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悪霊少女が行く! 俺の相棒は最強最悪の悪霊ちゃん  作者: 北のシロクマ
スペール王国及びタイアー共和国編
32/88

傭兵団と侍の男

 オルロージュ帝国を出て北大陸はフューリの街へとやって来た俺たち。こっちの港も賑わいを見せているものの厳つい顔の男たちが七割を占めていて、ちらほらと殴り合いが発生しているようだ。

 他の街なら野次馬が群がりそうなもんだが、周囲の連中は華麗にスルー。つまり日常茶飯事ってことなんだろう。


「な~んか男臭い街ねぇ。汗の臭いが漂ってそうだし、長居したくないわ」

「な~んだよメリー、喧嘩とかに乱入したら面白そうじゃんか」

「私はパス。面白いのはレンだけよ」

「ちぇ……。いいよ~だ。こうなったら勝手に乱入しちゃうもんね~」

「マジやめろ、フリじゃないぞ!」


 只でさえロームステルのオッサンやレボルなんかに追われてるんだから、これ以上遺恨を作らないでもらいたい。



 ドン!



「キャッ、すみませ――」

「お~うガキィ、どこ見て歩いとんじゃワレィ!?」

「ヒッ!?」


 ネージュがゴツイ体格のオッサンとぶつかっちまった。つ~か子供(←に見えるネージュ)に因縁つけるとか、コイツ終わってんな。


「ぶつかったのは悪かったが、そこまで怒ることないんじゃないのか?」

「ああ!? ガキのくせして大人に逆らおうってのかワレィ! 調子に乗ってんじゃ――」

「はいさぁ!」


 ゴスッ!


「ご!? お……ぉ……」

「な~んだ、デカイ口叩く割には全然弱いじゃん。もっと鍛えてから来なよ。――さ、行こうぜ!」


 俺の出る幕もなくレンが伸してしまった。いや、ぶっちゃけ助かったけども。


「あ~あ、もっと楽しめるかと思ったのにガッカリだなぁ」

「そりゃな。メリーやレンが楽しめる奴らなんざその辺にゃいないだろ」

「そうだな~。そんじゃさっさと――」

「うぉ~~~い!」


 なんだ? 後ろから声が――って、さっきネージュに絡んだオッサンじゃねぇか! しかも仲間を大勢引き連れてやがる!


「待たんかワレーーーィ! 俺たちゃ泣く子も黙るあの有名な傭兵団【戦場の棺】だ! 俺たちを敵に回して只で済むと思うなよ!?」

「っしゃあ! 望むとこ――」

「バカ、逃げるぞ!」


 迎え撃とうとしたレンを強引に掴み、人混みを避けて逃走開始。戦場の棺だか羊だか知らないが、物騒な連中には関わらない方がいい。


「お~い、こっちだ兄ちゃんたち!」

「――ん?」


 誰だか知らんが野武士みたいな男が路地裏から手招きをしている。追手の連中と対立でもしてるんかな。ま、理由はいい。助けてくれるんならお言葉に甘えよう。


「そら、ついてこい!」

「すんません、助かります!」


 路地裏を蛇行するように走り抜け、追手との距離を徐々に離していく。

 しばらくすると諦めたようで、パタリと足音がしなくなった。


「ヒュウ♪ 上手くいったな」

「別にアンタの手なんか借りなくても上手く切り抜けられたわよ。勘違いしないでよね」

「そうだそうだ~。ボクが本気になったら死体を山積みにできたんだぞ~」

「お前ら……っと、すいません。助けてもらっといて……」

「ハハッ! いいってことよ。それに嬢ちゃんたちの言ってることも間違いじゃないだろうしな。俺としちゃ借りを作れれば御の字って思っただけさ」


 二人の強さを見抜いた? この侍、ただ者じゃないな。


「おっと、警戒させちまったか? 別にアンタらを売るつもりはないから安心しな。その代わりちぃとばかし手を貸して欲しくてな」

「ほ~らきた。どうすんのよヒサシ、アンタがホイホイついてくからよ?」

「あのまま撃退すればよかっただろ~」

「……面目ない」


 確かに俺が一杯食わされた感じだな。


「ハハッ! まぁそんなに責めなさんな。それにアンタらにとってもいい話だぜ?」

「フン、どうだか」

「嬢ちゃん典型的なツンデレだなぁ」

「……殺されたの?」

「怖っ! 冗談だから悪霊みたいな顔して睨まないでくれよ。それよりどっか落ち着いた場所で話そうや」


 男に連れられ近くの飲食店へと入った。


「あら~ん、いらっしゃい~ん、タケゾウちゃ~ん。待ってたわよ~ん」

「ハハッ、そいつぁ光栄だ。そっそくだがテキトーに摘まめるものと軽食を人数分頼む。それと冷えたエールもな」

「は~い、かしこまり~ん」


 このタケゾウって男は常連なのか? どう見てもウェイトレスが男なんだが。つ~かよく見りゃ全員女装した男のような……。


「勘違いされる前に弁明しとくが、俺はノンケだからな? さっきみたいな連中はプライドが高いからこういう店には入らねぇ。だから安全なのさ」


 なるほど。そういう意味でよく利用してるんだな。


「は~いお待たせ~ん。あら、よく見たら可愛いボウヤじゃな~い、閉店まで居てくれたらサービスしちゃうわよ~ん?」

「いえ、絶対に遠慮します」

「あら~ん、連れないわね~ん」


 別の意味で安全じゃない気がしてきた……。


「……でだ。これはお前さんらの腕を見込んでの話なんだが、今現在スペール王国とタイアー共和国は領土争いの真っ只中でな、どちらかに肩入れして金稼ぎをしましょうぜって話さ」

「それって戦争に参加するって意味か?」

「ああ、そうさ。ここから北西の山奥に不思議な泉があってな、そこの水を飲むとたちどころに全身の傷が癒えるんだとよ。どっちの国もその泉がお目当てって訳さ」


 そんな嬉しい効果があるなら是が非でも国で管理したがるよな。


「じゃあヒサシも傷を癒してもらいなさいよ」

「何でだ?」

「イシシシシシ♪ 何でもなにも失恋の傷があるじゃない」

「そっか~、アレって失恋だったのか。良かったなヒサシ、傷が癒えるぞ」

「だぁーーーっ、リサとは失恋じゃねぇーーーっ!」

「なんだ、傷心旅行の最中だったかい? そいつぁお気の毒」

「アンタも一言余計だ!」


 ともあれ事情は分かった。泉の存在は興味があるし、一度見てみるのもありだな。


「ったく、そこまで言うなら行ってやるよ。メリーもレンも、それでいいよな?」

「チッ、まさか乗り気になるとは思わなかったわ。でもいいわよ? 戦争に参加するなら合法的に殺せるものね。キヒヒヒヒヒ♪」

「おお、戦争だ戦争。とびちる血渋きが見られるぞ~!」

「決まりだな。今日は休んで明日の朝一番に現地へ案内してやる」



 こうして不思議な泉をめぐる戦いに身を投じてしまった俺たちは、タケゾウという獣人男の案内により泉のある山へと足を踏み入れた。

 その道中でどっちの国に肩入れするかを話し合っているんだが……



「しっかしあれだ。冒険者ギルドが偶然発見したものを国がしゃしゃり出てきて主張するなんてなぁ」

「しゃ~ないさ。隣接してればどこの国も自国のものだと主張する。至極真っ当な話さ」

「それで傭兵が集まっててフューリの街もあんな風になってるわけね。ったく男臭くてホンット嫌になるわ」

「そいつぁ同感だ。傭兵ってのは血の気の多くていけねぇ」

「タケゾウ、アンタもその一部ってことを自覚しなさいよ」

「ハハッ、そいつぁ失礼。んで、どっちにする? 金払いが良いのはタイアー共和国だ。フューリの街もタイアー所有だしな。但し、例の傭兵団との共同任務になるが」


 それは嫌だなぁ……と思ってたらメリーも同じだったらしく……


「【戦争の空き缶】だっけ? あんな連中とつるむなんて死んでも御免だわ。ここはスペール王国一択よ」

「他のみんなも異議なしかい? ならスペール王国側に回ろう」


 山中で密かにスペール王国へと移動し始め、1日挟んで王国側へと入国を果たす。途中でゴブリンと遭遇はしたが、全て問題なく蹴散らしていった。


「ヒュウ♪ やるねぇ。やっぱ俺の見立ては間違ってなかったぜ」

「当たり前よ。ゴブリン程度に苦戦するなら傭兵なんかできないでしょ。それより戦場はまだなの? 雑魚の相手はもう飽きたわ」

「そうだぞ~。ボクたちは殺し合いに来たんだからな~」


 すでにヤル気満々なメリーとレン。ちなみにこの場合のヤル気とは殺る気と書く。


「……あ~、なんだ。最近の子供はちょいと思考が過激すぎやしねぇかい?」

「その二人は特別なんで。ほら、ネージュは普通でしょう?」

「いや、その嬢ちゃんも妙な釣りをやってるようだが……」


 ネージュが歩きながらイレグイを発動させてるからな。お陰で先の二人が退屈せずにすんでたんだ。

 まぁ水辺でもない場所でやってれば変人に見えなくもないか。

 

「でも今日は不調ですね~。以前ならもっと掛かったのですけど」

「そういやそうだな。もっと色んな魔物が寄ってきてもよさそうなものだが」


 なぁんてネージュと一緒に首を傾げてたら、上空から探索していたメリーが目を輝かせながら降りてきた。


「あっちの方で殺気が飛び散ってるわ! きっと戦が始まってるのよ!」

「お~! 戦場がボクを呼んでるぞ~!」

「お、おいお前ら……」


 我先にと突っ込んでいく二人を尻目に、タケゾウは険しい顔で思考している。


「まだ募集してる傭兵が整わないうちに戦が? 先走って奇襲でも掛けてきたか? どっちにしろ旗本が撤退したら報酬がパーだ。急ぐぞヒサシ!」

「わ、分かった!」

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