進化の魔鉱石
「ふ~ん? これがまごうぜぎとかいうやつ? 見たことのない石よね」
オーガリーダーを無事(←?)解体し終えたメリーが、中から出てきた虹色に光る石を手を取り興味深そうに眺める。そこへネージュも駆け寄ると、目を見開き驚いた。
「こ、これ……魔鉱石です! とてもレアな鉱石で、秘めた力を引き出してくれるという言い伝えがあるくらいですよ!」
そんなにレアなのか? と、半信半疑に俺も見ていたら、檻から救出した商人たちも目を輝かせて会話に交ざってきた。
「それは大変貴重な鉱石ですぞ! 鉱夫が掘り当てれば一生お金に困らないだけの大金が手に入るくらいです! よろしければすぐにでも鑑定いたしますよ? 助けていただいたご恩もありますし相場の倍で買い取り致しますが、いかがでしょう?」
「けど金には困ってないからなぁ。とりあえず鑑定だけしてもらおうかな」
「お任せください! ステイザー商会の名にかけて、適正価格を導き出しますよ!」
数分後、
「やはり魔鉱石で間違いありません。白金貨にして1000枚相当の値は有りますな!」
白金貨1枚は金貨100枚。つまり金貨10万枚だな。そんだけあれば一生分だけじゃ使い切れないだろう。それ以前に売る気もないし、こういったレアなアイテムは自分に使ってこそ真価を発揮する!
「ああ、そうでした。一応忠告しておきますが、貴方自身が体内へ取り込もう等と考えないでくださいね? オーガの場合は強靭な肉体が支えになったのでしょうが、並の人間が取り込もうものなら身体が弾け飛んでしまいますので」
「お、おぅ……」
あっぶね~、妙なこと考えるもんじゃないな。
「金に変える以外にも使い道はありそうだな。この魔鉱石はメリーが持っててくれ」
「そうね。後で色々と実験してやるわ」
ひとまず霊蔵庫に入れといてだ。
「それで、ステイザーさんでしたっけ?」
「失礼。申し遅れましたが、わたくしアンクル・ステイザーと申します。アンクルで結構ですよ」
「じゃあアンクルさん、街まで送ります」
「それはありがたい! 街に着きましたら改めてお礼をさせていただきます!」
アンクルさんの商隊をタイアー共和国の街まで護衛した。あ、回収した荷車はちゃんと返したぞ? そうしたら「負け戦で大幅な利益が出たので買い取りさせてください!」と感激してたな。
何故利益が出るのか聞いてみたら、オーガの体毛と装飾品をしっかりと剥ぎ取っていたからだ。特に体毛は人のより頑丈らしく、櫛やブラシに加工して売り捌くんだとか。まさかオーガも死後にパイ○ンにされるとは思わんかったろうが。
「お送りいただき感謝致します。こちらは救出いただいたお礼と護衛の分、それから荷車の買い取りを含めたものです。どうぞお受け取りください」
「え、金貨が大量に……」
「ええ、金貨500枚です。これでも大幅な黒字ですよ」
オーガの体毛すげぇな……。
「ああ、それから――」
そう言って店の奥から持ってきた石盤を差し出してきた。
「こちらをどうぞ」
「これは?」
「北西の砂漠にあるピラミッドで発掘されたものです」
「ピラミッド!」
イグリーシアにもピラミッドがあったとはな。前世じゃ海外にすら出ちゃいないし、一度見てみたい気もする。
「こんな貴重なもの、貰ってもいいんですか!?」
「どうぞどうぞ! 魔力反応もなく使い方が不明なことから価格をつけられないでいたのですよ。冒険者でもない我々では調査しきれませんので、もし皆様がピラミッド探索をなさるのでしたら役立つかもしれません」
「ありがとう御座います!」
次の目的地をピラミッドに変え、タイアー共和国を後にした俺たち。遺跡探索と言えば冒険者ってわけで、今からワクワクが止まらないんだなこれが。
だからと言っていいのか、砂漠を移動中だってのに全然苦にならないし、サソリに刺された時も慌てることはなかった。楽観視してたら足が倍以上に腫れ上がってエライ目にあったが、今となっては良い思い出だ。
――に、しても……
「メリー、さっきから魔鉱石を弄くり回してるようだが、何か分かったのか?」
「い~え。凝縮された魔力が籠ってるって事以外はさっぱりねぇ。そもそも人工物なのか自然物なのかすら分からないわ」
「そっかぁ……」
仕組みが分かれば俺でも進化できるかな~なんて淡い期待をいだいてたんだが、そう簡単にはいかな――ん?
「んんん?」
「何よヒサシ。私の方をジロジロ見て気持ち悪いわねぇ」
「相変わらず口の悪い……。まぁそれはともかくさ、お前急に背が伸びてないか?」
「……は?」
「なんつ~か大人びて見えるっつ~か」
「おお、そういや成長したな!」
「そうですね、ヒサシさんと同じくらいの年齢に見えます」
「バウ!」
気のせいかとも思ったが、レンやネージュも同じ感想だ。
「やっぱそうだよな? 手鏡で見てみろよ」
「どれどれ…………ふ~ん? 中々の美少女じゃない。これも魔鉱石のせい?」
「だと思いますよ。やっぱりレアな鉱石だけあって凄い効果ですね!」
確かに凄いが、歳を取るって考えると急に嬉しくないアイテムになってくる。爺さん婆さんが持ったら即死するとかないだろうな?
「あ、思い出しました。魔鉱石には理想の身体に近付ける効果もあったはずです」
じゃあお年寄りが持ったら若返ったりするんか。大枚はたいて欲しがる貴族が多そうだな。
「すっげぇアイテムじゃん! メリー、ボクにもパスパス――――っと、サンキュ!」
メリーからレンの手に移ると、成長と同時に軽装から重装の鎧を纏うようになった。ついでに胸も中々の育ち具合で、ちょっと良い感じ(←?)かもしれない。
「どうだぁ? 成長しただろ~?」
「おお、なんか強そうだぞ(特に胸が)」
「レンちゃん、次はわたくしです!」
最後にネージュの手に渡る――が、
「どうでしょう?」
「「「…………」」」
クルリとターンしてウインクをかますネージュだが、全く変わってないんだなこれが。だが流れ的に変わってないとは言いずらく、俺たちはヒソヒソと話し合うことに。
「どうする? 何て言えばいい?」
「ハッキリ言ったら? 伸び代は無いって」
「それ言ったら絶対キレるぞ~」
「そうだぞメリー。ああ見えて年齢や外見には一番うるさいんだからな」
もう一度全員でネージュを見る。
「心なしか胸の辺りがキツい気がしますね。フフ、服を新調した方が良いかもしれません」
「「「…………」」」
明らかに気のせいなんだよなぁ。しかもさりげなく今後は自分が持つみたいな展開にしてるし。
「あ~、あのねネージュ。これ使っていいから、ちゃんと現実を受け止めなさい」
「手鏡ですか、少々お借りしますね――」
「――っ!?」
メリーから渡された手鏡で全く変わらない自分見たネージュの図。
「も、も~ぅメリーちゃんったら、わたくしに幻要を使いましたね? ダメですよ、そんなイタズラをしちゃ」
「いや、私は何もしてな――」
「解いてください」
「だから私は――」
「解いてください、今すぐ!」
「ちょ、怖っ!」
以後しばらく同様のやり取りが続き、日が暮れてきた頃にようやく落ち着いてくれた。
「なんということでしょう。魔鉱石にはわたくしを導く効果が無かったのですね……」
「「「…………」」」
このように多少歪曲されてしまったがな。ズバリ効果がないんじゃなくって、効果を得てアレなんだが、これ以上は何も言うまい……。
「しかし此度の事で血統には逆らえないのだと理解しました。さぁ皆さん、気を取り直して晩御飯に致しましょう」
「お、おぅ……」
ネージュの遺伝が色濃く残っていることを確認した俺たちは、一夜明けて無事ピラミッドまでたどり着いた。
目の前にそびえるピラミッドはまさにイメージ通りの三角形をしており、これから足を踏み入れるんだと思うとワクワクが止まらない。
しかも冒険者を当て込んでか周囲には宿や雑貨屋等が建ち並び、砂漠とは思えない賑わいを見せている。
ちなみに魔鉱石はメリーの霊蔵庫に保管してある。誰かが持ってるとネージュが機嫌を損ねるからな。
「おっしゃ、ピラミッドだぞピラミッド! さっそく中に入ろうぜ!」
「待ちなさいよ。さっきから見てると、中に入ってく連中は何か見せてるわよ?」
「どうせギルドカードだろ? みんな持ってるんだから問題ないって」
「バウ!」
そう言って意気揚々と入ろうとしたのだが、通せんぼしてる門番みたいな奴らがノーを突きつけてきた。
「ギルドカードのみではダメだ。このピラミッドはスペール王国が管理してるのでな、スペール王国内の王族もしくは貴族の承認書が必要なのだ」
「マジで!?」
参ったな、そんなもの持ってないぞ……。
「それって貴族たちに取り入れってこと?」
「平たく言うとそうなるな。ここに訪れる冒険者たちはな、皆時間をかけて貴族たちの機嫌を取っているのだ。私も若い頃は――」
話が長くなったので以下省略するが、つまりは長いものに巻かれてこいって話だ。
「つってもさ、また砂漠を逆戻りしなきゃならねぇんだろ? んな面倒なことやってられっかよ」
「バカモン! 最近の若者は忍耐というものが不足している! 私の若い頃は――」
話がえらい長くなったので以下省略するが、つまりはさっさと戻れって話だ。メリーに幻要を使ってもらう事も考えたが、バレたら探索どころじゃなくなるんで見送ることに。
「しゃ~ない。一旦引き返すぞ」
「イ・ヤ・よ。そんなダルいことやってられないわ」
「もうピラミッドは諦めろよな~」
「そんな! お前らには男のロマンが分かんねぇのか!」
「「だって男じゃないし」」
「むぐぐぐ……」
さすがに俺一人で戻る勇気はない。やむ無く断念しようとしたところに、ニコニコ顔の怪しいオッサンが声をかけてきた。
「そこの皆さん、何やらお困りのようで。スペール王国に戻る時間が勿体ない――そうお考えではありませんか?」
「確かにそうだが、何か便利なマジックアイテムでもあるのか?」
「マジックアイテムはございませんが、一瞬でスペール王国の王都に移動できる転移装置がございますぞ!」
「「「一瞬で!?」」」
怪しいオッサンについていくと、柱状に光が立ち上がっている広場についた。地面には魔方陣が描かれていて、柱状の光はそこから出ているようだ。
「お一人様一回につき金貨1枚。ペットの犬は……まぁ今回はサービスしときましょう。どうです、背に腹は変えられないでしょう?」
「う~ん……」
念のためメリーたちに振り向いて顔色を伺うと、ヤレヤレって感じに呆れ顔をされた。了解を得たと解釈し、金貨4枚をオッサンに差し出すと……
「じゃあこれで」
「毎度あり! では魔方陣へお進みください」
言われるままに魔方陣へと足を踏み入れると真っ白な光で視界が遮られ、次の瞬間にはどこかの屋内へと移動していた。
何故かそこで待ち構えていた兵士に促されて外に出ると、さっきまでいた砂漠とは丸っきり別の街になっていた。




