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青銅騎士団の証(5)

 まったり続いております~。

 二コラに青銅ブロンズ騎士団の訓練場に案内された。


 訓練場は、神殿の西と貴族街の北との丁度境目にある。

 立地の苦労が窺える場所だ。


 そこでは、数名の騎士たちが、互いに剣を打ち合い、訓練に励んでいた。

 いくら訓練用に刃をつぶしてあるとはいえ、鉄のかたまりがぶつかり合う音は、それだけでも場の空気を圧している。


 剣をしらない私でもわかる。


 ここにいる騎士たちは、強い。

 そしてこの剣が通らぬほどに、炎銀パイロス騎士団は強いという。


 二コラについて詰所に行くと、そこで青銅ブロンズ騎士団の長である、セルドア伯ルイス様にお目通しされてしまった。


 貴族に会うとは聞いてない。


 とりあえず貴族に対する使用人の礼をとり、そのまま二コラの後ろに控えることにした。

 一応二コラは私の雇い主になるのだから、間違ってはいないだろう。


「どうだろう?ルイス様。

 俺はこいつに一度、炎銀パイロスの連中を見てもらいたいのだが」

「なるほど、魔法のことは魔法使いに聞くのが一番、ということか」

「なんとかならないだろうか」

「ふむ」


 セルドア伯は値踏みをするように、さきほどからこちらをじっと眺めている。

 落ち着かない。


「名はなんという?」

「伯爵様に名乗るほどのものではございません、ただ、魔法使いとお呼びください」


「なるほど……。それなりの魔法使いのようだな」


 その言葉に驚いたのはこちらの方だった。


 魔法使いは、初めて会ったものに名を明かさない。

 名はそのものの本質を示し、魔力的に深くつながっているからだ。

 妖精や魔獣の中でも弱いものは、名を魔法で縛り、使役することができる。

 流石に人が人をその名で縛ることは現実的ではないが、名は相手の本質を読みとく鍵になる。


 すでに世に名前が知れわたっている高名な魔導師でもないかぎり、名は簡単に明さない。

 自ら名乗り、売り込んでくる魔法使いは、十中八九似非えせだと思って間違いない。

 そして、それを知るセルドア伯は、少なくとも魔法使いがどんなものであるかを知っている。


「では、魔法使い。お前がやることは3つだ」


 セルドア伯は静かに命ずる。


「1つめは、炎銀パイロスの連中の強さの源を探ること。

 2つめは、炎銀パイロスの連中からそれを奪い去ること。

 3つめは、その力を我々青銅ブロンズ騎士団にもたらすことだ」


 無茶をいう。


「恐れながら申し上げます」

「許す」

「伯爵さまのご命令は、一介の魔法使いには、いささか荷が重すぎるものでございます」

「できぬ、と?」

「できる、とお約束ができません」

「ふむ」


 ここで、使えぬ魔法使いめ、と見放されれば幸運なのだが。

 じっと頭を下げて采配をまつ。


「ふむ。己の力量をわきまえているようだな。

 いいだろう。

 それではまず、1つめをこなしてみるがいい」


「……ご期待にそえるかわかりませんが、尽力いたします」


炎銀パイロス騎士団に近づく方法はこちらで準備する。

 お前はお前の力を発揮するがいい。魔法使い」

「手厚いご支援に感謝いたします」


 では、明日の手配をしておこう、と、セルドア伯ルイス様が退席されたあと、残された二コラと私とで作戦会議が始まった。


 まずは、炎銀パイロスを相手にしたときに、二コラが感じた違和感をできるだけ詳しく聞き取るところから手をつける。

 二コラの話からは、炎銀パイロス騎士団に明確な魔法の痕跡を見つけることはできなかったが、剣が通りにくい、と何度も話していたことから、なんらかの防御魔法が関与しているだろうと当たりをつける。

 あとは、5年前、炎銀パイロス騎士団が強くなった前後にヴェルサイドに移り住んできた貴族の記録を調べたりと、この日は情報の整理で1日が終わった。


 いろいろと考えてはみたものの、実際に炎銀パイロス騎士団を見てみないことには、何もわからないというのが正直なところだ。


 この調子では、奉納試合が終わるまで森にはもどれないだろう。

 私はしばらくの間、「驢馬ロバの胃袋亭」に宿をとることにした。


 もちろん、宿代は二コラのつけ・・にしておいた。


 まったり続きます。


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