No.4 差別
「ねぇ、お願い!私達を助けて!ルーク、貴方なら瞬間移動でセイレムの森まで行けるでしょう!?」
「お断りします。それに何ですか?その態度は。エレメンタリースクールからやり直した方がいいですよ。Ms,ルビア」
「くっ、何なのよアイツら!!こっちの方から願い下げよ!!」
バスから降り、カレッジの中庭方面から言い争う様な事が聞こえたので来てみれば、丁度一年前お会いしたルビアさんがいた。
凄い形相で男子生徒を見つめているものの、彼らはそれを無視して廊下を歩いている。
その異常事態に咄嗟に足が動き、彼女の元に向かう。
「ルビアさん、大丈夫?何かあったの?」
「貴方、シャトランスの...。お願い、私達を助けて!!貴方達なら知ってるでしょ!?“女殺し”“魔女狩り”が出たのよ!!セイレムの森にいる筈なの、最悪カレッジにまで来るかもしれない」
「詳しい話をお聞かせ願います。それは本当ですか?」
「...ロンドン塔の番人がここにいるって事は探しに来たのね。いいわ、話してあげる」
そのあと、ルビアさんからセイレムの森での出来事を聞いた。
一緒に聞いていたタマミちゃんとシュン君は最初茫然としていたが、最後は顔を伏せ怒りを露わにしていた。
「惨い、惨すぎる。今までの状況と明らかに違いすぎる。無差別殺人の可能性が高いな」
「いえ、ジャッチは女しか殺しません。意味のない人殺しを彼は望んでいないからです。男を殺したら穢れると言っていましたから」
「ならまず、自分が最初にくたばればいいのよ。私の機動魔法でも運べる人員に限界がある。だから、アイツに頼んでんのに無視されるし。本当に最悪」
「そんなにカレッジの生徒達って仲が悪いの?...いや、ペルケレ先生やジャッチの母校なら完全にそうなんだろうね。なんとかならないかな?この際、利益的でも良い、打算的でもいい。超能力のある生徒を引き出さないと。勝機がないよ」
「だったらさー、私達が仲介役になれば良いんじゃないかなー?このカレッジに私達が呼ばれたのって、そう言う意図があるんでしょー?守護霊、魔法、超能力。皆んな違って皆んな良い。対立する意味がないんだよー。優越をつける意味もねー」
「確かにそうだな。カレッジの中に1人ぐらい理解してくれる人はいないだろうか?そんなに学科同士の対立は深刻なのか?」
「深刻以上の伝統と化してるのよ。1人が庇えば、周りは敵になる。その1人は居場所を無くして退学するか、存在そのものを消してしまうわ。多い方が正義なの。貴方達も分かるでしょ?この世は多数決で決まるのよ」
「なら、私達の勝ちですね。大丈夫です。私の理想郷はその為にありますから」
「ペルケレ先生?どうされたんですか?いきなり?」
「カンナさんにお話しましたよね。多いのは正義だって。私の理想は伝統に惑わされない共学の男女仲の良い学園を作る事でした。霊感はこのカレッジでは超能力に入りますけどカースト的には底辺です。霊しか見えない私は魔法を使える彼女達にいじめられていました。同じ思いをして欲しくなかったんです。
次世代の生徒達が怯えながら暮らすのは嫌でしたから」
その割には生徒を商品として売り捌いているあたり、このカレッジよりエグい気がするのだが今はスルーしておこう。
「このカレッジの生徒はそんなに多くありません。異能力学科の定員は150名です。言う事聞かないなら、聴かせましょう。脅せば良いんです」
「...先生、もしかして母校がお嫌いなんですか?大人の余裕が皆無なんですけど。当時、相当苦労されてたんですね」
「それがハングリー精神に生かされてるのは言うまでもないですけどね。同級生の中で一番成功していると思ってますから。脅すかは別として、彼らに協力して貰う他に案はありません。魔法医薬学科はルビアさんを残して全滅。約200名の生徒の命を奪った代償は重いですよ。隠蔽工作にも限界がありますからね」
「アイツの頭は狂っている。10年も前から一緒にいて良く可笑しくならないなと感心している自分もいる。国王陛下からのご命令だから従っているだけで本当なら初対面で殺している。ペルケレ先生、もう良いでしょう?BIG7など、いつでも補充できる。代わりはいます。討伐許可を私に」
「分かりました。これ以上は人災と変わりありませんからね。上の方を説得してきます。守護霊使いの管理は私が握っていますからね。では、10期生の皆さんはこれからお世話になる寄宿舎の方に向かってください。異能学科の生徒への説得はそれからでも充分でしょう」
カンナ&タマミ&シュン「はい」
そのあと、私達はカレッジの寄宿舎に向かった。
No.4を読んでいただきありがとうございました。
次はNo.5「遥か彼方」をお送りします。