アイツはどこにいる?」
「あ、ああ、多分リーダーの事だな? 奴なら邪神の眠ってる部屋を探し回ってるぞ」
「やっぱり邪神が狙いかよ」
「俺たちがって言うよりタイアー共和国のタカ派の貴族がな。復活させて上手く手駒にしようと考えてるらしいぜ」
「おいおい、正気かぁ?」
「本人に言ってくれ。泉の確保に失敗しちまって後がねぇんだろ。まぁ俺たちも多くの人員をオーガに食われて似たような立場だけどな」
似た者同士で協力してるってか。その貴族は大バカ野郎だし、傭兵ならリスクヘッジくらいはするべきだろうが、後がなくて焦ったって感じか。
「とりあえずは情報提供に感謝するぜ」
「感謝ついでに聞くが、お礼に見逃してくれるってのはどうだ?」
「あ~それな。でもな~、それとこれとは話が別だし――」
モゾモゾモゾ――――ボコォ!
「キシャーーーッ!」
え? 地面からでっけぇサソリが!?
「ヤベェ、もう魔物が復活しやが――ギャァァァァァァ!」
突然の魔物に腰を抜かしてる男が逃れられるはずはなく、巨大なハサミで捕えられてバリバリと食われてしまった。
しっかし今まで魔物に遭遇しなかったから、てっきり出ないのかと思ったぞ。多分コイツらが倒してたから居なかったってだけだな。
「ソイツの仇ってわけじゃないが、邪魔者は消えてもらうぜ!」
ズバン!
「キシャャャ……」
硬そうな身体だったが魔剣アゴレントには敵わず、光の粒となって消えていく。どうやらピラミッドの魔物は素材が残らないらしい。
『いいねいいね~。サソリの血に傭兵の血を上乗せとか、熱くなって来たぞ~』
『そうね。この先にもまだ居るようだし、見つけ出してブッ殺しましょ』
メリーの台詞じゃないが、戦場の棺のリーダーには直接引導を渡したいしな。
「――で、四階も無事突破して五階まで来たわけだが……」
目の前には五つの扉があり、この中のいずれかが正解らしい。らしいって言うのは扉の先が見えないからで、間違ったら罠が作動するだろうって予想だ。
『だから罠なんな気にしないでさっさと行きなさいよ』
「お、おい、勝手に動かすなって……」
しびれを切らしたメリーが真ん中の扉を開け放つ。中は真っ暗で何にも見えな――
ゴォォォォォォ!
「うわぁっつぅぅぅぅぅぅ!」
入った瞬間に四方八方から炎が吹き出し、俺を丸焼きに!
『だから落ち着きなさいって。ちゃ~んと無力化してるんだから。それに熱いはずないでしょ』
「あ、そういや熱くなぇな」
普通ならすでに焼け死んでんはずなのに、炎がすり抜けててまったく熱くはない。生肉の一切れでも持っていればこの場で食えるかもな~と考えた俺は、だいぶ慣れてきたのではないだろうか。
『真ん中はハズレね。じゃあ次~』
「だからメリー、勝手に動かすなと――」
シャァァァァァァッ!
「――って、冷てぇぇぇぇぇぇ! 今度はブリザードかよ!」
『だからアンタ、ダメージは無いんだから冷たいわけないでしょ』
「いや、中々慣れなくてな」
『さっき自分でだいぶ慣れてきたとか言ってなかったっけ?』
「言ってない! 頭の中で思っただけだ!」
ったく、いちいち思考を読むなと――
『じゃあ今度はボクが選ぶぞ~』
「おい待て、まだ心の準備が!」
シュ――シュシュ――シュシュシュシュ!
「うおっ! ――って、なんだ弓矢かよ」
『弓矢じゃなくても大丈夫だけどね』
「はいはい、まだ不慣れですみませんね。今度は俺が選ぶから、もう驚かねぇぞ」
ヒュ――――ゴ~~~~~~ン!
「ってぇぇぇ! おいメリー、タライが上から振ってきたけど物理不通が発動しなかったぞ!?」
『ダメージを受けるほどじゃ無かったんじゃない?』
「精神的ダメージは計り知れないだろ!」
『そんなのダメージに入らないわよ』
世の中は俺に対して冷たい! さっきのブリザード並に!
『結局一番左が当たりかよ~』
「おい待て! ここまで来たら正解が無いってパターンも――」
ギィィィ……
「あれ、罠が発動しない?」
『やっぱ正解じゃん。ほら~、部屋の奥に棺みたいなのが有るぞ~』
「あ、ホントだ」
まさか俺たちが先に邪神を見つけたのか?
しかし、この場合どうしたらいいか……
メリー:Lv???
発覚スキル:視着転向
目に見える範囲に転移できるスキル。前方にいた幽霊が、いつの間にか後ろに居たりするのはこのスキルらしい。




