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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

キレイなままでいて

作者: 荊汀森栖
掲載日:2020/12/18

 きれいなひとだと思った。

 傷ついた獣のような、純粋な目をしていた。

 僕は、このひとに関わってはいけないと思った。


 軽い調子で絡まれるのは不快だった。

「俺と付き合って?」なんて、目が合った瞬間に口にした先輩。

 嘘みたいに、軽く。なんでもないよ、って調子で。

 僕はキュッと唇を噛む。

 胸が苦しい。

「お断りします。」

 拒絶以外の言葉が吐けない唇を、僕は噛む。

 触れるために伸ばされた手を叩き落とし、抱き締めるために広げられた腕を突き放す。

 強引なくせに、僕が本気で嫌がる一線をちゃんと見極めている。

 苦痛に慣れ切って。現実との境界が崩壊してて。自分自身の存在すら曖昧になっていたのに。

 先輩が僕の輪郭を優しい指でなぞるから。僕は僕の形を思い出しそうになる。

 醜い僕が暗闇の底から浮かび上がる。

 おぞましい僕は、グズグズに崩れる肉で先輩にすがってしまいそうになる。

 僕が僕であるために、先輩を利用する。そんなの許されない。

 僕に触れてはいけない。


 先輩は、キレイなままでいて。


 輪郭が曖昧になる。

 僕は先輩が欲しい。

 許されない。

 先輩を見て、話している間だけ正気でいられる。

 嘘にまみれた空っぽでいられなくなる。

 先輩で満たされたい。


 駄目。触らないで。キスしないで。

 輪郭のある僕は震える。


 キレイなままでいて。僕に汚されないで。


初出 2018.05.28 Twitter


『溺れる月』の花月。

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