終末クロガミパネス
もう世界の終わりのカウントダウンも一日を切った。
最後に彼等にあっておきたいな。
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自分相談サービス【ジブミー】へようこそ。
黒上パネス様3回目のご利用ありがとうございます。
誠に残念なお知らせですが【ジブミー】招待済みの黒上パネス様4名の内2名がお亡くなりになりました。
また招待済みの方1名が致命的なウイルスに感染されていますが【ジブミー】は招待主様の健康・安全面は保証されております。
黒上パネス様今回招待出来るのは生存されているご自分のみとなりますが【ジブミー】をご利用になりますか?
年も跨ぐまでもう一時間を切ろうかという年の瀬俺は一つの告白をしなければと腹を括り行動に移そうとしていたのだがまさかこんなタイミングであいつに呼び寄せられるなんて思いもしなかった。
「やぁ、二人とも元気だったかい?」
イケメンパネスはいつも以上にとても穏やかで落ち着いた様子で挨拶をしていた。これは1年ぶりにあったからとかそういった類のものでは無さそうだ。さっさと帰りたいにも呼び出されると一時間勝手な拘束をされてしまうのは分かっているし暴力沙汰を起こそうとすれば前回サイコパスが酷い目に目の前であっていたのも思い出してしまい静かに一時間をこの白い部屋でこいつらと過ごす事にする。
「・・・こんなに誰にも会いたくないときに何ですか。」
「俺もあまり呼ばれたくは無かったけど、それにしてもさござる随分容姿も話し方も変わったな。」
ござるの余りにも変わり果てた姿と口調に正直怖いものを感じるし目付きも今までのものとは明らかに違うので少し驚いてしまった。それに彼はあんなにも長かった長髪もばっさりと切って坊主頭になっており無精髭に目のクマが酷く顔もはっきりと青白く不気味だ。それでも豹変したござると認識出来たのは彼の着ている帝王大学Tシャツと独特な声のお陰である。
「実は超能力パネスと村人パネスは二人とも死んでしまったんだって。だから彼等とはもう永遠に会えないんだけど実は僕も君達にお別れを言いに来たんだ。」
随分と勝手な話である。勝手に呼び出されているだけの俺としては正直もう二度と呼び出されないというのであればやっと面倒事の一つが消え去るという事なので一安心だ。
「超能力パネスはなんでも地球を乗っ取りに来た新しい宇宙人の尖兵に殺されて村人パネスは魔眼をもった魔族に詐欺を咎められた上に反抗して殺されてしまったらしいんだ。それで僕なんだけど地球が新しく惑星間交渉をしていたズボラマドン星人の怒りを買って惑星消滅砲を発射されちゃったんだよね。それが後1日も絶たないうちに地球に届くんだってさ。」
イケメンは相変わらず好き勝手に自分の話を進める。しかも黒頭巾とあのサイコパスはそれぞれ殺されたのまで丁寧に話してきたがその上イケメンの世界では地球が丸毎消滅させられてしまうらしいのだが世界的危機というものはとても今の俺には他人事とは思えない事が俺の生きる世界でも起こってしまっていた。
「俺の世界もさバイオハザードが起こって世界中で急激な感染拡大してて大変な事になってるよ。一応ワクチンも出来たけど本当にしっかり効くのかはわからないし、とにかく凄い数の人間が死んでる。俺の家族も感染してもう世界的にどうなるかはわからないってのに家族も俺も混乱してる。」
「学生パネスの世界も大変なんだね。【ジブミー】招待者の死因はこうやってデジタルデバイスに表示されるんだけど生きている招待者の近況は知る事が出来ないんだ。浪人パネスはこの一年で随分と変わってしまったけどもしかして僕らと同じで相当良く無い事が起こってたりするのかい?」
「・・・私の世界では一部の超能力集団が世界有数の都市で同時多発テロを起こして今まで権力を持っていた人間狩りが始まりましたよ。そのせいで自分の家をテロ集団に共感した市民に狙われましてね。変装する為にも今までと全く違う外見になって市民に紛れて避難していたら貴方に急に呼ばれたんです。貴方達がそれぞれ幸せそうにしていたら私もこんなにも落ち着いて話すら出来ずに死んでしまった彼と同じく暴力を振るっていたかもしれませんね、ひひっ。でも皆不幸ならそれでいいですよ。」
イケメンの見せてきたデジタルデバイスは俺の世界であるようなものとは全く違うのだがそんなものへの興味は湧かない。俺の世界と同じように二人も世界的におかしな事が起こっていて特にござるは今も命を狙われているというのだからこの変貌ぶりに納得してしまう。
「そうだね、まさか皆命の危険に晒されてるなんて。浪人パネスの世界は上流階級の人間の力だけじゃ超能力集団に対抗出来なかったのかい?」
「・・・出来る訳ないだろ。あんな都市を丸ごと消しちまうような悪魔共の力を見せつけられて誰もが恐怖していたはずさ。それなのに奴ら上流階級のやつらが全ての悪の元凶だとか情報操作をしていて自分たちに有利な世界を作っていた事を下民共にバラしやがったんだ。そんな私達に味方してくれるやつなんて一人もいなくなったよ。執事として雇っていた男なんて喜んでお父様を殺しやがった!それにお母様は家政婦共にテロリストに差し出されてTVや動画で処刑の生配信までやられたよっ!こんなことになるなら夕子をさっさと自分のものにしておけばよかったなぁ。夕子のやつ私から金を恵まれていた癖に他の男と浮気して遊びにいった渋谷で街ごとあの世に行きやがったひひっ!あの腐れ女ざまぁないよひひっ!私を裏切った罰なんだ、でもなんで私が狙われなきゃならないんだ、なんでっ、なんでぇぇぇ?」
ござるはかつての面影は全く残らず完全に精神に異常をきたしてしまっているようだ。話しながら彼は頭を抱えてヨダレを撒き散らしつつ最後には絶叫すると肩に入っていた力も全て抜けてしまったように腕をだらっとたらし夕子夕子と急に呻くと警告音が鳴り響く。しかし以外にも警告音にござるは従ったのか今度は小さな声で夕子夕子と呟き始めた。
「夕子ちゃんか。そういえば一年前やっとデートさせてもらったけど結局振られちゃったんだよね僕。実はさその後佐藤さんって女性とお付き合いを始めてね、その矢先だよこんなとんでもない事になったのは。もう少し明るい未来を楽しめるかなと思ってたのになぁ。」
「イケメンはなんで俺達なんかその佐藤さんより優先してるんだよ。一緒に終末を迎えた方が理想的じゃないのか?」
「学生パネスはロマンチストだね。現実は甘くなかったよ。佐藤さんは元カレが忘れられないって3日前にもう音信不通になっちゃったんだ。でも僕なんかまだ良かったよ。他の人だとこんな事態になってから不倫相手と家族毎修羅場に巻き込まれて殺人事件に発展したり壮絶な事になってる。それこそTVやネット配信ももうまともなものの方が少ないし街中も快楽殺人犯が走り回ったり、全裸の狂人が人の家を襲撃したりもう滅茶苦茶さ。僕も佐藤さんとゆっくり過ごせばいいかなんて思っていたのが馬鹿らしいね。人間ってのは欲望に素直だってこと思い知ったよ。」
「ロマンチストか。そうだな俺はロマンチストなんだろうな。この際だし二人には話しておこうと思う。」
今から話すことはここに呼び出される前にある人物に謝罪をしなければいけないと決意していた事なのだがもう俺自身二人以上に失うものはないのだから。
「実はさ前回イケメンに呼び出された後テスト終わりの忘年会があったんだ。それでその帰りから夕子と浮気関係になっちゃって。タケルには勿論悪いと思ってたけどそのままずるずるとその関係を続けてさ、会うときは大体家以外で会ってたんだけど最近流行りのウイルスなんて若者は大丈夫だって言われてたから気にせずラブホとか外でも二人で遊んでたんだ。でも俺も夕子も何処かでウイルスに感染してたみたいでその後同居してた家族全員が感染してさ。結局親父は死んで爺ちゃんは重症妹は味覚も嗅覚も効かない後遺症に悩まされてるんだ。」
「学生パネス、今の君はまるで村人パネスそのものじゃないか。折角僕の分も生きてほしいって言いに来たんだけど無駄足だったね。君の事さっきロマンチストだっていったけど僕も愚かなロマンチストだったってわけか。」
「・・・ざまぁないよ。私の事を批難しておいて自分だって間接的に家族を殺している人殺しじゃないか。ひひっ、ざまぁないよざまぁ。そうだろ夕子、夕子おおおおお!!!!」
「散々な言い様だなお前ら。俺だってこんな事になるなんて思わなかったんだ。それに毎回勝手に呼んでるのはお前だろキザ男。誰がお前らに会いたくて来てるもんか!」
「そうだね。もうこの茶番は終わりにしようか。まさか他の世界の人間も僕の世界同様こんなにも醜いなんてね。死ぬとわかっていたから少しは楽しんで起きたかったのに酷いものだったよ。さよなら。ジブミー終わりで!」
ー 音声承認しました ジブミーサービス終了します ー
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突如として怒り出したキザ男によってあの現象は止められて自分の世界に帰ってきたのだがいざ自分のしてしまったことを振り返ると詐欺師だサイコパスだと馬鹿にしていたあの村人のおっさんのことを本当に馬鹿に出来ない程自分自身の行いが酷かったと思い涙が溢れる。ウイルス感染の軽少者だとわかりホテルへと隔離措置を取られていたのだが今日で四日目まさかこんな年越しまで隔離されたままで過ごす事になろうとは。決意が揺らぎかけ暫くそのままでいると今では歓迎されなくなってしまった除夜の鐘が時の進みを否応なく俺の耳へと届けてくる。元々夕子との関係は5月辺りまで月に数回二人で会うくらいだったのだがタケルが外出は絶対に控えるべきだと夕子にも構ってやらなくなり俺がそこにつけ込んで二人で会う回数を増やしてはいい気になってしまったのだがそれも後の祭り。もう既に取り返しのつかない事態ではあるが俺はどうしてもタケルには謝ろうと文章を考えるのだがそこに電話がなった。
「もしもしパネスかい?あんたは何ともないのかい?夕子ちゃんがねホテルで療養してたでしょ。あの子さっき様態が急変して死んじゃったって!母さんあんたは大丈夫なのかって気が気じゃなくてね。ちょっと聞いてる?」
おわり
おはようございます、令王3年3月1日の朝のニュースです。
最近発見されたウイルスの感染拡大が止まりません!上流階級者黒上チョベリの息子黒上パネスがばら撒いたとされる新型ウイルスが猛威を振るい続けています。超能力者集団によるテロにより各都市の主要施設が壊され医療機関もほぼ稼働しておらず研究機関も次々と破壊され人類は滅亡目前となってしまうのかもしれません。我々もこの情報をお届けするのにラジオを使うほか無いのです。てすがどうか自ら命を経つなど選択肢に入れず我々は立ち向かわなければなりません!今こそ、ザザッザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー