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黒上パネスはオレオレ詐欺にあう  作者: ラブホおじさん
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集うクロガミパネス 下

集うクロガミパネス 上 の続きです。

残り24分も俺達はもう何も話し合いたいことはないが俺達を呼び出した当の本人ことイケメンパネスはなんだかまだ話足りないといった感じでソワソワ周りを見渡している。


大体こんな誰も話したくたい事態を引き起こしたのもイケメンがとんでもない爆弾を爆発させたからに他なら無い訳である。


「しかしそこのブサイク。俺様のようなイケメン勇者に未だに賃金を払わないとは良い度胸だな!」


まだ守銭奴ブサイクな詐欺師パネスはしつこくイケメンに金銭の要求をしている。というかなんでイケメンはこんなやつをイケメンだと言うのか。


どう見ても外見はみすぼらしいボロ布を着ているだけで顔はやたらとエラを張り青髭が不揃いな長さでしっかり生えている。


「いやいやいや、ブサイクなのに気を使ってイケメン君は君の様な面倒くさい方にイケメンといっているだけですぞ!もう某イケメン君が不憫で黙っていられないでござる!」


語尾ござるは咄嗟にナイスな突っ込みをしてくれた。


それもそうだこんな容姿端麗なイケメンと比べたら月とスッポンなのは一目瞭然だ。


そのござるの言葉に物騒な事を計画していた黒頭巾は腕を組んで頷いていた。


「そんな事はないさ、村人パネスは僕の世界だとイケメンで寧ろ僕みたいのがブサイクなんだよ。皆の世界とは価値観が違うのかもしれないね。」


確かに価値観が違うというならイケメンパネスの世界の夕子はもう完全に別の生き物な様だったが美人の定義というか価値観そのものが変わっているのかもしれない。


「某の世界ではイケメン殿はイケメンでござる。そこのおっさんは間違いなくブサイク扱いでしょうがねーぷぷっー!」


ござるはわざとらしく口に手を当てながら吹き出してみせる。


「俺もイケメンさんは間違いなくイケメンでござる君の言う通りかな。そこの詐欺師みたいなおっさんは間違いなくブサイクだと思う。」


ござるに便乗して俺が本音をぶちまけると詐欺師は怒っていたが本当に面倒くさいおっさんだ。


「そうかー。まさか価値観が違うパネス達がいるなんて思わなかったな。でも一応僕らは年齢は全員同じ筈なんだよね。僕は宇宙開拓歴3年生まれだけど皆は?」


「僕も宇宙開拓歴3年生まれだ、でも僕の世界にはこんな技術は存在してないね」


イケメンと黒頭巾は涼しい顔をしてさも当たり前の様に宇宙開拓歴なんて言い出したが本当に別世界の住人でも生きている世界が全く違うというより似通った部分もあるらしくこの二人はかなり近い世界なのかもしれない。


「宇宙開拓歴とは驚きましたな。某は平成22年生まれですが」


「ござる俺も、俺もだよ!」


ということでござると俺もそれなりに近い世界に生きている様だ。


「へぇー、村人パネス以外はかなり似ている世界を生きているのかもね。浪人パネスと学生パネスの世界は宇宙人との交渉上手く行っているのかい?」


「そもそも某の世界はまだ人を数人宇宙に飛ばすのがやっとですからそんな宇宙人なんて正にオカルトでござる。」


「俺の世界もござると変わらないよ。宇宙人なんてフィクションの存在さ。二人は開拓歴ってことはそんなに宇宙進出が進んでるのか。」


「ええ、有り難い事に有効的な宇宙人でしたから技術提供を受けて時間の干渉にまで成功しているんですよ。だから自分相談システム【ジブミー】を今回初めて使ってみたんです。でも皆人のいいパネスばかりで助かったよ。」


「僕の世界は最近宇宙軍でクーデターが起きて強制的な超能力開発が始まってるんだ。能力が強ければ地位が高くなるし宇宙開拓部隊にも編入してもらえて高級取りになれる変わりに治安は相当悪くなってるね。」


黒頭巾の世界はとても好戦的というか実力至上主義っぽいが俺・ござる・イケメンは割と平和な世界に生きているのかもしれない。


「フッ、そんな下らない話しか出来ないのか。俺様は勇者軍団の一員、誰もが喜んで平伏す存在だ。治安なんて俺様が決めていると言っても過言では無いな!ははっは!」


最後に独特なリズムの笑いを見せたが一人だけ頓珍漢な事を言うので誰も詐欺師には触れてやらなかった。


「超能力パネスの世界と違って僕の世界では超能力は開発されたりそもそも発見もされてないんだよね。」


「某の世界では一部超能力集団の特殊部隊がおりますぞ。しかし開発はされておりゃんでござる。」


「皆の世界は凄いね、宇宙人同様俺の世界はそんなのオカルトだもんな。というかござるの世界ってござるって語尾につけるのが普通なの?」


「これは某が好きでやっているのでござる。何より夕子ちゃんがこんな某を好きだと言ってくださいましたしやめる訳にもいきませんぞ!それはそうとおぬし学生と言われていましたがどこの学生なのですかな?」


「俺は帝王大学だけど」


「てっ、帝王大学に現役合格したのでござるかっ!?」


超能力の話からどうやら似たような世界で学生をしている俺の方がござるには興味があった様で夕子にプロポーズする為にも帝王大学に入るんだと息巻いていた辺りからあんまり言いたくはない内容であった事は間違いない。


俺の世界に近いということは現役かどうかで人生を左右する可能性が十分に考えられるしとても話題にしたくないデリケートな問題だった場合黒頭巾の爆弾を爆発させたイケメンの二の舞に成りかねないのはごめん被る。


「へ、偏差値はいくつでごじゃる?」


「偏差値は72だったよ。」


「センター試験は何割!?」


「ほぼ満点」


ござるは鬼気迫る顔をして俺の肩を掴むがセンター試験の得点率を聞いてガクッと顔を下げた。


「ど、どーしたんだよござる?」


やはり何か嫌な空気にまたなり始めていそうでさっさと受験の話は切り上げたい。


「某センター試験マークミスでとんでもない失点をしてしまいましてね。間違いなくあれのせいで第一志望に入学出来なかったのでござる。夕子ちゃんと約束をしていたのになんと言う事を。ううっ。」


大学に入学したら結婚って事だったのだろうか、だがもう俺はこの話はしたくない。


「そうかー、学生パネスと浪人パネスは本当に世界の成り立ちが近いんだね。でもさ受験なら何度でも受けられるものじゃないのかな?僕の世界では1年に何回でも受けられるけど。」


「某の世界では浪人は2年までしか出来ないのでござる。なので受験を受けられるのは2回だけですぞ!」


イケメンなんで自分からそんなに腫れ物に触りにいってしまうんだ。


少なくとも今ので腫れ物は爆発しただろう。


違う世界のパネスで価値観が違うって事はもうあらゆる常識も制度も違うだろうに。


ひょっとしてイケメンなのは外見だけで心はブサイクなのだろうか、いいやそんな奴じゃないきっとイケメンは天然なんだそう信じさせて欲しい。


そんな心の中で葛藤を覚えている俺の肩を未だに掴んだままのござるはついには涙を流し嗚咽を漏らす。


「受験の機会が限られているのも辛いですしぃー某はそれ以上に黒頭巾殿の話で不安に思っていた事が確信に変わってしまったのでござるでしょうー!!!」


話の方向性が急に変わり始めた。


ただござるにとって受験よりも重要な事でこれは俺にも他人事ではないことは感じ取れる。


恐らくは他ならぬ夕子関連なのではなかろうか。


「実は最近夕子ちゃんがあまり某と勉強をしてくれなくなりましてっ、大学の講義が忙しいとの事でしたのでっ、当然しょうがない事だと某割り切っておりましだぁ。でもでもっー」


「もしかして浪人パネスも夕子ちゃんに浮気を?」


やはり夕子関連の話題ではあったがこれまた耳が痛い話題だ、しかしイケメンお前はドストレートすぎる。


「塾の帰り道ラブホテルにタケル氏と夕子ちゃんが入って行くのを見てしまったのでずぅー。某は嘘だと思って二人が出てくるのを待ちましたら朝になって出てまいりましてぇー!問い詰めたらラブホで勉強して映画を見ていただけだと言われまじでぇー!タケル氏も帝王大学教育学部へ進学していましたから変な虫が夕子ちゃんにまとわりつかない様に信頼して頼みましたらあんなごどにぃー!」


恐ろしい程赤ら様な嘘をつかれていたのかござるよ。


彼は全てを吐き出すとずるずると床へと下がっていき最後には綺麗に折り畳まってしまったどれだけ細身だろうがある意味凄い。


そんなことより俺にも新たな不安がここで生まれてしまった。


俺の世界では教育学部に3人とも進学しているがクラスが俺だけ二人と違うのだ、そしてなんだか夕子がよそよそしい感じがしていたのは違和感として感じていた。



「浪人パネスくん、僕も夕子ちゃん取られちゃってるから。超能力パネスと浪人パネスくんだけじゃないよ。」


イケメンおまえもかーい!いや言わなくても何となくそんな感じなのかなと思っていたら仲間が出来たら途端に白状しやがった。


しかし俺ももう他人事ではないのだ。


この感じ恐らくそれぞれの世界で夕子とタケルは俺達を差し置いて関係が進んでしまっている。



「君達もタケルを殺すしかないんじゃないかな?」


黒頭巾は物騒な提案をしてくるが俺はこの期に及んでまだ自分の世界の夕子はそんな事はしていないはずと思い込もうとした。


だがこんなに出会ってすぐ心の内を明かしている俺達は他人であって他人でたまるか!という親近感の様なものが俺の意志を固くする。


「俺はそれでも殺すのは良くないと思う。」


「とんだ偽善野郎がいたもんだ。狩るか狩られるかそれは弱肉強食の理として当然の摂理。自分の欲しいものなら奪い取って当然!そして奪われたらそれを取り返すのも当然!全て決めるのは俺様だ!気に入らない奴は殺せばいい!誰がそれを止める!馬鹿な奴め」


止める奴がどうこうどころか捕まるんだよ警察に、そしてそこから法で裁かれるんだよ!本当に訳のわからないおっさんだ。


なんでこいつだけ余りにも倫理観も価値観も違うのか、こんな奴の話は聞く必要はないなと無視を続ける。


「流石に殺しは出来ないなぁ。バレたら宇宙放逐の刑だし。」


イケメンは相変わらず自分基準で物を言うが今回ばかりはナイスだというか宇宙進出が進み過ぎていて実質死刑みたいなものだろうか怖過ぎる。


「某も悔しいですし許せませんが夕子ちゃんを取り返す算段はついています故殺しは選択いたしませんしお勧めしないでござります!黒頭巾殿の世界は法で裁けないのですかな?」


「うーん、直接手を下すと復讐の正統性を審議に掛けられちゃうから面倒くさいのはあるけど殺さないとするなら局部切取りの刑で許すしかないのかな。」


きょ、局部切取りとは流石にえげつないというか恐ろしい。


というかもう出てきた言葉がそれぞれ物騒過ぎてござるはやはり大分話が通じるが他の世界の奴らはもう話が成立するだけ奇跡な気がしてならない。


「まぁそれなら十分過ぎる程の罰になるんじゃないかな?ねっ?」


うんうんとイケメンもござるも頷き俺含めて3人は股間を無意識に抑えていた。


イケメンも流石にこれには同調するらしい。


「ふんっ、意気地の無い奴らだ気に入らない奴は殺してしまえばそれで済むことを。おいこんな下らない話を聞いてやったんだお前らも金を払え!」


こいつは相変わらず本当にうざったいやつだ。


しかも殺しをなんとも思って無いとはただの村人でも詐欺師でもなく本当はサイコパスの類なのかもしれない。


流石にこいつに関しては全員が付き合っていられないという空気を作り出している。


「人殺しをするとこんな偏屈で殺しに抵抗も無くなるだろうし黒頭巾さんやめときましょう!そんなに恐ろしい法律があるならタケルも男としては再起不能ですよ。それよりイケメンも本当はタケルと戦う勇気を欲しくて俺達を呼んだんだろうけど俺も元の世界でタケルとしっかり向き合うって決めたよ!とにかく殺しなんてしないでしっかり仕返し出来る範囲で仕返しかましてやろーぜ!」


俺が右手を勢いよく突き出すとござる・イケメン・黒頭巾は手を重ねそれからおーっとそれぞれ気合を入れて見せた。サイコパスの言う事にあまりの不快感を覚えたのは俺だけではなくそれが更に俺達の心を一つに結束したのだ。


「あぁ、本当に君達と会えて良かったよ。もう時間も残すところ1分しかないや。パネス達ありがとうね、僕頑張るよ!」


「某も受験共々問題解決に生を尽くす所存でござる!」


「僕も自分の手で殺すのだけはやめることにするよ、冷静にさせてくれてありがとう」


「俺も帰ったらタケルと夕子に確認してみます、本当にありがとう」


「おい、ネンレイとかこの変な文字といい貴様ら俺様を差し置いて勝手に話を進めやがってもう許さんぞ!」


何にせよいい話で纏まったと思ったがやはりサイコパスなおっさんは一人で何か色々な事に怒り心頭といった様子だ。


「ふんっ、茶番は終わりか雑魚共。どうせこのパネス様に恐れをなしたどこぞのギルドが俺様を誘拐して幻惑の魔術でも使っているだけだろう!もう貴様ら幻惑は消えろ!我が灼熱練磨の炎よ、この幻から我を目覚めさせよレイジバーンブラスト!!!」


両手を天に掲げ俺達に向かって両手を勢いよく振り下ろしたが何も起こらない。


当の本人は顔色一つ変えておらずおっさん以外は顔を見合わせてしまった。


おっさんは手を振り下ろした勢いで身体ごと前のめりになりバランスを崩すと両腕で体を支えた。


それがまるで陸上競技で走る前のクラウチングスタートかよというくらい似通った格好になったままこちらを睨み付けているのだが余りにも滑稽すぎる。


「あぁ、この部屋はね元いた世界で使えた異能はつかえ」


イケメンが思い出したといった感じで手をポンっと叩いてから説明しだしたが時間がやって来たようで俺は洗面台の前に戻されていた。


____________________


洗面台の前から戻され1限目の授業へと向かう。


今日は雲も程々にいつ雨が降り出そうかという空模様ではあるがそれとは違い俺の心は決意を秘めた日の光一杯青空満開といった具合で高揚しつつ一つの目的を達成する為の使命感に満ち溢れていた。


結局1限目の授業を同じく受けるタケルに何となく夕子と付き合っているのかと切り出すとつい先週には付き合い出していたらしい。


夕子と元々付き合っていた訳ではない俺は他の世界の俺とは全く違い自分の妄想に囚われていただけだと改めて現実と向き合うことになったのだが流石に気持ちはモヤモヤしてしまった。


俺の運命の赤い糸は完全な妄想だったのだ。


浮気をされたり子供を作られたりするよりかはマシだと心をなんとか落ち着けようにもあんなに気持ちは晴れやかだったはずだが現在の空模様同様モヤモヤがとまらないそれどころか雨が降り出しそうだ。


そんな鬱屈とした気持ちのまま2限目も終わり学食へ行こうとした時やたらと母親から着信が来ていたことに気づき折返しの電話をかけた。


「あぁ、やっと繋がったパネスあんた大丈夫なの?お相手に許して貰えるの!?とにかくちゃんとお相手の弁護士さんの言うとおり示談金振込んでおいたからねっ!」 




「は?」




                             おわり

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