悪霊メリーVS勇者の孫リーザ
グレンモーゼの師匠リーザの元を訪れた俺たちは、追手を蹴散らし(やったのはリーザ師匠だが)邸の中へと招かれた。
夜遅くってのもありフィルンとネージュには寝てもらい、俺とメリーはテーブルを挟んでリーザと向き合う形に。
「さて、順序が逆になったが改めて名乗ろう。我が名はリーザ、勇者アレクシスの孫にして勇者の末裔である」
「俺は久、足利久だ。冒険者に成ったばかりのどこにでもいる旅人だよ」
「私はメリーよ。久の相棒――とだけ言っておくわ」
「ふむ、どこにでもいる旅人にそのパートナーのぅ……」
どこか胡散臭そうにメリーを見るリーザ。まさか悪霊云々に気付いてるとか? いや、神であるオルド(←様を付けんかバカ者が。byオルド)でも俺とメリーを引き剥がせず一心同体になっちまったんだ。そうそう看破できたりはしないか。
「何か文句あんの? 言っとくけど喧嘩売るなら買ってやるわよ?」
「はぁ……喧嘩っ早いやつぞよ。コヤツは誰にでもこうなのか?」
「まぁ基本的には。でも俺にとってはなくてはならない存在なんで」
「ふむ、確かにお主とメリーとの間にリンクが出来上がっておるぞよ。なんぞ特別な理由が有りそうじゃが……」
特別なのは確かだ。なんせ俺は転生者な上に神まで関わってんだからな。しかもメリーに至っては悪霊ときたもんだ。問題はそれを話して理解してもらえるかだが……話さない方が無難だよなぁ。
「まぁいいわぃ。素性をいちいち詮索するのは無粋じゃしな。それよりお主ら、あの追手共はどこの者ぞ?」
「知ってたら苦労しないわ。こっちが知りたいくらいよ」
「ふむ、やはり知らんか。まぁ奴らが帝国と名乗った以上、絞られてはくるがな」
そういや我が帝国とか口走ってたっけ。
「サザンブリング王国に近い帝国は三つある。北東の島国ダンノーラ帝国、北の軍事大国プラーガ帝国。そして西の大陸に構えるオルロージュ帝国ぞよ」
「そのいずれかの国がサザンブリング王国にちょっかいを出してきたってわけか。でもフィルンを託したんだし、俺たちには関係は――」
「――ないとは言えんぞよ? お主らも片足を踏み込んでしまったのだし、狙われる理由としては充分ぞよ」
「……マジで?」
「マジぞよ」
そこまでは考えてなかった。これからもレボルに付きまとわれる可能性を考えるとすんげ~テンション下がる。
「別にいいじゃない。襲ってくるならブチ殺すまでよ」
「これまたえらく好戦的な小娘ぞよ。戦いに飢えとる感すらあるわぃ」
「ちょっと惜しい。私はね、戦いたいんじゃなくって痛め付けたいのよ。抵抗虚しく死んでいく様を見るのが大好きなの。どっかに拷問してもいい奴がいたら紹介して」
「そんな輩、ワッチの前に現れたのならとっくに殺しておるぞよ」
「それは残念」
「但し……」
場の空気が急激に凍りつく。リーザが立ち上がり、殺気を放ったからだ。俺とウルが縮こまる中、メリーだけは平然と座っている。
「ワッチで良ければ相手をしてやるぞよ? 特にメリー、お主からはただならぬ邪気を感じよる。只の冒険者ではあるまい?」
「只の冒険者ではないけれど、アンタと戦うのは遠慮するわ」
「なんじゃ、ちょいと殺気を放ったくらいでもう根を上げるか」
「違うわよ。アンタを殺しちゃったらフィルンの面倒をみれないじゃない」
「フッ、抜かせ小娘。こう見えても勇者アレクシスの孫ぞよ。簡単に死んだりせん」
「上等よ、そこまで言うなら相手してやるわ!」
二人が連れ立って外へ向かい、俺とウルも後を追う。外に出た瞬間、凄まじい魔法が周囲を飛び交い始めた。
「ウィンドカッターぞよ!」
「無駄無駄、そんなへなちょこ刃なんか当たりはしないわ」
ワイルドホークが放っていたのと同じ魔法がメリーを襲う。だが身軽なメリーは軽快に避けてみせる。
「中々やりおる。ならばこれでどうじゃ――ウィンドカッタープラスぞよ!」
「数を増やしたところで無駄なのは同じよ」
さすがに避けきれず幾つかは命中――かと思いきや、メリーには物理不通があり、リーザの魔法はどれもすり抜け掠りもしない。
「なるほどのぅ。お主が強気な理由がよく分かったぞよ。その様子だと魔法どころか全ての攻撃は無力化される――といったところか」
「その通りよ。誰にも私は倒せない。無敵と言っても過言ではないわ」
「ならば攻撃手段はどうぞよ? まさか防御が得意なだけではあるまい?」
「いいわ。そろそろ攻勢に出ようと思ってたとこだし、各の違いを見せてあげる!」
バチバチバチィィィ!
「チッ、また結界!」
「どうした? 結界を壊せぬのならワッチを倒すことなど出来んぞよ?」
「クッ……」
悪霊ならではの恨めしそうな顔で睨み付けるメリー。結界の内側へと入らなければ幻要さえ効かないらしい。
「ん?」
このまま引き分けかと見守っている中、不意に俺と目が合った。そして何かを思い付いたようで、ゾクリとしそうなニヤケ顔で俺の方へと飛んで来た。
「いいこと思い付いたわ」
「な、なんだよ、俺は戦えないぞ?」
「別にいいわよ? ちょっと身体を借りるだけだから――憑依合体!」
バチン!
「いっ――――い?」
メリーが俺に体当たりをかました気がしたが、不思議と痛みは感じない。おまけにメリー本人が消えてるし、いったい何が――
『は~い、そのままおとなしくしてて。後は私が動かすから』
「――ってメリー! まさかお前、俺に憑依しやがったのか!?」
『アイツの鼻っ柱を折るまでの間だけよ。終わったら返すから、その間は口も動かさないでちょうだい。下手すると舌噛んじゃうから』
「お、おぅ、分かった」
仕方ないからメリーに任せてみることに。
『「さ、仕切り直しよ」』
「その声……まさかメリーぞよ? 消えたと思ったが、久の身体に入り込むとは……」
『「感心してる場合じゃないわよ。私の本体だと無理でも、久の身体なら――」』
バキィィィィィィン!
「なっ!? 結界が破られたぞよ!?」
『「フッ、この通りよ!」』
メリー(に操られた俺)が飛び上がり結界に触れると、予想外にも砕け散った。
「どういうことだ?」
『「私単体だと弾かれるだけで終わるけど、久と合体したことによって私と久との間で中和されたのよ」』
「なんだその化学反応は……」
『「なんでもいいじゃない、上手くいったんだから。それよりまだ終わってないんだから、口閉じてなさいよ」』
「おぅ、すまん」
結界を壊されたことで動揺しているリーザへと一気に詰め寄る。
「もう逃げられないわよ!」
パシッ!
「か、身体が――動かんぞよ!」
メリーの手が触れたことにより接触不動が発動。完全に動きを封じたので、リーザは負けを認めざる得ない。
「分かった、ワッチの負けぞよ。まさか勇者ですらない者に負けてしまうとは……」
『「結界は厄介だったわよ? お陰で使いたくもないスキルを使っちゃったし――」『よっと!』
勝敗が着き、メリーが俺の身体から出てきた。
「でも便利なスキルじゃね? 寧ろ憑依してくれてた方が俺的には助かるような」
「でもあのスキル、めっちゃ強力なデバフが掛かるからかなり危険よ?」
「デバフ!?」
「そう。悪霊の私が憑依するんだから有りとあらゆるマイナス効果が発揮されるわ」
「た、例えば?」
「回復しようとしたら逆に体力が経る、蚊に刺された程度でも相当な痛みが伴う、何か食べようとすると喉に詰まらせる、飲み物なら気管に入る、暖まろうとして暖炉に近付くと即座に燃え移る、外に出掛けると犬のフンを踏む、グラスを手に取ろうとしたら破裂して手に突き刺さる、女の子に告白したら必ず玉砕する、魔物に出会したら真っ先に襲われる、魔物に襲われてる女の子を助けたら強姦魔と勘違いされる、しゃっくりが出始めると止まらなくなる、宝くじを買っても絶対に当たらない、冒険者ギルドに入ると必ず因縁をつけられる、等々よ」
これらが一斉に訪れると思うと二度と使ってほしくない気がする。
「なるほどのぅ。それほど強力なデバフなら、バフ効果のある装備品を身に付けてるという手もあるぞよ。――ほれ、魔石で加工した腕輪ぞ。身に付けてみぃ」
高そうな腕輪を受け取り、さっそく嵌めてみた。そこへメリーが憑依すると――
パッキィィィン!
「あ……」
粉々に砕け散った。
『「あ~あ、砕けたわね。あの時の告白と同じように。イヒヒヒヒヒ♪」』
「俺の切ない失恋エピソードを茶化すのはヤメィ! つ~か何で知ってる!?」
『「テキトーに言ったんだけど、マジだったの?」』
墓穴掘った……。
「まぁお主の失恋はどうでもいいが――」
「いや、酷くない?」
「それほど強力なデバフとあらば逆に興味が湧いてくるぞよ」
「スルーですかそうですか……」
「実はのぅ、全てのバフ効果を反転させてしまう呪いのアイテムがあるのだが――」
何やら気になるワードを放ち、邸の中から一振の禍々しい剣を持ち出してきた。もう鞘の状態からしてドス黒いオーラが立ち上がってるし、見た目だけで曰く付きだと分かるくらいだ。
「これじゃ。この剣は魔剣アゴレントといってな、己にかけられているバフ効果を全てデバフ効果に変えてしまうという非常に厄介な剣であるぞよ」
「いや、いらねぇッス」
「そう言うでない。メリーの話が本当なら、凄まじい効果を得られるぞよ?」
「嫌だっての」
「普段は鞘に収めておけば安心ぞよ?」
「ノーセンキューで」
「女の子にモテモテになるぞよ?」
「譲って下さい、お願いします」
誘惑に負けてアゴレントを受け取ってしまう俺。見た目がアレだが、戦闘では役に立つと前向きに考えることにした。
「ふぅ、よかったよかった。強引に処分しようとすると強力な呪いが発動してしまうようでな、扱いに困っておったのだよ」
「厄介払いかよ!」
騙された感が凄まじい!
メリー:Lv???
発覚スキル:憑依合体
久への専用スキルで、普通の憑依とは違いメリー本来のスキルも使用可能。但しデバフにより超絶不運体質になる。




