ゲートオープン!
「ここがスペール王国の王都――でいいんだよな?」
「少なくとも砂漠じゃないわね」
表通りに出て見れば遠くに国旗が掲げられた城が見えることから、王都でまちがいなさそうだ。
「……で、来たは良いけど、どうやって承認書とやらを貰うつもり?」
「そりゃ泉の件で手を貸したマルセルを頼ってだな――」
「そのマルセルが王都にいるって保証はないんだけど?」
「あ……あ~うん……」
そういやそうだ。王都に居なかったら探すのは骨だぞこりゃ。
「アンタ、何も考えてなかったわね?」
「すまそ――ってイデデデデデ!」
「ふっざけんなバカァ! 考え無しで金貨4枚無駄にしてバッカじゃないの!? 罰としてアンタは一生私の奴隷よ!」
「運命共同体な時点ですでに奴隷みたいなもんだろ。つ~か手を離せ!」
「……それもそうね。や~い奴隷にされてやんの、バ~カバ~カ!」
「もう分かったからマルセルの情報を集めに行くぞ」
「ついでに美味いランチが食べれる店もな~」
「それは後回しな」
「ケチ~!」
行き当たりばったり的に酒場へと足を運んでマルセルの情報を集めた。そうしたらなんと、偶然にも城に招かれているのだそうな。その理由も回復の泉を確保した功績を称えるものらしい。
「どうやら城にいるらしいな。出待ちしてたら会えるかもしれねぇ」
善は急げと城門前までやって来た。中の様子を門番に尋ねようとしたところ、多くの護衛を伴って城から向かってくる一団が目につく。
「あら、ちょうどよかったじゃない。マルセルがこっちに来るわよ」
「ホントだ。でも浮かない顔をしてるな?」
喜ばしいはずが何故か顔色が悪く感じるマルセルが俺たちに気付き、手を振って駆け寄ってくる。
「やぁ皆さん、ここで会えるとは正に神のお導き! 神よ、この奇跡に感謝します!」
「お~い、コイツ大袈裟言ってるぞ~?」
「大袈裟だなんてとんでもない! 私としても大変困っていたところなのですよ」
「と言うと?」
「例の泉とスペール王国をリンクできたまでは良かったのですが、同等の魔力を出力できるほどの魔術師が居らず、ゲートが開けないのです」
「そのゲートってのはピラミッドのところに瞬間移動するやつのことか?」
「そうです! それができなければ商業化は難しく、移動費だけでかなりの経済的負担が出るのですよ。ですがレン殿が居てくれれば話は変わる。これぞ天の助けでしょう!」
そりゃな。レンは魔剣だし、それと同等の奴なんか早々いないだろう。
俺たちがマルセルと話し込んでいると、離れた場所で聞いていた魔術師たちも慌ただしく割り込んできて……
「マルセル殿、こちらが例の冒険者で?」
「そうです! 彼らのお陰で私は名誉挽回を果たしました。特にこちらのレン殿には術式を組んでいただきまして」
「アハッ♪ ども~!」
「こ、この小娘――コホン、こちらのお嬢様が?」
「はい! 彼女の魔力量はトンでもないですよ? たった一人で――しかも休憩無しで完成させたのですから!」
「「「」」」
あんぐりと口を開けて言葉を失う魔術師の老人たち。合わせて10人くらい居るんだが、彼らの殆どが同時に魔力を送り込んだりしてたんだろうな。
「……コホン。その~、何と言うかだな。マルセル殿を疑うつもりはないのだが、些か常軌を逸する事例であるのでな、すまないが魔力測定を行わせてくれぬだろうか?」
「いいぞ~。何すればいい~?」
「こちらの水晶に触れてほしい。並の魔力なら水色から青、我々と同等なら橙から赤、それ以上なら黒くなっていくはずだ」
「こうか~?」
差し出された水晶にレンが触れると、最初は白から始まり青を経て黄色、さらに赤から黒へと変わっていき、最後には……
パリィン!
「「「」」」
「お~い、割れちゃったぞ~?」
「「「」」」
「お~い――ってヒサシィ、コイツら固まったゃったけど、どうしたらいい?」
「正気に戻るまで待って差し上げろ」
「分かった~」
数分後、正気に戻った魔術師に連れられて城の中へと案内された。城の地下に専用のゲートを開設中らしく、そこで魔力を放出してほしいんだとか。
「先ほどは大変失礼を致しました。してレン殿、当時と同じようにこの魔方陣にも魔力を注いでもらいたいのだが」
「おっけ~」
それから数分後に魔方陣から光の柱がたちのぼるようになり、ゲートが完成したのだと分かった。
「実に素晴らしい! これほど短時間でゲートが完成した例など聞いたことがない! どうかな、レン殿さえ良ければぜひ我が国に――」
「え~~? でもな~、それだと色々と冒険できなくなるしな~。それにヒサシと離れるのも何かと不便だしな~」
「むむむ……残念だか仕方ないか」
すっかり忘れてたが、俺はレンの依代にされてんだよなぁ。そんな俺が長時間離れると、レンは剣に戻るしかなくなるんだ。
残念がってる魔術師だが、そこへ一人の兵士が慌ただしく入室してきた。
「し、失礼します、タイアー共和国が軍を率いてピラミッドに侵攻! 瞬く間に占拠されました!」
「何だと!? おのれタイアー共和国め、泉を取った事による報復のつもりか!」
その後城全体が慌ただしくなり、俺たちはマルセルに連れられて応接室へと移動。詳しい情報を待った。
「誠にお恥ずかしい。国のゴタゴタを晒すような真似をしてしまった」
「いや、それはいいんだが、せっかく承諾書を貰おうと思ったんだが意味が無くなったな~と」
「承諾書? それならすぐにでもご用意できますが、しかし……」
その場で承諾書を作成しつつ、マルセルが渋い顔を作る。
「タイアー共和国が来たからまともに探索が出来ないって言うんだろ? なんなら俺たちも追い払うのに協力するぜ」
「本当かい!? それは助かる! 私も後で向かうので、外にいる兵たちに諸君らも続いてくれたまえ!」
せっかくのピラミッド探索に水を差されちゃ黙ってられねぇ。続々と兵士が城を出て行くのに続き、俺たちも後を追った。
隊列を作っている先には砂漠へのゲートがあるあの建物。訳を話して後ろに並ぶと、不意に横から声を掛けてくる騎士が。
「お前たちもこの先に行くのか?」
「当然だろ。俺たちは元々ピラミッド探索に来たんだ。タイアー共和国の連中に邪魔されてたまるかよ」
「なるほど。しかしな、我々はお前たちに用があるのだよ」
「俺たちに~? いったい何の用――」
振り向いた俺は硬直する。そこにいたのは大変親しみのあるオッサンだったからだ。
「ロ、ロームステルの……オッサン?」
「ガッハッハッハッ! ようやく見つけたぞ貴様らぁ、今日という今日は祖国に連れ帰り、じっくりと尋問してくれるわ!」
「あ~も~やめろ、離せ、こんなとこまで追ってくるとかストーカーかよ!」
「こればっかりはヒサシに同感ね。ホンッッットしつこいわよアンタ!」
「しつこくて当たり前だ! 我々ロッカの騎士は最後まで諦めん!」
ゲートを前にして俺たちとオッサン連中の揉み合いが始まる。つ~かこんな事してる場合じゃないっつ~の!
「さぁ、おとなしく我々についてくるのだ!」
「誰が行くか!」
「そ~だそ~だ~! しつこい男はモテないんだぞ~」
「「やかましい!」」
「いや、何でヒサシまで反応するのさ……」
「す、すまん。モテないって単語に敏感になってた」
ゲート前で互いに譲らない攻防が続く。しかし、後ろから来た兵士には俺たちの事情など知るはずもなく……
「ええぃ、さっさとしないかお前たち!」
ドン!
「「ぬわぁ!」」
間抜けな声を出しながら、俺とロームステルは魔方陣へとダイブする羽目に。
数秒後には例の砂漠へと舞い戻っていたのだが、そこらに両軍の兵士がバタバタと倒れているのが目につく。
「な、なんだこれは? まるで戦争中ではないか!」
「実際タイアー共和国が攻めて来たんだよ」
小さな拠点のあちこちでスペール王国とタイアー共和国の兵士がぶつかっている。スペール王国は内側から追い出そうと、タイアー共和国は外から包囲する感じでの攻防だ。
「ヒサシ殿~!」
「マルセル!」
少し遅れてゲートからマルセルやメリーたちが出てきた。そして開口一番……
「タイアー共和国の狙いが分かりました。奴らピラミッドに封印されている破壊神を起こすのが目的のようです!」
「破壊神……だって?」




