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オートマタ

「メリー!」

「分かってるっての――幻要(イリュージア)!」

「な、なんだこれは!?」


 幻に包まれた追っ手が困惑し、辺りをキョロキョロと見渡し始める。


「よし、今のうち――」

「逃がさん!」

「うわっ!?」


 走り出そうとした瞬間に何かが足に絡み付き、おもいっきり転倒しちまった。足にはロープが巻き付いていて、それを男の1人が手にしている。


「まさか幻覚スキルの所持者がいるとは恐れ入ったが、生憎と俺には通用しない。死にたくなければおとなしく従うことだ」

「アンタに従う? バカバカしい、寝言は寝て言いなさい――ウル!」

「バウッ!」


 ガブリ!


「グッ、ロープが!」


 ウルが男の手に噛みついて弾みでロープを手放し、その間に俺もロープを解くことに成功した。


「フン、遊びたきゃ()()で遊んでなさい――念始動接(ムーブキネシス)

「バカめ、逃がさんと言った――ぬぉ!?」


 メリーがロープを拾って男に投げつけると、まるで意思があるように絡み付いた。その隙に俺たちは再び走り出す。


「すげぇな。お前いったいどんだけスキル持ってんだよ」

「まだまだ有るけど、気が向いた時だけ教えてあげる」

「その返答、教える気ねぇな」

「それどころじゃないんだから、足元に注意して走りなさい」

「へぃへぃ」


 それからしばらく走り回り、目についたスラムの廃屋で夜まで身を隠した。幸いにして騎士団や工作員に見つかることもなく、日が落ちたのを見計らい街から脱出することに。


「だいぶ暗くなってきたか」

「そろそろ行きましょ。暗いから顔を見られるリスクも少ないんだし、今なら街門だって手薄でしょ」

「そうだな」


 メリーに促され、意を決してスラムから出てみた。思った通り人通りは疎らで、ローブ(俺の場合はパーカーのフードだが)を深く被ってりゃ目立つこともないだろう。


「地図によると王都への門はこっちだな」

「ほぅ、目的地は王都か」

「当たり前だろ? 今さら何言ってん――」



「残念だが、王都への旅行はキャンセルだ。おとなしくついてきてもらおう」

「んげっ!?」


 振り向けばさっきの工作員が。まさか表通りにまで現れるとは。


「走れぇ!」

「は、はいぃ!」

「バウッ!」


 またまた走り出す俺たち。メリーのスキルを警戒してか、スキルが効かなかったリーダーらしき人物だけが俺たちを追ってきていた。


「ったく、しつけぇなアンタも。女の子の誘拐なんざ恥ずかしいから止めとけよ」

「そのような挑発は無意味。俺は任務を遂行するまでどこまでも追い続ける。それが我々自動人形(オートマタ)の勤めなのだ」

自動人形(オートマタ)!?」


 さすが異世界。そんな野郎まで存在するとは。――等とちょっぴり感心していると、メリーからの念話が届く。


『スキルが効かない理由が分かったわ。コイツみたいな神経の通ってないタイプには影響しないのよ』


 マジかよ、ますます厄介だな。


「久さん、メリーさん、街門が見えてきましたが、正面で騎士団が待機しています!」

「あのロームステルとかいう騎士団長までいるじゃねぇか!」


 しかもこっちに気付いた騎士団が門を閉じようとしてやがる!


「もう逃げられんぞ不審者共。おとなしく捕縛されるのだ!」


 クッソォ、オッサンのくせに夜勤残業してんじゃねぇ!


「どうするメリー、こっちの正体はバレてるし、誤魔化し切れないぞ?」

「なら強行突破しましょ。門はなんとかするからそのまま走りなさい」

「分かった!」


 シュン!


 目の前で消えたメリーが門番の傍に瞬間移動し、ササッと腕に触れていく。ついでに騎士団にも触れていき、大半の騎士団が動けない状態に。


「ええぃ、どうなっている! さては小娘、貴様の仕業だな!?」

「邪魔されたんだから当然よ。じゃ、そういうことで~♪」

「ま、待て――――ええぃ門番、さっさと門を閉じないか!」

「ダメです、腕が動きません!」

「クッソォォォ!」


 悔しさを(にじ)ませる騎士団長を横目に門を潜って脱出に成功。だが厄介者もついて来てるため、このままにはしておけない。


「ホンットにしつこいわねぇ。二度と起き上がれないようにしてやろうか?」

「やってみろ。五体満足な限り、俺はお前たちを追い続ける」

「フン、上等じゃない。私に楯突いたこと、後悔させてやるわ!」


 ――と、ここで逃走を止めて反撃に出た。メリーの手には漁村で入手した草刈り鎌が握られている。



 シュン!



「首がお留守よ!」

「――クッ!」


 ガキン!


 背後から首を刈ろうとするが、ギリギリのところで防がれた。そこから2、3打ち合うも相手の体勢を崩すに至らず、仕切り直しで距離を取る。


「終わりか? ならばこちらから行くぞ」



 ザッ!



 かなりの手慣れらしく、瞬時にメリーの懐へと飛び込む工作員。


「まずはお前から片付けるとしよう――死ねっ!」

「ムダよ」



 スッ!



「何っ!? 背景と同化し、俺の攻撃を避けただと!?」

「言っとくけど、いくら不意をついてもムダよ? このスキルがある限り、私に致命傷を負わせることはできないんだもの」


 得意の物理不通(フィジクスルー)で、男のダガーを自動回避。本当に神スキルだな。


「なるほど。だが致命傷を負わせられないのはお前も同じではないか? それに持久戦となれば、自然とお前が不利になる。これが生身の身体と自動人形(オートマタ)の違いだ」

「プッ――生身ですって? 私が生身の状態でいるとでも思ってるの? やれば分かるけど、どんだけ時間を費やしたところで物理的な影響は受け付けないわよ」

「フン、戯言を。ならば耐えてみせるがいい――ファイヤーストーム!」


 4つの火柱がメリーを包囲し、グルグルと回り出す。徐々に範囲も狭まっていき、並の人間なら成す術もなく燃え尽きちまうだろう。


「他愛もない。さて、次はお前たちの――」

「まだ終わってないけど?」

「な、生きているだと!? 貴様、どうやって炎を回避した!」

「だから避ける必要なんかないんだって。言ったでしょ? 物理的な影響は受けないって」

「フッ……」

「ん?」



「フハハハハハ! 面白い、これまで戦ってきたどんな敵よりも面白いぞ!」

「何よ突然。頭がおかしくなったの?」

「ハハ、そうかもしれんな。何せここまで手こずらせたのはお前が初めてなのでな、その出会いを祝して名を名乗ろう。俺の名はレボルだ。覚えておくがいい」

「どうでもいい自己紹介をどうも。じゃあさっさと死んで」


 パシパシパシッ!


「ぬぐっ!? 身体が――動かん!」


 もう一度瞬間移動を行うと、接触不動(ムーヴロック)で手足と胴体を動かなくした。


「生憎だったわね。このスキルは生命体以外でも有効なのよ。最後に学習できて良かったわね。じゃあさようなら」


 咄嗟(とっさ)にフィルンたちの目を腕で隠す。何でかって、メリーが草刈り鎌でズタズタに――な? 子供には刺激が強すぎるからな。


「は~い終了~。これで邪魔者は――」

「そこにいたか貴様ら~~~!」

「げげっ、ロームステルのオッサンじゃねぇか!」


 接触不動(ムーヴロック)が切れたらしく、馬に乗って追いかけて来やがった。しかも部下まで連れて来やがったよ。


「ホンット次から次に。しつこい男は嫌われるわよ――幽手(マットハンド)!」


 ズボッ!


「そこを動く――ぬあぁぁぁぁぁぁ!」


 ドシン!


 土の中から延びた手が馬の足を掴んだため急停止。弾みでオッサンが放り出された。


「ほら、今のうちに逃げるわよ」

「あ、ああ」

「いき行きしょう!」

「バウッ!」


 メリーがバラしたレボルの残骸を残し、俺たちは王都へと駆け出すのだった。



★★★★★



「だ、大丈夫ですか、団長殿?」

「うむ。顔から突っ込んだが大丈夫だ。どこも怪我はない。寧ろ二枚目の顔にキズがついたことの方がよっぽど痛いわぃ」

「そ、そうですか」

「それにしても……」


 ロッカの騎士団長であるこのロームステルが手玉に取られるとはな。やはりあの者たち、只者ではない。

 しかし何故フィルン王女を連れ回している? 向かった先も王都のようだし、奴らの目的がまったく分からん。それにフィルン王女が積極的に関わっているようにも見えるし、いったい裏では何が起こっているのだ……。


「だ、団長、これを!」

「どうした? なにか手掛かりでも見つけたか?」

「はい。どうやら先ほどの奴らと争った者らしいのですが……」


 部下が見つけた亡骸を松明で照らす。だが……


「これは……自動人形(オートマタ)か」

「それだけではありません。この者の首に刻まれているタトゥー、これは裏家業に関わっている者の多くにみられる印です」

「つまりは闇ギルド、もしくは特殊部隊か」


 まさかあの連中、そんな危険な者たちを相手にしているというのか!? だとしたら……

メリー:Lv???

発覚スキル:念始動接(ムーブキネシス)

手にした物をしもべのように使役するスキルで、間接的に襲わせることも可能。離れ過ぎると効果は失われる。


久:Lv4

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