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悪霊少女が行く! 俺の相棒は最強最悪の悪霊ちゃん  作者: 北のシロクマ
スペール王国及びタイアー共和国編
33/88

不可抗力なマッチポンプ

 離れた場所で戦闘が行われているのを察知し、メリーとレンが急行する。俺たちも後を追うと、甲冑を着込んだ兵士たちが無数の魔物相手に奮闘していた。


「こりゃまたえらい数の魔物じゃねぇか。何だってこんなに……」

「いや、そんなことより加勢しないと!」

「ああ、そうだな。掲げてる国旗はスペール王国のものだし、貸し作っとくのも悪くねぇ」


 スチャ!


 言うや否や、抜刀しつつゴブリンやウルフの群に突撃をかますタケゾウ。


「見たところ二流以下の魔物だな。だったら一振で充分だ――――そ~らよっと!」


 ズバァン!


 一振だけで地面に大穴が空き、魔物の群が宙を舞う。只の芸達者なオッサンじゃなさそうだ。


「やるじゃない。私も負けてらんないわ」

「ボクも殺るぞ~!」


 奥で戦ってる二人も対抗心を燃やし、次々と魔物を葬っていく。

 呆気に取られていたスペール王国の兵士もハッとなり、魔物の群を押し戻していった。

 が……



 ズゥン!



「うぉ! な、なんだあの巨体は!?」

「オーガです! 奥にも2体見えます!」


 これもネージュのイレグイが原因か? だとしたら罪悪感パネェぞ!


「大物じゃない。全部私が――」

「い~や、ボクの獲物だね」

「チッ。なら二等分でいいわ」

「了~解」

「いいや、三等分だ。1人1体でピッタリだしな。――いくぜぇ!」

「ちょ、タケゾウ!」

「あ~っ、ズルいぞ~!」


 二人からブーイングが発生するも、タケゾウはオーガに単身突入。


「ちぃとばかし本気出すぜぇ? 二天一流は伊達じゃないんでな!」


 さっきまで1本だったのを素早く二刀流へと切り替え、オーガの足下に潜り込む。


「グガァァァ!」


 バカめ! ――と言いたげなオーガがタケゾウを踏み潰そうとするも、ひらりとかわして背後に回る。そして地面を蹴り、オーガの頭上まで飛び上がると……



「グガッ?」

「今ごろ振り向いても遅いぜノロマァ! 二天一流――天地開門閃(てんちかいもんせん)!」



 ズバァァァァァァ!



「ギャガァァァァァァ!」


 血渋きと共にオーガの断末魔が響き、膝から崩れるように倒れたところで静かに刀を納めた。



 チン!



「フ、恨むんならデカイ的の自分を恨むこった」


 タケゾウがオーガを斬り倒した頃にはメリーとレンの方も終わっており、スペール王国の兵士から次々と歓声があがった。


「スゲェぞあの3人! 1分も経たないうちにオーガを仕留めやがった!」

「オーガってDランクだろ? 冒険者がパーティ組まなきゃ倒せねぇレベルだぞ!」

「あの3人がいれば泉の確保はなったも同然だ!」

「早くマルセル様にご報告を!」


 喜んでるところ申し訳ないが、魔物の群は十中八九ネージュのスキルによるものだ。口が裂けても言えないけどな。

 そんな俺の心情を知るよしもなく、大将とおぼしき青年が俺たちの前にやって来た。


「私はスペール王国のマルセル。爵位は男爵だ。諸君らが居なければ危うく家運をかけた戦いの前に散り行くところだった。本当にありがとう!」

「それは……良かったです、はい……」

「此度の戦は没落寸前である我がラスペラン家にとって最後のチャンス。かの泉をタイアーの魔の手から護るため、是非諸君らの力を拝借したい」


 協力するのは構わないが、没落寸前ってのが引っ掛かる。すると俺の思考を悟ってか、タケゾウが静かに耳打ちしてきた。


「貴族社会なら政敵に嵌められたとか当たり前にあるさ。恐らく起死回生のために先走って来たんだろう。負けりゃ賊軍だが勝てば官軍。家運をかけてるだけに報酬は期待できるぜ?」


 報酬は高望みしないが没落間近の貴族を救うっていうのも面白いかもしれない。何よりメリーとレンを満足させるには、多少劣勢なくらいがちょうど良いだろう。


「分かりました。俺たちで良ければ協力します」

「ありがたい! ではラスペランの泉までよろしく頼む」

「はい、ラスペラ――って、あの泉はラスペランの泉って言うんですか!?」

「いや、決まっていないが、我が家の功績が認められれば名前くらい付けさせてくれるだろう? いずれはそう呼ばれる予定なのだから、今のうちになれた方がよいぞ」

「な、慣れろと言われても……」

「まぁ無理に覚えろとは言わない。ちゃんと立て札も作ってきたから安心したまえ」

「…………」


 なんつ~楽天的な男なんだ。まるで宝くじに当たる前から当たった後の事を考えてる奴みたいな言動だな。


「では諸君、ラスペランの泉を目指そうぞ!」

「「「おーーーっ!」」」


 泉に着くまで半日はかかるらしく、道中で現在の状況を聞いてみることに。


「それで、戦況はどんな感じなんです?」

「本格的な戦いは始まっていないからね。どっちの国も犠牲者は出ていないよ」

「え、まだ始まってない?」

「そうとも。今は冒険者ギルドが両国の間に入って停戦状態だからね。彼らが撤退するのは明日の朝だよ」

「ということは、明日になれば即開戦に」

「いや、正式な開戦は一週間後だ。両国で同時に宣言することになっている。それまでは待機することになるが」

「一週間後……」


 さすがに一週間も現場で待つのは退屈すぎる。そう思ったのは俺だけではなかったらしく、メリーとレンが一斉に抗議し始める。


「ちょっと~、一週間もお預けくらうなんて冗談じゃないわ」

「そうだぞ~。戦えるって聞いたから協力するのに、戦えないなら生け贄を用意しろ~」

「ハッハッハッ! 血の気が多くて結構結構。むしろそういった言葉を私たちは待っていたのだよ」

「どういう事です?」

「明日の朝に冒険者ギルドの職員が撤収するのは言った通りだが、その直後と6日後の間は空白となる。実際問題そこを利用して先に占拠してしまうのは有りなのだが、被害を出したくないがために、多くの貴族は様子見に徹するだろう。が、しか~し!」


 一旦話を区切り、ニシシシ♪と意地の悪そうな顔で計画を語り始めた。


「敢えて我々は空白の期間を使い、泉の国有化を進める」

「国有化?」

「簡単に言うと、魔力で泉を覆うことで一時的に封じ込め、丸一日かけてスペール王国の所有物及びチャネル化できれば作戦成功だ。しかし必ずタイアー共和国から邪魔が入るだろう。スペール王国の貴族も見て見ぬふりをするだろうし、厳しい戦いが予想される。それでも、我々は成し遂げねばならない。没落を回避するには作戦を遂行するしかないのだ!」


 あんま詳しくは分からんが、魔力を必要としているらしい。


「さっき魔力で泉を覆うって聴こえたんですけど、それを実行する魔術師はどこに?」

「…………」




「そうだった。魔術師がいなければ作戦を遂行できないではないか……」

「ちょ、そこ肝心なとこ!」


 マルセルに続いて俺まで頭を抱えたくなった。すでに破綻してるやん!


「困りましたねぇ。わたくしもエルフでありながら修行中の身ですし、微々たる魔力しか放出できません」

「私も無理ね。どうも霊力と魔力は相性が悪いみたいで、ネージュ以下の魔力しか使えないもの。ウルの方がまだマシかもよ」

「バウ!」


 当然俺にも魔力はなくどうしたものかと首を捻っていると、レンがドヤ顔で言い放つ。


「魔力ならいくらでも放出できるぞ~?」

「マジか!?」

「マジマジ。ボクにど~んと任せとけ!」

「本当にありがたい! キミたちは我がラスペラン家にとっての救世主だ!」


 さっきまでの沈んだ顔はどこへやら、マルセルは意気揚々と歩き出した。


 やがて日が沈んだところで夜営となり、俺たちも貴族様の食事にありつけることに。


「明日からが本番なのでな。今日のうちに英気を養ってくれたまえ」

「ありがとう御座います」

「おう、遠慮なくいただいてるぜ!」

「ん~~~♪ 英気って言ったら血と肉だよな~、うまうま!」


 礼を述べる俺の横で既にガッついてるレンとタケゾウ。逆隣ではメリーとネージュがワインに夢中になっていて、ウルはマルセルの私兵たちから餌を貰っていた。


「では諸君、食べながら聞いてもらいたいのだが、目的の泉はこの先数百メートルの地点にある。明日の早朝には即座に現場へと移動し、チャネル化の儀式を行う。タイアー共和国からの横やりを退け、1日守り切れば我々の勝利だ。皆の者、明日は頼むぞ!」


 任せろ――と言いたいが、この作戦はレンにかかっている。


「頼むぞレン!」

「まはへほ~!」


 口に肉を詰め込んでて何言ってるか分からんが、とにかく明日は任せるとしよう。


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