ゴブリンについての報告書
(古代歴3257年 火除き鼠の第二週 帝都商業区の東、七色孔雀の踊り子亭にて傭兵ヘーゲルより聞き取り)
ゴブリンについて?
まぁ、話せない事もないがそう言うのは学者先生の仕事じゃねえのか?
……は?私が学者です?
そんなに小さいなりしてんのにか?と言うかなんで俺みたいな食いっぱぐれ傭兵に聞くんだよ。
調査書作成の為の聞き取り調査?
よく分かんねえが、飯を奢ってもらった以上アンタが誰でも文句は言わねえさ。
それで……、ゴブリンについてだったか。
正直、ゴブリンって言われても困るんだよな……。
学者先生なら知ってるだろうが、奴らの交尾に種族は関係ないらしくてな。
昔はどうだか知らねえが、今となっちゃあ、色んな血が混ざりまくってて、ゴブリンって一口に言っても、見た目は色々だ。
耳が長い奴、全身が毛に覆われてる奴、指と指の間に水掻きを持ってる奴。
亜人*やら魔物*やら動物、果ては俺たち人間にまで手を出して子供を作るんだからゴブリンってのは種族で一纏めには出来ないのさ。
しかも、ゴブリン同士で子どもを作ることも有るんだからそりゃあ増えに増えてあっという間に大軍勢になるし、妙な奴等も生まれやすくなる。
ん…?あぁ、滅多に雌のゴブリン*ってのはいねえんだが、偶に居るんだよ。滅多に見ねえけどな。(個体分布数は不明。目撃情報少。雌のゴブリンについての調査が必要?)
それで、まあ、アイツラには我慢ってもんが無いからまわりにあるもんは全部食い尽くしちまうし、周りの生物は全部は孕み袋にしちまう。
最終的には食料がなくなっちまうから共食いしあって、普通ならそこまで増えねえし、基本的には混ざりすぎて弱っちいんだがな。
たまーに、現れる強い奴らがこれまた厄介なんだよ。
滅多に現れるものでも無いんだが、如何せん数が多い上に、大体そいつ一体しかいないからな……。
対処が立てにくい上に、普通の群れの中に一体だけいるもんだから若い奴らがやられるんだよ。
多分俺が戦っただけでも十何体かはいるんじゃないか?
できれば一体一体の話を聞きたいって言われても、所詮ゴブリンだからなぁ……。
正直、ほとんど覚えてねんだわ。
まあ特に覚えてる奴と言われたら、やったら硬い鱗と爪を持ってた奴と、わけの分からねえ魔法を使ってきた奴の2体だな。
鱗の方はこっちの攻撃が全く通らねえ癖に鎧には穴を開けてくるし、魔法を使ってきた方は何か攻撃は当たんねえわ、こっちは何か吹き飛ばされるわで散々だったよ。
まあ鱗の方は今となっちゃあ俺の相棒なんだがね(そう言いつつ、着ている鎧を撫でる)
あぁ、あと有名な奴だったらキングだとかジェネラルだとか言う奴とも戦ったな。
まあこいつらに関しては、俺の旅団(、評判を調べておく事)総出でやりあったから特別強いって感じもしなかったが、ゴブリンの強さじゃあねえわな。
これ以外は特に覚えて無えんだが、こんなもんで良いのか?
ん?服装や武器も聞きたいのか?
別に俺は構わねえが、アイツラ本当にバラバラだぞ?
獣じみて毛まみれで爪で襲ってくる奴もいるし、人間みてえに鎧と武器持ってる奴もいた。
大体は棍棒やら爪だが紐を結んだ石で狩りをしてる奴もいたし、罠みてえのを仕掛けてる奴もいた。
武器なんかは大体鹵獲してるみたいだが、魔法が使える奴がいたらそれなりにちゃんとしたのを持ってる事が多かったな。
食べてる物に関しちゃあ専門家でも無えから良くわからんが、生肉が多いんじゃねえかな。(魔力は血に宿る)
大体ゴブリンの住み着いた辺りからいなくなるのはまずは動物らしいしな。
まあ植物なんかを食ってた奴もいたが、多分アレは変わり種だろうよ。(特徴からチコの実と推定。魔力保有量が多い事で知られる)
狩る時の注意……、って言われても、種類が多いんだから色んな対策しとくかねえわな。
取り敢えず見た目は弱そうでも良くわからんチカラやら毒を持ってる奴もいるから、解毒薬位は用意しといたほうがいいんじゃないか?
ついでに多くは無いが飛び道具を持ってる奴もいるから、頭は守っといた方がいいか。
後、武器なんかも手入れされてねえから傷口が膿まない様に、清潔な布と水、傷薬か薬草くらいはあると便利だな。
暗闇でもこっちの事が見える奴らも多いから、できれば野営はせずに昼間に仕留めることと、弱いって言っても数が多いから油断はしない事も大切になるのかね。
それから余り深追いしないことも大切だな。
こいつらが逃げるって事は相当こっちが強いか、アイツラに何か策がある時なんだが、大体油断して深追いした奴らは痛い目にあってる。
アイツラの方に地の利があるから当然なんだが、傭兵が獣狩り用の罠に引っかかってゴブリン殺されるんじゃあ、笑い話にもならねえわな。
とまあ、こんなもんか。
まだ質問はあるか?
無い?なら良し、アンタも飲んでけよ。
まあまあ遠慮せず、軽く一杯な。