No.3 ロンドン塔の女
ロンドンに流れるテムズ川を挟み、要塞や城、そして牢獄の機能を持つ「ロンドン塔」へと私達は向かう。
『おい、バカンナ。アレを見ろ。俺様の仲間じゃねぇか?』
「...あっ、本当だ。こんな所にもカラスがいる。確か守り神なんだっけ?イギリスでもカラスは神聖視されてるんだよね」
ロンドン塔には常に6羽のカラスがいなければいけないというしきたりがある。
ロンドン塔の崩壊は英国の崩壊と言われているからだ。
それと共に、此処には亡霊がいる。
中に入りガイドさんに案内して貰っていると、見てしまった。
「ねぇ、カンナ。アレってもしかして...」
「うん、アーリフ君と私の考えが一緒ならアン王妃の亡霊だよね...仕方ないんだけどさ」
何度も「エリザベス!、どこに居るの!」と言っているようだ。
アン王妃はエリザベス1世の母親、もしかしたら娘を探しているのかと思っていたら違う女性が地下から出て来た。
私達と同じ様に、フラミンゴの守護霊を持つ女性だ。
真っ白の服装で、綺麗な翠の瞳とボブヘアーの金髪が映える。
「私なら、此処におりますよ。王妃。どうなさいましたか?」
「お客様よ、ほら。彼方にいらっしゃるでしょう?」
そう言いながら私達の方を見つめている。
その言葉を合図にエリザベスさん?がペルケレ先生に近寄っている。
「ペルケレ先生、ご協力感謝いたします。此方がシャトランスの生徒さんですね?ジャッチがまだ脱獄し、現在でも行方不明の状態です。早く捕まえなければ...」
「えぇ、分かっています。いつもヴィクトリアさんに負担をかけていますから。今回は私達も手伝わせてください。まずはカレッジの生徒さん達と合流しましょう、私達に同行していただけますか?」
「彼方のカレッジには「瞬間移動」や「千里眼」などの捜査能力に優れた生徒がいると聞いています。何か、手がかりがあるかも知れませんね」
(あの人がヴィクトリアさんなんだ...凄い真面目そう。BIG7の一人なんだよね。後で話聞けるかな?)
そのあと、バスに乗りカレッジに向かう途中運良く座席が近かった事もあり、彼女に話をする事にした。
「あの、ヴィクトリアさん。ジャッチさんってどんな人物なんですか?危険人物なのは私達も周知しているのですが...」
「アイツは大の女好きで女嫌いだ。ペルケレ先生より拗れている。殺したい程、女を憎んでいるんだ。一方的にな。迷惑な話だ」
「ヴィクトリアさん、さりげなく私をディスらないでください。自覚しているとは言え傷つきますから」
「そうですか、失礼致しました。捜査で疲れていましたので、つい本音が出てしまいました」
(あはは...ヴィクトリアさんもイギリス人だな。皮肉が効いてる)
「ロンドン市内を探し回ったが何処にもいなかった。かなり危険な状態だ。...此方に来ているとしたら、もっと危ないだろうな」
「カレッジにですか?...もしかして、嘘でしょ。ジャッジさんは」
「生徒を殺害している。アイツが女嫌いになったのは男女の対立が深刻だったカレッジが全ての元凶だ」
ロンドン郊外・セイレムの森
「早く、此処から逃げて!!ゴホッ、ゴホッなんて炎なの。あの男性は一体」
「見ーつけた♪君が最年長の生徒かな?若い子ばかりだからさ。殺すのに躊躇したよ」
「その割には、あっさり殺していますわね。貴方は何者ですか?魔女狩り、女殺し?白魔女の私でさえも手にかけようとするのですね」
「エライア様!!早く絨毯にお乗りください。...他の者は治癒魔法でも間に合いませんでした。貴方だけでも、カレッジに!」
「させる訳ないじゃん、そんな事。ブル、顕現。彼女を閉じ込めて。殺すから」
「エライア様!!」
「ルビア、お願い。カレッジに伝えて。セイレムの森にいた生徒は貴方以外全滅。至急、援護を要請します。お願い、早く!」
「ブモモモモモモ!!」
「ファラリスの雄牛」に入った者の断末魔は人の叫びにはならない。牛の哭き声として変換される。
金属の雄牛を火で炙り、中の者を蒸し殺す。
どんな可憐な声を持っていようとも、最期は雄牛の哭き声にしかならないのだ。実に呆気ない。
「この卑怯者!!貴方なんかどうして生まれて来たのよ!!絶対に地獄に突き落としてやる!!待ってなさい!!」
「わぁ、ありがとう。新しい女性を連れてきてくれるのか。楽しみに待ってるよ。ルビアちゃん」
「くっ。モビリータス・マーニア(高速)、カレッジに急いで!!早く!!」
No.3を読んでいただきありがとうございました。
次はNo.4「差別」をお送りします。